幾重にも重なる山に囲まれた…豊かな自然に恵まれた里は今実りの秋。
黄金色に輝く稲穂が収穫の時を迎えている。
京都・大原からやって来た…伊賀の楽園と呼んでいる場所があるという。
山あいに広がるハーブガーデン。
ベニシアさん去年の夏も家族で訪れた。
(ベニシア)うわ〜すごい。
今日はすごい。
うわ〜ラッキー。
この前来た時雨降ってたしうわ〜きれい。
山もきれいだし空もきれい。
最高。
秋の風に爽やかな香りが漂う。
ここには300種類以上のハーブが植えられている。
季節によって違った表情が楽しめるハーブガーデンはベニシアさんに生きる喜びを与えてくれる。
いや何か生きてるうれしいっていう感じの日ですね。
いつもうれしいけどでも何か感動やね。
この時期赤や紫のセージの花が満開だ。
恵子さ〜ん。
あっやっぱり恵子。
(恵子)こんにちは〜。
久しぶり〜。
久しぶりです。
頑張ってるね。
ありがとうございます。
何かもううれしいです。
久しぶりです。
管理スタッフの松井恵子さん。
2年前ベニシアさんをこのハーブガーデンに招待した事がきっかけで交流を深めている。
ここの庭すごい感動するのこういう所。
これは全部紫でしょ上には山見てその上には空があってそれがすごい何か…。
すごいきれいですね。
このハーブガーデン一番最初の時からずっと…。
そうハーブガーデンオープンする時からずっと関わってました。
じゃあもう何年になって…。
2007年オープンだったんで…。
でも5年でここまで来たのはすごいじゃない。
地元の化粧品会社が「訪れる人に癒やしを」と始めたハーブガーデン。
しかし伊賀の土はハーブ栽培に向いていない。
粘土質で水はけが悪く土の塊がハーブの成長を妨げる事もあったという。
僅か30名で6ha。
地元の農家にも協力を得て土作りを一から学び少しずつ改良を重ねてきた。
この辺の土も結構赤い土で壁土みたいなの。
土作りに苦労して生ごみ堆肥とかを入れ込んで入れ込んでだいぶ土が柔らかくなって。
その生ごみと一緒に草とか入れて…何…。
落ち葉。
落ち葉とかもみ殻とかですね。
もみ殻入れてるの?入れてますね。
やっかいな赤土も堆肥を混ぜる事で植物に優しい良質な土になってきたという。
何かいい土だったらミミズいっぱい来るでしょう。
ああいますね。
ここに。
ああホントだいっぱい出てきた。
彼らはねいないと困りますね。
子どもの時遊んでない?ミミズで。
ミミズいっぱい茶畑に行って捕りました。
だけど土が硬くなったらそれはミミズはいないって事だよね?そうですね。
柔らかいんだったらたくさんいる。
だから私大きいミミズ見つけたらそのままにする時あるし時々生ごみの堆肥の中に入れるの。
入れたらまたそこでぴ〜っとしてくれるから。
いいですね。
土がよくなって当初は育てるのが難しかった種類のハーブもすくすく成長するようになった。
ベニシアさんも来る度に新しい感動があるという。
恵子ここ今セージがメインですけどいくつの種類ある?今20種類。
20種類!?ええ〜!じゃあ知らないのがあるんだね。
かも分からないですね。
ボックセージとか。
あっボックセージ。
あとイエローセージ。
あっイエローセージ一回見た事がある。
ありますか?この秋でセージがいっぱい咲いてくれて初めて日本来た時多分全然見なかったと思うんだけどこのごろ田舎の所歩いたらいろんな人の家にセージがあるのでだからすごく何か日本になじんできたのね。
ただ気を付けないといけないのは花を楽しむセージとセージティーできるのは違うもんね。
すごく…ヨーロッパで普通のコモンセージは一番体のためにいい…オールマイティーハーブ。
コモンセージは殺菌作用がある。
ベニシアさんフェンネルと一緒にこれからの季節に重宝するうがい薬を作る。
全部セージ入れるのね。
このぐらいかな。
大体20分煎じるからその間にちょっと種。
種を。
ちょっと入れて。
コモンセージを熱湯で煎じ喉の痛みに効くというフェンネルの種を入れていく。
飲む時はハチミツ入れてそれも喉にいいかもね。
ああそうですねハチミツ。
茶色っぽくなるまでじっくり煎じれば出来上がり。
もういいかな。
この色。
きれいなブラウンだ。
ブラウン。
セージだけでちょっとグリーンぽくなってフェンネル入れたからこの色になった。
ちょっと癖がある。
結構そうですね癖があって。
風邪ひいた時でもひいてしまって飲んでもいいけどでも一番うがいする時私よくこれ使う。
それで今の季節は冷蔵庫に入れる方がいいのね。
で冬の間だったら歯を磨く所に置いても大丈夫。
ああそれでうがいして。
やってみます。
「ハーブが育つ喜びを訪れる人たちと分かち合いたい」と言う松井さん。
おいしいこれ。
うん。
ここ何か結構長く造ってゼロから造ってるでしょ?はいそうですね。
夏は夏で夏の花ラベンダーとかきれいなんですけど楽しんでもらって春はやっぱりここカモミールがきれいなんですけどカモミールを楽しんでもらって秋はこのセージ。
結構花とか見て心癒やしてもらってこの自然の中でまたリフレッシュしていろんな仕事に取り組んだりとかしてもらえるそういう場を提供できたらいいなと思いますね。
名前書いてるでしょう?名前書いてありますね。
あれ「何々に効く」って書いてある?書いてないですね。
それ書いたらいいと思う。
効能が書いてあるといいですね。
と思うけどね。
「なるほど」ってちょっと勉強になったっていうところ…。
じゃあちょっとそうやってみましょうかね。
簡単に出来るように少し何か書いて。
ますます豊かになっていくハーブガーデン。
ベニシアさんまたここにやって来る楽しみが出来た。
翌日。
伊賀の中心街にやって来たベニシアさん。
街中を歩くのは初めて。
風情ある街道は自然豊かな山里とは違った表情を見せてくれる。
軽やかな音に引かれて中をのぞいてみると機織りのような。
あ…ごめんください。
あっいらっしゃいませ。
何か音を聞いて何作ってるのかなと。
着物じゃない?あれ。
着物に使う帯締ですね。
これ日本語で何て言うんですか?これは組紐を作る台なんですねこれが。
初めて見た。
びっくりした。
伊賀の伝統工芸組紐。
60本の絹糸を交互に組み合わせ交差する部分をへらでたたいて締めていく。
まさに職人技。
先日本格的に着物を身に着けたベニシアさん。
その時一本の細い紐が着付けの決め手になっている事にとても驚いたという。
すご〜い。
ハハ…。
びっくり。
ホントに感動した。
私も紐見たけどこんな感じで作るとは思わなかった。
そうですよね。
組紐っていうのは見て頂いたら分かるように織物っていうのは縦糸があって横にこう糸を渡していってまあ繊維は十字ですよね。
そうですね。
でもこれは斜めなんです。
こうでしょう?こんなVになってますでしょう?斜めなんです。
だからこう大きく持ってキュッとするとキュッと伸びますね。
それで伸びっぱなしじゃないんです。
またこれを置いておくとまた元に戻る。
自然に戻るの?自然に戻る。
ええ〜。
で目が細かいから結構帯締ってぐっと締めるんですけどもいくら締めてもホントに傷まないというか丈夫ですね。
私の若い時でさえやっぱり結婚する時には一とおりの着物とかそういうものを持って嫁いでくるものだった訳ですからその時はうんと組紐っていうのは…。
みんな持ってた。
持ってたと思いますよ。
山に囲まれた伊賀という地。
組紐は女性たちの内職として暮らしを支えてきた。
その歴史は奈良時代まで遡り古くは甲冑や刀の紐などに使われてきた。
「伊賀を歩けばカタカタと音が聞こえる」と言われるほどどこの家庭でも作られ生活を彩るさまざまな作品が生み出されてきた。
和服を着る人が少なくなった今もここでは大切に受け継がれている。
婚礼衣装のための帯締。
人生最良の日を迎える花嫁のために職人が何日もかけ絹糸一本一本に思いを込めて組み上げる。
記憶の中に生き続けるふるさとの技。
帯締にはこの地で生まれ育った女性の心意気が組み込まれている。
伊賀で陶芸に打ち込んでいる友人がいる。
いつか会いに行きたいと思っていた。
なんと30年ぶりの再会。
こんにちは〜。
ごめんくださいこんにちは〜。
は〜い!ああ久しぶりベニシア。
お久しぶりですね。
久しぶり。
どうぞ。
陶芸家になるために京都から伊賀に移り住んだ蓮善隆さん。
ええ〜これは最近の作品だね。
そうですね。
この形すごく…。
これは火焔土器って昔の縄文時代の土器があるんですけどそのイメージですね。
ちょっとグリーンぽいような感じだね。
そうグリーンの色がいわゆる伊賀焼の色。
でも僕の場合はわざと鉄をかけてる。
あっこっち側ね。
だからその鉄とグリーンのコントラストを出したいと思ってる訳ね。
う〜ん。
伊賀は日本有数の焼き物の産地。
粘土質で豊富な種類の土は高温で焼き締める事で素朴な肌合いと色みが生まれ特に料理を盛りつけると映えるのだという。
こういう器関係っていうのはやっぱり日本の料理屋さんの注文…オーダーが多いですね。
じゃあ京都から注文…。
京都とか東京も名古屋ももう全国で。
これなんかはイメージが竹の子。
あっそっか。
竹の子のイメージでこれに竹の子料理を盛って出す。
何て言うかすごく自然の色っていう感じやね。
まあ土味っていうんやけどその土の個性をいかに引き出すかどういうふうに使ってやるかっていうのが僕らのある意味での仕事ですよね。
へえ〜すごい。
土と向き合いその個性をどのように生かすか蓮さんは毎日考えている。
ちょっとじゃあ土見に行きましょうか。
山から取ってきた土を野積みにしてる状態。
この中に入ってるの?これがそう。
だからこれもそうなんよ。
へえ〜。
これは一番最初全部で20tあった。
それをだからもう30年以上ですわ。
そしていい土になったの?うんいい土になってる。
この土が30年以上の土。
この状態ですから雨が降ったらぬれるよね。
太陽に照らされたら乾くよね。
ほんで冬場になったらこれが凍る訳。
それを毎年毎年ず〜っと積み重ねて30年たっていくとバクテリアが増えてこうやって植物が生えるでしょう?それによって土の中の悪い部分が無くなっていい部分がどんどんどんどん増えていく。
そうね土を作らないといけないね。
畑もそうです。
そう畑もそう。
いい土があればいい野菜も出来るしいい陶器も出来るし。
そうですね。
30年前山から運んできた土は長い年月寝かせておく事で不純物が取り除かれ焼き上がりに独特の色艶を生み出すようになる。
水分を加えて粘土状に。
水の量や乾燥具合でも違った変化が現れるという繊細な土。
だからこそその特徴を見極める。
これでもみ終わるでしょう?うん。
ほんでこういう形から作品を始める。
いい気持ち。
この日は何やら箱形のものを制作中。
うろこのように粘土を貼り付けながら模様を作り出す。
これはもう金鋸の刃を使う。
こういうので。
そうすると違う質感になるでしょ?これで上下に切り分ける。
ふ〜ん。
重厚感のある表面をかみそりやへらを使って形づくっていく。
あとはこうやって糸で。
あっこうやって。
これで切れた。
ええ〜すごい。
ほんで中をくりぬいてこれに料理を盛る。
でこれが蓋になります。
こんな大きいの?うん。
これをかぶせる。
ええ〜。
伝統的な伊賀焼の製法を守りながら個性を追い求めてきた蓮さん。
26歳で飛び込んだ焼き物の世界。
4年間の修業が原点だという。
蓮さんの師匠番浦史郎さんは北大路魯山人の再来といわれ金色の鮮やかな絵付けで名をはせた名工だ。
蓮さんも作品の美しさに魅せられて弟子入りしたがその教えは独特だった。
器っていうのは料理を深く知らないと作れへんと。
でほかの人との差別化もできないと。
ここではだから料理に関しては何でも細かい事でも全部丁寧に教えてくれたんですけど焼き物に関しては「覚えたかったら見て覚える分にはかまへん」と。
やっぱり基本的には例えばこのサイズのこの器を新しく作る時にじゃあそれに何を盛ろうかというのをまず考えてそのための寸法とかそれから高さとかそういうところまで考えながらお皿なんか作る訳です。
師匠の場合は金銀彩のああいう琳派風の華やかな絵付けそれを極めた方やったと思うんですけどだからやっぱり同じ方向で行っても師匠を超える事はなかなかできないやろうと僕はどっちか言うと彫刻の方に引かれてましたんで何かそういう彫刻的な石のような作品を伊賀やったら伊賀の土とまきの皮で表現できるんちゃうかなっていうふうに考えた訳です。
師匠の教えを受け継ぎながらも独自の作風を確立した蓮さん。
その代表作がこの陶箱だという。
僕の師匠の番浦先生は鉄で絵を描かれる師匠でしたのでその鉄の配合っていうのも僕ら当然知ってましたし鉄をかけたらどうなるだろうというとこからこの鉄は始まった訳ですね。
師匠から学んだ鉄の配合。
蓮さんは絵を描くのではなく直接陶箱に塗り込んでいく。
更にその上から釉薬を放ち作品に彫刻のような独自の表現を施す。
こうぶつけてほんで薬が流れますんである程度鉄の部分にもこうやって溶けますんでこの鉄と重なった部分がすごい味が出てくる。
焼き上がりまで分からない色み。
だから面白い。
工房の裏にある窯も蓮さんの手作り。
窯焼きの時間が最も神経を遣う。
窯の温度を一定に保つためまきを燃やす時間と量を計算し2か所からくべていく。
こっち側でサングラスしてるのは焼き物がじかに見えますからどこにまきを落としてやったら効果的な窯変が取れるかっていうのを計算しながら入れてるからサングラスではっきり特定の場所を確認してそこに集中的にまきを入れる。
1,150〜1,250の温度域を長い時間まきをくべ続けるっていうのが一番重要なんよね。
一度火を入れると30時間焼き続ける。
ここからは雨が降ろうと止める事はできない。
まさに格闘。
蓮さんには心強いパートナーがいる。
お疲れさん。
うん。
彼女も陶芸家だ。
どう?調子。
ちょっとおけがたまってて温度が上がりにくい。
それでまき放り込みにくいから少し入り口の方切っていった方がいいんちゃう?同じ時期に伊賀焼の世界に入り独立を機に結婚。
以来30年以上ここまで夫婦二人三脚。
力を合わせて作り続けてきた。
窯の温度と火の周りが焼き上がりの色みを左右する。
だからこそ信頼が何より大切。
夫婦で交代しながら深夜も火の番は続く。
そしてついに完成。
何十年作り続けても焼き上がりを見るまでは気が抜けないという蓮さん。
窯から作品を取り出す度いつも伊賀の大地に感謝するという。
旅の最後に蓮さんが自慢の料理をごちそうしてくれる。
召し上がって下さい。
ありがとうございます。
これが今回の窯から出た陶箱ですね。
はい。
うわ〜すごい。
自ら焼いた器においしい料理を盛りつける最高のおもてなし。
(善隆)これは肉のたたきですね。
へえ〜おいしそう。
伊賀牛のたたきは蓮さんが必ず出す一番の得意料理。
(加都子)おいしいですか?うんおいしい。
(加都子)外に咲いてた蓮の葉っぱに包んだ豆のご飯です。
(善隆)枝豆ご飯。
これおいしい。
(加都子)ちょっと匂いするでしょう。
毎日の生活がものづくりの原点。
毎日どんなものを食べるかと。
おいしいものを食べるっていう事もあるし近所の新鮮な食材を使うっていうのもあるし。
だから料理のね器を作る時もイメージするの。
何が要るか分かりますね。
これに何を盛りたいかっていう具体的なイメージがあるからね。
土が与えてくれる豊かな世界。
伊賀の旅が教えてくれた。
2014/09/14(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「土と親しむ〜三重県・伊賀〜」[字]
三重県伊賀の旅。この地で苦労して土をつくりハーブを育ててきた友人に会う。そして30年以上、伊賀の土を自分流に使い焼き物にしてきた蓮善隆さんにその作陶の心を聞く。
詳細情報
番組内容
三重県の伊賀を旅する。この地で苦労して土をつくりハーブを育ててきた友人がいるというベニシアさん、今の時期はセージが満開と聞いてそのハーブガーデンに訪ねる。そして30年ぶりに会う陶芸家・蓮善隆さん。蓮さんは伊賀の土を長い年月をかけ熟成させてから焼き物にしてきた。独自の作風の作品は料理を盛るために考えてつくるというが、蓮さんに手料理をごちそうになりその器とともに味わう。旧友の温かいもてなしに心和む。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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