パリエッフェル塔を望むシャンドマルス公園。
8月30日31日の2日間一大イベントが開かれました。
イベントを企画・運営しているのは東日本大震災を体験した東北の高校生100人。
岩手・宮城・福島9つの地域から集まった生徒たちは2年半をかけてこの日のために準備を進めてきました。
それぞれの地域が東北の魅力にあふれたブースを出して復興を世界にアピールします。
福島県伊達市の生徒は風評被害に苦しむ農家を支援しようと果汁100%のゼリーを開発しました。
福島県二本松市の生徒は原発事故をきっかけに始めた温度差を利用した発電方法の研究結果を披露します。
宮城県気仙沼市の伝統的な凧天旗です。
ブースで書いてもらった東北復興への願いをのせて空に揚げます。
震災によって子供たちの暮らしは大きく変わりました。
大きな津波に襲われた岩手県大町から参加した2人。
「いつまでも被災地と呼ばれたくない」。
強い思いが活動を支えます。
原発の事故でふるさとに帰れない生徒もいます。
避難先での偏見と闘いながら復興のシンボルを探し求めてきました。
パリに向かって懸命に走った2年半。
子供たちの成長を見つめました。
イベントの準備が始まったのは東日本大震災から1年後の3月。
パリに本部を置くOECD経済協力開発機構の呼びかけがきっかけでした。
プロジェクトの名前は…中学1年生から高校1年生まで100人の生徒が集まりました。
いきます。
みんなの「環」。
(一同)環!みんなで決めたチームの名前です。
(拍手)子供たちは企画を考えるだけでなく運営資金やパリへの渡航費も自分たちで集めます。
イベントを成功させる過程を通して復興を担う人材を育てる。
これがプロジェクトの目的です。
講師はさまざまな分野のスペシャリスト。
アイデアの出し方やアピールの方法などを伝えます。
子供たちの自主性を引き出す事がねらいです。
生徒たちは自分たちが納得するまで昼夜を問わず議論を続けます。
岩手県大町から参加した2人最年少の中学1年生です。
岩手県の大町吉里吉里中学校から来た1年三浦雄太です。
お世話になりたいと思うのでよろしくお願いします。
(拍手)中井李乃葵っていいます。
ちょっと引っ込み思案な女の子です。
雄太君と李乃葵さんはふるさと大の復興の様子を伝える写真展を開く事にしました。
岩手県大町。
東北地方の沿岸部で津波の被害が最も大きかった土地の一つです。
がれきは撤去されましたがさら地が延々と続いています。
まさか流されるとはという感じだった。
そうだよね。
大丈夫だべとかって思ってたらこんなだからね。
あの日何も考えられなかったもんね来た時。
ここです。
雄太君が住んでいたアパートは流され仮設住宅で暮らしています。
何もね〜な。
復興の事など何も考えられなかったという雄太君。
OECD東北スクールへ参加してふるさとの現状と真剣に向き合えるようになりました。
「震災の被害は大きくても地元の人はたくましさを失っていない」。
2人は笑顔の写真を集めて復興の象徴にする事にしました。
写真パネルを三重にレイアウト。
外側に震災当時の写真次に復興の写真一番内側に町の人の笑顔の写真を置く事にしました。
写真パネルのサイズを決めます。
ここね。
1リノア…口にしなければ自分の思いは伝わらない。
スクールに参加して李乃葵さんは少しずつ変わってきました。
大とかも。
だからそういうのが嫌で…避難生活を続けながらスクールに参加している生徒もいます。
友達をたくさん作りたいと思いますので…松本莉奈さんのふるさとは福島第一原発から13kmの楢葉町。
今はいわき市の小さなアパートを借りています。
私がここで勉強しているとお母さんとお父さんはテレビが見れない。
見ると怒るんですよ。
「勉強して!」って。
事故のあと転校してきた中学校です。
初めはなかなか学校生活になじめなかったといいます。
すごいいろいろ言われたんですよ最初。
双葉郡の原発の事をろくに知らなくてやっぱり。
本当にそれだけはカチンときて。
他は黙ってたんですけど。
父親は福島第一原発に勤めています。
殻に閉じ籠もっていた莉奈さんを救ったのは東北スクールでできた友達でした。
更になのかもしんないですけど。
(取材者)ぼっち?莉奈さんのチームは東北の桜をパリに植樹しようと考えました。
震災に耐えた桜に思いを込めます。
しかし壁にぶつかりました。
EUは植物の検疫が厳しく簡単に桜は持ち込めない事が分かりました。
桜っていうのがあまり載ってなかったんですよね。
1個調べると必ず1個分かんないの出てきて全然進まなかった。
その時救世主が現れました。
珍しい植物を追い求めて世界中を飛び回っているプラントハンター西畠清順さんです。
西畠さんのアドバイスは東北の桜の枝をパリに送り台となる木に接ぎ木します。
それを植樹しようというものでした。
思いがつながった莉奈さん。
あとは震災に耐えた桜を探すだけです。
東北スクールが開校して1年余り。
各地域の代表が会場の下見のためパリを訪れました。
岩手県大町代表の李乃葵さん。
写真展を成功させる鍵を探したいと思っています。
お〜!やべ〜!これはやべ〜!これはやべ〜。
まだ浮いてるような気分。
地面についてない。
まずはパリ市の代表者に面会します。
イベント会場はシャンドマルス公園。
エッフェル塔にも近く多くの客が期待できます。
話し合いの結果パリ市から無償で借りられる事になりました。
フランス側でサポートしてくれるのはイベント企画の専門家ガッドさんです。
地元の写真で本当に客が呼べるのか。
考えを巡らせていた李乃葵さん。
いいアイデアを思いつきました。
同じように写真展を考えていた福島県大熊町のチーム遠藤安春花さんとコラボレーションする事です。
福島第一原発がある大熊町。
この町で暮らしていた安春香さんも避難生活を余儀なくされています。
現在は中学校ごと会津若松市に移転しています。
2つの町のコラボ。
本当に進めていいのか確認です。
フランスが原発大国だと知った李乃葵さん。
津波に加え原発事故からの復興も表現した方がより多くの関心を集める事ができると考えました。
コンセプトとしては大のやつすごい合ってると思うんですけどでもインパクトが足りないかなと思ったりしたからコラボすればそれもちょっとマシになるかなって思って。
渡仏期間結構夜とかいろんなチームと話す機会増えてその時に大と似てるっていって何かコラボとかなったからやっぱこういう機会って現地見るだけじゃなくてそういう夜の時間とかもすごい有効に使えて良かったなって思ってます。
李乃葵さんと安春香さん。
パリの町で新たな一歩を踏み出しました。
コラボする事でどんなメッセージが発信できるのか?李乃葵さんと雄太君は安春香さんたちが避難している会津若松市を訪ねる事にしました。
だから深いところまで今日はいこうよ。
そういきたいんだけど…。
まず過去を知りたいと?うん。
すみません遅れました。
こんにちは。
6時間以上かけて到着しました。
今大熊町に戻れてないっていう現状があるじゃん。
それに対してどういう事を思っているのかなっていうのをすっごいシビアなんだけどそういうのを全部聞いておきたいなって思って来ました。
やっぱ原発がある町って知ってると思うけどすごい豊かになるのね。
だから介護施設から教育から何から何まですごい手厚くてすげえ住みやすい町だなって感じだったんだけどでも正直だからといって今すごい戻りたいかっていうと別にそういうわけでもない。
逆に大の方を聞きたいんだけど。
普通さすぐ対応して逃げるところじゃん津波って。
だけど意識が甘いのかそれとも情報が錯綜して混乱してたのか分かんないけど1時間ぐらい待ったもん校庭で。
そしたら津波来てもっと高い所逃げろって言われてダッシュして。
優しい家が流されてない人たちがお握りとか作ってきてくれてひもじい思いとかは特にしなかったけどでもそれでも周りの人たちはショックで吐いたりとかしててすごい暗かった。
避難所は。
やっぱり大切なものに改めて気付く人は多いんじゃないかなと思うから何て言うんだろう…今のうちに伝えたい事伝えちゃおうみたいな。
この人好きだなって思ったらもう好きだよって言っちゃってもしその人が自分の前からいなくなった時にあの時こう言っといて良かったって。
まあそれちょっと違うけどでも後悔しないようにしてほしいなっていうのが今回の写真展のコンセプトにつながっています。
大は。
震災から何を伝えたいのか。
メッセージが次第に明確になってきました。
震災を乗り越えた「希望の桜」を探していた莉奈さんにいいニュースが飛び込んできました。
苗木の提供者が見つかったのです。
是非上原さんの桜をパリに持っていきたいという事でお願いをしました。
分かりました。
今こういうふうに。
よいしょ。
これは種からの?種から育てたやつです。
震災の時にはまだ芽が出てなかったやつですから。
種はもうまいてたんで。
種をまいたのは震災前。
苗木まで育った桜がパリで花咲けば復興のシンボルになります。
桜の植樹に一歩近づいた莉奈さん。
自分も前に進むためにやっておかなければならない事がありました。
それは自宅のある楢葉町に戻る事。
震災のあと一度も帰っていません。
過去を乗り越えるためふるさとときちんと向き合わなければと感じたのです。
何か怖いわ。
いざ行くとなると何か怖くて駄目なんですよね。
楢葉町では規制が緩和され夕方4時までならば一時帰宅ができます。
何にも残ってない。
被災した時に通っていた楢葉中学校です。
震災で崩れ取り壊しが始まっていました。
ここが音楽室だったんですよね。
全然分からなくなってる。
事情を聞いた工事の責任者が取り壊す前の校舎の写真を持ってきてくれました。
泣かないって決めてたのに駄目でしたね。
震災の翌日以来一度も帰っていない家です。
避難した時には2〜3日で戻るつもりでした。
震災が起きたのは金曜日。
その週の日記を見つけました。
月曜日は技術が楽しかったそうです。
月曜日が技術で火曜日は最後のテストで終わって喜んでますね。
何かすっきりしました。
イベントまで5か月。
最後のスクールが開かれました。
各地域の企画を最終決定します。
共に写真展を開こうとした大町と大熊町のチームには新しいアイデアが生まれていました。
写真展を行うっていう予定だったんですが大幅にシフトチェンジをして現地のパリ人たちとディスカッションするというイベントに変更しました。
そこでは自分たちの経験やメッセージをなるべく英語で伝えて実際にお客さんと意見交換をする。
イベントをサポートするガッドさんに意見を求めます。
(通訳)これは何ですか?
(通訳)教卓って先生が使っているような?そうです。
写真を展示するだけでなくブースを教室に見立て授業のように写真に込めたメッセージを発表します。
面白い!面白い企画!
(拍手)桜の植樹にむけて莉奈さんも順調に準備を進めていました。
これが机なんですけどここで現地の人たちからのメッセージも書いてもらいたいなって。
しかしショッキングな知らせが届きました。
接ぎ木をした桜が全てバクテリアに感染したというのです。
東北の桜をパリで咲かせる事はできなくなりました。
悔しいですね。
イベント開催の3日前。
東北の生徒たちがパリに到着しました。
(取材者)飛行機乗るのは?初めてです。
初めてで12時間フライトしてパリ来ました。
現場での最後の準備が始まります。
莉奈さんにはどうしても会いたい人がいました。
パリで桜の接ぎ木に何度も挑戦してくれた人です。
パリで最も有名な庭園の責任者イレーヌさん。
検疫の問題をクリアーしようと多くの人が仲介に入ったため直接連絡が取れていませんでした。
私たちなりに精いっぱいやったんですけど私たちこのチームのメンバーの中で一番反省しているのが連絡を取ってなかったって事で直接イレーヌさんと私たちがつながってダイレクトに通じられるといいなって。
(通訳)イレーヌさんもダイレクトに桜のチームとコンタクトができなかった事にフラストレーションが実はあったんですね。
これからも本当によろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
莉奈さんの思いに応えるためイレーヌさんはプレゼントを用意していました。
検疫が厳しくなる前に日本からフランスに送られた桜です。
今回はこの桜を植樹します。
いよいよイベントスタートです。
世界中の人に東北の魅力そして思いを伝えたいと思います。
ルネッサンストゥ東北アパリは…
(拍手)大町と大熊町のブースです。
津波と原発事故異なる災害に見舞われた地域の復興までの道のりが壁に貼られました。
大熊町の遠藤安春花さんはフランス語での発表に挑戦しました。
原発事故により自分の生活が大きく変わってしまった事。
3年ぶりに帰った大熊町は時が止まったままで悲しくなった事。
頑張れ頑張れ。
サンキュー。
(拍手)大町の三浦雄太君の発表です。
雄太君は避難警報が出ていたにもかかわらず被害が大きくなったのは多くの人が油断して避難しなかったからだと考えています。
その失敗を繰り返してほしくないと訴えました。
考える力もついたしこうやってしゃべる能力も少しはついたんじゃないかなと思いますし多分参加しなかったらぐーたらでしたから。
いい体験だったと思います。
中井李乃葵さんはステージでの発表にもチャレンジしました。
「天災病気事故などの悲劇は突然誰にでも起こりえる」。
李乃葵さんが震災から学んだ教訓です。
メルシーボークー。
(拍手)もうステージ…あ〜駄目だ涙出てきた。
ほんと今までのやつの…。
桜の植樹が行われました。
2年半前生徒にミッションを伝えたOECDのグリア事務総長も参列します。
サンキュー。
(拍手)
(拍手)東北の桜がいつかパリで花を咲かせますように。
違うかハハハ…。
この東北スクールの活動を応援してくれた人がいます。
東北の多くの子供たちが震災のあとmiwaさんの曲に励まされたといいます。
東北スクールの生徒全員が復興への思い未来へのメッセージを綴った手紙をmiwaさんに送ったところテーマソングの制作を快く引き受けてくれました。
一人一人のメッセージが込められた曲。
タイトルも生徒が考えました。
パリでのイベントが幕を下ろします。
観客の数は2日間で延べ15万人。
子供たちの2年半に及ぶ挑戦の旅が終わります。
・「あの空届くように歌おう」・「あの空届くように歌おう」・「あの空届くように歌おう」ふるさとへの思い仲間との友情そして未来をつくる力。
東北の子供たちは大きな財産を手にしました。
(拍手)子供たちの2年半の集大成見事でしたよね。
このプロジェクトを通してふるさとに正面から向き合う事でよりふるさとを好きになったという生徒がとても多かったそうです。
外に発信し続けるという発想に復興へのヒントがあるかもしれませんね。
さあ続いては復興支援ソング「花は咲く」が更に広がりを見せたイベントを紹介しましょう。
「花は咲く」は被災した地域の出身あるいはゆかりの人たちだけではなくて多くの人たちが共に歌って演奏してきました。
震災から3年半となる今月東京で開催されたジャズイベントでは世界的に著名なミュージシャンと一般の人たちが参加して「花は咲く」を演奏したんです。
今年で13回目となる東京JAZZ。
国内外のアーティストが一堂に会して華麗なプレーを披露しました。
大小4つの会場で行われたイベントには多くのジャズ愛好家が訪れ演奏を楽しんでいました。
その会場の一角「花は咲く」が演奏される会場です。
応募で集まった一般の演奏家たちはおよそ60人。
サックスなどのさまざまな楽器を持ち寄って著名なミュージシャンたちとセッションです。
それでは「花は咲く」いってみましょう。
ジャズを愛する人たちが演奏する「花は咲く」です。
(「花は咲く」)いろいろこう…いろんな事が思い出されて音楽で表現できればと思いましたけれども。
やっぱりその時の曲だっていうところなんでまあ外国のミュージシャンと一緒にそれを演奏できたっていうのは今日はすごくいい体験ができたなと思いました。
こうやって聴いてみますと皆さん一つ一つの音を大切にしながら心を一つにしていましたよね。
このセッションに参加した皆さんがこれからも心を一つにして被災した地域への思いを世界に呼びかけてほしいなと思いました。
それでは被災した地域で暮らす方々の今の思い今回は福島市の皆さんです。
皆さん頑張ってます。
今年も天気に恵まれましておいしい桃がとれるようになりました。
震災当時はお客さんも3分の1ぐらいになりまして今現在もまだ6割ぐらいでしょうかね。
福島市の私立幼稚園協会では原発事故以来いっぱい遊んでもらえるようにこのような場所を開いています。
運動能力テストも行って健康管理にも努めています。
自然の中でも遊んでもらえる機会も増やしていきます。
いっぱい遊んで元気になってね!この土湯温泉は震災でお客様が減少してしまいました。
(智啓)自分はこの土湯温泉で旅館業をして5代目です。
9代10代目がこの芸術祭を始めた僕らと同じように…2014/09/14(日) 13:05〜13:53
NHK総合1・神戸
明日へ−支えあおう−「パリで咲け!東北の子どもたち」[字]
先月末パリで、東北の魅力と復興に向けた努力を発信するイベントが開かれた。企画、運営を行ったのは東北の中高生たち。番組では2年以上にわたって彼らの成長を見つめた
詳細情報
番組内容
先月パリで、東北の魅力と震災からの復興に向けた取り組みを発信するイベントが開催され、15万人が訪れるなど大きな反響を呼んだ。このイベントは東北の中高生たちが企画、運営したもので、OECD(経済協力開発機構)などの協力を受けながら、2年以上をかけて準備してきた。東北の中高生たちはどういった動機で参加し、どのように企画を育て、何を発信したのか。子どもたちの成長を2年以上にわたって見つめた。
出演者
【キャスター】畠山智之
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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