内田康夫サスペンス「信濃のコロンボ5 追分殺人事件」 2014.09.14

(カッコウの鳴き声)〜うぁ〜!!〜〜
(竹村岩男)アッハイハイハイ。
アッあ痛い!痛い。
(竹村陽子)アハイハイ。
出る出る。
あ〜いいからオマエ味噌汁に集中集中。
フーンだ。
ハイハイ竹村です。
おはよう。
なに殺人事件!軽井沢追分か…。
管轄内だな。
わかったすぐ行く。
おまちどおさま〜。
はいどうぞ。
いや駄目になったんだ。
俺ナ味噌汁どころじゃなくなちゃったよ。
事件だ出かけるよ。
だからあれ出してあれ。
あれって?ツーと言えばカーだろう。
あれに決まってるじゃないか。
ああハイハイいつ泊まり込みになってもいいようにちゃ〜んと用意してありますよ。
お泊りセット。
ツーと言えばカーだもんね。
ハイ!いやそうじゃなくてあれあれほらあ〜もう。
これだよこれ。
うんこれに決まってるじゃないか!またですか?いいかげんお役目果たしたでしょうこのコート。
そろそろ新しいのに取り替えればいいのに。
いやそうじゃないんだよ。
このコートというものはだね。
ハイ交番勤務から刑事に抜擢された時に記念に買ったものでしょう。
だけどもう何年経ってると思ってるの?「初心忘れるべからず」なんだよ。
あ今度の事件どこですか?軽井沢だよ。
え!あちら朝夕は氷点下よそんなコートじゃ風邪引いちゃう。
駄目なのこのコートじゃなきゃカンが冴えないの。
ハイそうですか。
アッそういえばね私も今日軽井沢なの。
え?俺聞いてないよそんなこと。
と言っても信濃追分だけどね。
俺も行くの信濃追分だよ。
あら…。
「こぶし」っていう人形屋の前に男の死体が転がってたんだ。
ここぶしィ〜こぶしねぇ…。
何だ知ってんのか?う!う〜ううん。
オマエの長話につきあちゃいられない出かけるぞ。
(引き戸が開く音)あ!あなたこれ!まあいっか同じとこだ後で届けりゃ。
〜信濃追分といえば分去れだな。
(木下刑事)何ですかそれ?長野県人のくせしてそんなことも知らないのか?「さらしなは右みよしのは左にて月と花とを追分の宿」分去れはね中仙道と北国街道とのね分かれ目なんだよ。
(吉井刑事)口から泡か。
何らかの毒物を含んだということですね。
この店の経営者は?
(丸岡一枝)私です。
あああなたが…。
あの「ドールハウス」ってことはオモチャの人形を揃えられてんですか?人形といってもほとんど大人向けのものなんです。
あ〜ああっ。
(一枝)どうぞ。
(ドアの開く音)ああ。
随分と変わった人形ですねこれは。
こういうの最近流行ってるんですか?私3年前に東京から越してきたんですが旧道の軽井沢銀座の店々に対抗するためには普通の人形やアクセサリーを置いたんじゃかないませんので。
ハハそれで魔女ですか…。
へぇこんなにするんですかこの人形!ハイ。
すべて手作りですから。
あの中軽井沢の方に住んでる人形作家のものなんです。
評判いいんですよ。
あそうなんですか。
へぇわかんないもんなんですね。
あ〜あのところであなたの?あ私丸岡一枝といいます。
丸岡さん。
あの丸岡さんは玄関の死体に心当たりありませんか?ハイ。
ありません。
(工藤刑事)名刺や免許証など身元を示すようなものは一切残ってませんでした。
(津田刑事)死亡推定時刻は昨夜の7時から9時頃だと思われます。
ということはですね。
ま待てよ。
その時間に何か変わったことはありませんでしたか?
(犬の吠える声)ちょっとすみません。
うん。
ハイハイ。
ハイハイコタローヘアースケールもうちょっと待ってね。
大きな犬ですね。
すみません。
女の独り暮らしなので番犬代りに仕込んでしまいましたので。
コタロー。
ああ…そうかそういえば…。
ああそうかそういえばって何ですか?昨夜チャイムが鳴ったんです。
ドアチャイムが?じゃあやっぱりあの男はあなたを訪ねてきたんじゃないんですか?あの方が亡くなったのは7時から9時の間なんでしょう?チャイムが鳴ったのは10時頃なんです。
それもドアチャイムじゃなくて…。
ドアチャイムは…。
(チャイム)このようにピンポーンと鳴ります。
昨夜私が聴いた音は…。
(探知機のチャイム)こちらのほうなんです。
何ですかこれは?お客様がいらしたことを報せる赤外線反応式の探知機です。
へ〜ぇ。
(探知機のチャイム)おかしいな。
さっき我々が通った時は鳴りませんでしたよ。
警察の方の出入りが激しいんでいちいち鳴るとうるさいからスイッチを切ってあったんです。
ああそりゃどうも失礼しましたね。
であの昨夜は何も見なかったんですか?中から覗いてみたんですけど真っ暗闇だしここは死角ですし…。
あ〜あうん。
ちょっと警部。
(探知機のチャイム)な何すんですか?あ〜あのな死体になってくれ死体死体。
死体!?いやいや危ない危ない!ちょっと。
こうだなそれでここに寝かした。
死体死んでんだ死んでんだ。
え〜でセンサーが鳴ったのが10時だったんですよね。
ハイ。
てことは10時にはあの男は死んでいた。
ということはガイ者はどこか別の場所で殺されて誰かがここへ運んできたんだな。
なるほど死体移動ですね。
ピンポーン。
丸岡さんそのときにあの元気なコタロー君は吠えてましたか?えっ?そういえば吠えなかったわ。
グースカ寝てたのかな?いいえたとえ寝てても怪しい人が近づけばすぐに吠えるように教育されてるんです!さっきみたいに。
やれやれまた蕎麦ですか?信州人は手打ち蕎麦に限るんだよ。
嫌なら待ってる?
(女店員)さっき刑事が来た時写真を見たけどどこかで見たような顔だったのよねぇ。
(男店員)う〜ん俺もどっかで見たような気がしてたんだ。
警察と係わりあいになると面倒じゃん。
だから黙ってたんだけど…。
だよな。
ちょっとアンタら!そういうことじゃ困るんだよね!知ってるんだったら知ってるってちゃんと言ってもらわないと偽証罪を適用するぞ。
偽証罪!おい木下。
おだやかにおだやかに。
あの…ちょっとだけ話を聞かせてくれるかなぁ?
(女店員)ひと月半程前追分の全国大会があったときにお客さんに会場に行く道を訊かれたんです。
そのお客さんの顔に似てるかなぁって。
ちょっと待った。
その追分の全国大会というのは?「追分節」のノド自慢みたいなものです。
ノド自慢?全国から追分節を唄う人が集まってきて年1回信濃追分の浅間神社で盛大な大会を開くんですよ。
うん追分節ねぇ。
詳しいことは元禄元年から続く旅館「油屋」で聞くとわかるかもしれません。
(パトカーのサイレン)ここは江戸時代脇本陣だったんですよ。
戦後は立原道造や堀辰雄が愛用した旅館です。
信濃追分節「アーキタホイ」
(大森修治)「小諸出てみヨ〜」「キタホイ」「浅間の山にヨ〜」「キタホイ」「今朝も煙が〜」でぁ…あ〜。
「キタホイ」「三筋立つ〜」「アーキタホイ」ハハンガンさん。
しょ署長!いやあガンさんが乗り出したと聞いてそのうちここへ姿を現すだろうと思ってな待ってたよ。
まあま署長何でここに?管轄外なのに不思議だってか?いやねこの油屋さんのご主人と私は親友でね。
まそんな縁で。
あ!どうも。
「追分節保存会」の名誉会長を引き受けてるんだ。
へぇイヒヒ…。
でね今日はその稽古なんだよ。
そうだったんですか。
(小川)信濃追分節はもともとは小諸から碓氷峠を越えて群馬松井田の坂本宿へ通う馬子たちの馬子唄労働歌だったんです。
それが追分宿の遊女たちが弾く三味線の音に乗ってメロディーが確立され追分節という民謡の一形態として位置づけられたわけですな。
そもそも追分というのは牛や馬を追い分けるという意味なんだがそれが転じて街道筋が二股に分かれる所を指すようになった。
だから追分という名称は全国至る所の街道筋にはあるわけだ。
なるほどなるほど。
しかしですな数多い馬子唄がここ信濃追分宿でのみ追分節として民謡の位置までに上りつめた事実は特筆ものなんですよ。
あのあの基礎知識はそれくらいにしていただいて。
おい木下。
あっ被害者はですねこの間の追分節の全国大会に参加されたようなんですが覚えてらっしゃいませんか?さあ大会には20数名の出場者がありましたがその参加者ではありませんね。
聴衆は600人も集まりましたからその中にいたかどうかまでは私には…。
(大森)ガンさんガイ者の身元まだわからんのだろう?はい。
これは難航するかもしれんな。
(津田)ガイ者の死因は青酸性毒物による中毒死と判明しました。
司法解剖で同時に検出されたビールに混ぜられた毒を服用したと思われます。
死亡推定時刻は所見どおり昨夜の7時から9時だったんですね?ハイ。
丸岡一枝の経営する「こぶし」の前に死体が置かれたと推定される午後10時頃にはすでに死後1時間から3時間経過していたということです。
今回は初動捜査から我々県警との共同捜査になったわけですが…。
竹村警部ご意見は?う〜ん謎というかわからないことも多い事件だ。
第一に被害者の身元を判明できるような遺留品がゼロ。
犯人はなぜガイ者の身元を隠そうとしたのか?第二にこの場所なぜこぶしの表に死体を遺棄したのか?死体が遺棄されたと考えられる午後10時頃こぶしのセンサーが鳴ったそうだが飼い犬はまったく吠えなかったということだ…。
それはなぜか?あの丸岡一枝っていう女性信用できるんでしょうかねぇ。
センサーが鳴ったら普通窓からもっとキチンと確かめるんじゃないでしょうか?うん。
しかしね…。
一枝が覗いた窓からじゃ死体が置かれていた玄関外の床は死角でわからなかったというのは事実だ。
床に死体が転がってるなんて誰だって予想しないからね。
ですが警部。
それこそ偽証だってことも考えとかなきゃ。
死亡推定時刻は7時から9時までだというのに10時にセンサーが鳴ったという丸岡一枝の供述があるからこそ犯人は死体を移動したと我々は想定せざるをえない。
もしこれが偽証なら事件の捉えかたを根本的に変えなくては。
丸岡一枝というのはどういう女性なんだ?東京で友人とファッション関係の店をやって成功し3年前あの家を買い取り人形屋を始めたんです。
現在33歳独身。
先日退官したばかりの大学教授で堅物の父親を持ったええとこのお嬢さんです。
(谷田恵美)ひどい目に遭ったわねぇ。
魔女人形せっかく人気が出てきたっていうのに…。
もしも売れ足に影響が出たら恵美さんに申し訳ないわ。
あなたの責任じゃないわよ。
どうぞ。
あなたはとばっちりを受けただけ。
ねぇでも一枝さん死んでた人にほんとに心当たりはないの?う〜ん。
知らない人だからこうして気丈に振る舞ってるけど。
知り合いだったらそうはいかないわよ。
今ごろ寝込んじゃってる。
コタローどうしたの?
(探知機のチャイム)やだ〜まさかまた死体じゃないでしょうね?やだ〜。
エー!どうも夜分すみません。
刑事さんごめんなさい。
警部さんどうぞ。
お邪魔します。
警部さん。
どうぞ。
どうも夜分遅くにすみません。
ウォホホホやっぱり見慣れぬ正体不明の人物に対してはコタロー君はよく吠えますね。
やあやっぱり丸岡さんにとって忠実な番犬だ。
コタロー静かにね。
あご紹介します。
今朝お話した人形作家の谷田恵美さんです。
こちらがこの不気味な人形をこさえた作家の先生ですか?見た目は悪いですけどこれはみんなを不幸から守る魔除け人形なんです。
ああそうですかいや失礼しました。
いやでもそういわれてみればなかなか可愛いですよねぇ。
ちょっと失礼。
(チャイム)これなんかあのウチの女房が怒ってふくれたときにそっくりですよ。
いやリアルなもんですねヘヘヘ。
すごく可愛い〜。
どうぞ。
すみません。
先生今晩は。
陽子!おまえ何でここに?あらあなた来てたの?ちょうどよかったわ。
所轄に届ける手間が省けたわ。
ハイお泊りセット。
ああハイ。
だけど何でこの店に?えほらあれ。
「手作り人形教室講師谷田恵美先生。
毎週水曜日当こぶしにて」陽子オマエこの教室に通ってたのか?うん先月からねぇ。
だから事件現場がここだと聞いてほら今朝ノドを詰まらしちゃったの。
まあこの度はとんだことで。
この人たちがウロウロしてるから午後の教室は中止と思ってこんな夜分に失礼を。
とりあえずお見舞いをと思いまして。
それはわざわざすみません。
ごめんなさいね。
こんな亭主で何かご迷惑おかけしてませんか?いえいえでも陽子さんのご主人警察にお勤めだと聞いてたけどまさかこの方だったとはねぇ。
ええまあ。
確か「信濃のコロンボ」って異名をとる敏腕な警部さんなんでしょう?いや〜それほどでもないですけどね。
で私が迷惑を受けている事件の見通しはどうですの?コロンボさん。
はあまあ現時点でひとつ言えることはここに死体を遺棄した犯人はコタロー君の知っている人物だということですね。
えっ!じゃあ私の知ってる誰かがあんな死体を運んできたんですか?まあそう考える以外にこの忠実な番犬であるコタロー君が吠えなかったということが説明がつきませんからね。
(安原耕三)すみません。
(小野初子)ハイいらしゃいませ。
寒いんでカップ酒を1本いただけませんか?ハイ210円です。
ここは本郷追分といったんですか?ハイもっとも今の番地は向丘1丁目ですけどね。
追分と呼ばれてたとは知らなかったなあ。
すると追分節なんかも残ってるんですか?はぁ?追分節ですよ。
江差追分だとか信濃追分だとかいう。
ああそういうのは別にないと思いますけど…。
ないんですか?そうですか。
どうもごちそうさまです。
ありがとうございました。

(老人)もしここで酔っぱらって寝てちゃ駄目ですよ。
〜〜へっ!
(パトカーのサイレン)〜
(田代鑑識課員)岡部警部毒物による中毒死とみられます。
死亡推定時刻は昨夜の8時から11時の間ぐらいでしょう。
(岡部和雄)身元は?
(川島刑事)まだです。
氏名を示すようなものは一切身に着けておりません。
(TVの声)今朝早く文京区白山1丁目の円乗寺境内「八百屋お七」の墓の前で男性の死体が発見されました。
警視庁捜査一課は殺人事件とみて白山署に捜査本部を設置。
付近の聞き込みを始めました。
この人です。
昨夜店じまいをする直前午後9時頃いきなり店に飛び込んできました。
あの男性は「ここは本郷追分といったんですか?」といい江差追分や信濃追分のことも聞いたんですね?ハイウチの壁に飾ってある「本郷追分高崎屋」をひとしきり眺めた後そんなふうに。
それから?カップ酒を呑み終わった後雨を避けるように週刊誌を頭に載せて円乗寺の方向へ走っていきました。
週刊誌を頭に?ええ。
あれは週刊サタデーだと;Wいます。
毎週日本の川が表紙になってるんでわかりやすいんです。
ウチも取り扱ってるんで…。
いらっしゃい!警部さ〜ん!ここ1か月の間に発売された週刊サタデーです。
今発売されてるのは表紙が「四万十川」のやつです。
どうです?昨夜の男が傘代わりに使っていたのはこれですか?〜いいえ違います。
表紙は四万十川じゃありませんでした。
〜〜これです。
あの人が持ってたのは〜この「天竜川」の表紙です!〜天竜川。
〜これは3週間前に発売されたやつなんですが…。
〜何でこんな古い週刊誌を〜持っていたのかな…。
帰ったぞ!お帰りなさいあなた。
長野に聞き込みに戻ったついでに寄ったんだ。
風呂風呂。
ハイハイ。
何しろな署じゃ風呂に入る時間もありゃしないからな。
それからな陽子お泊りセットの交換頼む。
ハイハイ。
〜なあ陽子。
あのこぶしの経営者の丸岡一枝さんとそれからあのほらあの不気味な人形作ってるあのな何ったっけなあの女…?谷田恵美先生のこと?あああの2人は両方とも東京からの移住者であんな寂しいところに店とか工房とか構えてさ近所の住民とのつきあいもあんまりないようだしどういう人間なんだありゃ?あの方たちはねぇ。
都会での生き馬の目を抜くような仕事と友達つきあいに疲れてそれで軽井沢に永住することを決めたの。
しかしなどうにも交友関係がはっきりせんのだよ。
おぅそれ天竜川だな?え?ああそうねぇ。
懐かしいなあ。
同じ信濃の国に居ながら故郷の伊那谷にはずっと帰ってないからなあ。
う〜ん。
アッ!何だ?あなたこの間着替えに戻った時にね追分節がどうのこうのって言ってたでしょ?あぁあ。
今回の被害者がな信濃追分で開かれた追分節大会に来てたんだよ。
ところがその前後の足取りがどうしても掴めないんだ。
これね古い週刊誌なんだけどこんな記事が出てたから美容院からもらってきたの。
ほら役に立つかしら?〜〜ホウホウ。
ホウ。
被害者はこの大会を〜見に来てたんだ。
〜よかった!〜やっぱり役に立ったわ。
さすがコロンボの妻〜ツーといえばカーだもんねぇ。
〜〜もう〜ありがとうは?〜どうだ何か見つかったか?駄目ですねぇ。
週刊サタデーだけでなく主催した軽井沢観光協会からもありったけの写真を借りてきたんですがいまんところガイ者らしき男が写ったものは見つかりません。
ハイ捜査本部あどうも。
警部警視庁の岡部さんから。
岡部警部。
あもしもしどうもご無沙汰しております。
竹村です…え?追分ですって!ええ。
ウチのガイ者が雨よけに使っていた週刊誌に信濃追分と追分節に関する記事が出ていたんです。
あのもしかしてそれは天竜川が表紙になってる週刊サタデーですか?ええそうですそうです。
いやガイ者はなぜ3週間も前の週刊誌を持っていたのか?もちろん雨をしのぐために拾っただけなのかもしれませんが。
(新幹線の警笛)ガンさんわざわざ来ていただいて申し訳ありません。
いやいや軽井沢から上野まで61分上野からこの本郷までタクシーで10分電話で長話するよりは「百聞は一見に如かず」ですよ。
ここですよ。
本郷追分高崎屋の絵があるのは。
〜週刊誌の記事だけじゃないんです。
ガイシャは殺される前の夜あの絵を熱心に見ていたというんです。
ウンであなたに「このあたりにも追分節が残ってるの?」って訊いたんですね。
ええ。
そのことがねどうにも気になりましてね。
そうしたら我がほうの事件の3日前に信濃追分でやはり殺人事件が起こってるというじゃありませんか。
そしたら担当が私だった。
ええ。
そちらの追分は中仙道と北国街道の分岐点なんでしょう?えぇ。
この本郷追分はここがこの角が中仙道の起点なんです。
なるほどここをず〜っといけば信濃追分に到着するわけですね。
〜なるほど。
〜白山1丁目!木下君。
白山1丁目というと…。
え?何でしたっけ?軽井沢に移る3年前まで丸岡一枝さんが住んでいた所だよ。
あっそうでした。
丸岡一枝さんといえば死体が遺棄されていたというこぶしの?そうそうそうですよ。
彼女の実家がこの白山1丁目なんですよ。
113番地です。
あっそこならこちらの事件の死体があった八百屋お七の墓と目と鼻の先ですよ。
単なる偶然ですかね…。
警部警部のことを敬愛してやまない私の勘によればですねやっぱり丸岡一枝はあやしい。
彼女の店先と実家の傍に相次いで2つの死体。
「犯罪の陰に女あり」う〜むあやしい。
あのね君の発想はどうにも週刊誌的なんだよなぁ。
週刊誌のおかげで2つの事件が繋がってる可能性が発見できたんでしょう?週刊誌のこと悪く言ったらバチがあたりますよ!ガンさんガイ者はここに横たわっていました。
使われたのは青酸性毒物。
胃からアルコール分日本酒が検出されました。
毒殺という手口も使用された毒物も同一。
アルコール分が検出されたことも同じ。
ガイ者の身元は両事件とも依然として判明せず。
しかしながら歳格好もほぼ似ている。
そのうえに追分節という共通点もある。
ガンさんやはり2つの事件は何らかの関連性があると思います。
ガンさんとなら心強い。
協力して一挙解決といきましょう!岡部さんやりましょう!せっかく岡部警部がメシをおごってくれるっていってるのにどこへ行くんですか?ここここ。
丸岡さんの家ですか?違うの!すみませんちょっとお尋ねしたいんですが…。
え〜113番地というのはどこですか?丸岡さんというお宅なんですが?
(谷田幸雄)丸岡さん?丸岡さんならこのすぐ裏です。
そうすかそれはどうも。
どうもどうも。
おっと!こりゃ失礼。
(永井満良)こりゃどうも。
こっちか。
〜あの骨董屋あんな商売っ気なくて営業成り立ってるのかねぇ。
それが東京なんですよ。
やたらゴテゴテ飾ってんのはね田舎だけなんです。
あったあったここだよ。
(丸岡和人)迷惑だ迷惑な話だね。
まあ〜そうでしょうがお嬢さんの一枝さんのお店の前に謂れもなく死体が遺棄されるということもどうも考えづらいわけでして。
まあお嬢さんに心当たりがないにしてもお父さまやご家族にもしかしてですよ誰かに恨みを買うような…。
そんなことがあるわけがないでしょう!私はね学問一筋で生きてきたんだ。
女房を20年前に亡くした。
大体あの娘が結婚もせんで軽井沢で店なんか出すからこんなくだらんとばっちりを受けるんだ。
今度娘に会ったらさっさと東京に帰るように言ってくれませんか。
ところで被害者は追分節のファンみたいなんですがね何か心当たりはございませんですかね?追分節?私には興味ないね。
そうですか。
あそれから先日この近くの八百屋お七の墓の所で殺人事件があったんですがご存じでしょうか?ああ知っとるが…。
実はですねその被害者も追分節のファンらしいんですよ。
いずれにせよ私には関係のないことだ。
娘も同じだ。
これ以上何も話すことはない。
さっさと帰ってくれ!ハア。
ああちゃ!警部スクープされちゃいましたよまずいなぁ。
ハイお姉さん。
(販売員)どうも。
〜この本郷追分はここがこの角が中仙道の起点なんです2つの事件と追分節はどういう意味をもつのかな…。

(秋山徳二)ああ〜駐在さん。
(駐在)オオ秋山さん。
さっきさぁワイドショーで見たんだけんど儂軽井沢で殺されたって人に心当たりがあるんだワ。
本当かね?本当だワ本当。
(飛行機の着陸する音)あの〜もしかして…。
あっ秋山徳二さんですね?はい。
遠いとこをすみませんです。
いえいえ長野県警の竹村です。
こちらは木下。
間違いありません。
桑江仲男君です。
桑江仲男さん?はい。
儂と桑江君とは夕張炭鉱と南大夕張炭鉱で一緒でした。
お2人は炭鉱で働いていらっしゃったんですか?はい。
夕張炭鉱のほうは昭和56年10月16日のガス突出事故で100名近い犠牲者を出して事実上閉山へと追い込まれました。
その後儂たちは南大夕張に移ったんですがそこも昭和60年5月のガス爆発事故で大勢の犠牲者を出しました。
儂も桑江君も2つの大事故から生き残ったのが不思議なくれぇで。
ご苦労なさったんですねぇ…。
それが殺されるだなんて…。
なんてことだよ。
桑江さんには身寄りはあるんですか?それが…炭鉱にいた時には奥さんはいたんですが逃げられてしまって。
それから長い間は独り暮らしでしたワ。
奥さんには男ができて…。
ここが儂らの住んでいた炭住です。
そしてそこが儂んちで桑江君はその先でした。
桑江君の奥さんを奪ったのは暴力団員でした。
暴力団員?ええ。
あの頃は事故の犠牲者の遺族に会社や国から弔慰金だとか見舞金だとか…。
そいつを狙って銀行やら新興宗教やら暴力団やら集まってきて…まるでハゲタカみてぇに。
暴力団は炭鉱で働くもんをイカサマ博打に引き込んだり何やわけも分からない内にお金を騙し取ったり。
なんでもありでしたワ。
ひどいな。
そもそも石炭会社は人柱の上に建っていたようなもんです。
人間の尊厳なんて儂らには与えられてなかったんですワ。
最後に桑江さんに会われたのはいつですか?1か月程前です。
彼は江差に移り住んでいて久々にここに儂を訪ねてくれたんですワ。
桑江仲男:思い切って東京さ出てみようと思うんだ。
東京さかい?ああ。
いい仕事を紹介してくれるって人がいてな。
結構割りのいい仕事なんだワ。
ハハハ…。
・江差追分・「松前江差の…」・「はいつ!」・「津花の浜で…」で2人で江差追分を唄ったんですワ。
江差追分ですって!?そうですワ。
江差追分は元々海で死んだ男たちに捧げる悲しみの唄だったようです。
それがいつしかヤマの唄になった。
ヤマの唄に?ええ。
この墓の下に埋まってるもんたちはみんな炭坑事故の犠牲者です。
今じゃ家族たちみんな離ればなれになって墓参りに来るものもろくにおらんようになった。
ヤマで死んだもんのお通夜の席で儂らヤマのもんはオイオイ泣きながら江差追分を唄ったもんですワ。
それじゃ桑江さんもよく江差追分を唄ったんですか?はい。
桑江君は「追分節」の歴史もよく調べていて…。
江差追分はな元々は長野県の信濃追分の「追分節」が根っこなんだワ。
ほう。
信濃追分な…。
信濃追分節が越後に流れそこで船頭たちが唄う「舟歌」として生まれ変わった。
それが北前船に乗って江差さ渡って盛んになったんだワ。
そうかね。
だけんどヤマが潰れてから江差追分会の面々も散りぢりバラバラだべ江差追分会?なんでも江差に本部があるとかで夕張のヤマでも「追分」の好きな連中が集まって支部を作っておりましたワ。
あなたがたもそのメンバーだったんですか?儂は入っておりませんが桑江君は熱心でした。
その縁でヤマをクビになった後江差に引っ越したんだと思います。
江差追分「追分節」信濃追分…。
桑江君が長野の信濃追分で殺されたのも何かの因縁ですかね。
いえねあの時別れ際にね…。
秋山さん俺「追分節」をやっててよかった。
遅くまですまなかったね。
あっ俺に今度の仕事を紹介してくれたのは「江差追分会・夕張支部」のメンバーなんだワ。
そうかね。
実はなこないだ貯めてた小遣い吐き出して信濃追分さ行ったんだ。
「追分節」の全国大会があるってんでな。
そこで唄ったんか?いやぁ聴いてただけだ。
そこで江差追分会・夕張支部に入ってたヤツに再会したんだワ信濃追分で江差追分会・夕張支部のメンバーに再会した?そうです。
そう言うとりましたワ。
木下君アレアレ復顔写真。
はい。
イヤイヤこれじゃなくてあのホラホラ…八百屋お七のほう!ああ…。
これか…。
そうそう。
この人に見覚えありませんか?さぁ知らねぇです。
そうですか。
こちらの人も「追分節」に何らかの関わりがあると思えるんですが…。
お役に立ちませんで…。
もしかして浮気して暴力団の男に走った奥さんがらみってことも考えられますよね。
上京して一旗上げようとした桑江は奥さんに復縁を迫った。
それに腹を立てた不倫相手が…。
私は「追分節」が何らかの形で関わってると思うんだがなぁ。
え〜と新千歳空港の次の羽田行きはですね…。
江差!は?決まってるだろ!桑江の足跡を洗うために江差に行くんだよ!
(小西勝男)う〜っ!
(船の汽笛)待ってくださいよ。
もうメシ食ってから行くって言ったのに…。
(佐々木)江差追分会は全国に122もの支部と4,000人以上の会員を抱える一大組織なんですワ。
ニシンが獲れなくなってからこっち「追分節」は江差を代表する重要な観光資源になってるんですワ。
アァあったあった。
やっぱり桑江仲男さんは夕張支部の会員でしたね。
今この夕張支部はどうなってるんですか?残念ながら解散しました。
夕張支部は事実上夕張炭鉱と南大夕張炭鉱の従業員で構成されてたんですワ。
この名簿の他に何か夕張支部の資料みたいなものは…?たしか写真があった筈ですワ。
(竹村/木下)写真!?はい。
あの各支部で会合や旅行会があった時記念にと送ってくれた集合写真を保管してあるんですワ。
あ〜ちょっと待っててください。
これが桑江仲男だ。
確かに桑江仲男だ。
警部ここを見てください!どこどこ真ん中の段の右から2番目です。
どこどこ?これです。
う〜ん?…確かに八百屋お七の墓の前で殺されていた男だな。
安原耕三と桑江仲男か…。
東京での事件のガイ者の名前これで判明しましたね。
桑江仲男と安原耕三このガイ者は2人とも江差追分会・夕張支部の会員だったと…。
千歳市安平853番地「安楽荘」12号室だ。
安平は石勝線で千歳空港から1つ目追分駅の傍ですワ。
えっ追分!北海道にも追分があるんですか!?はい。
でもこっちのは道ではなく鉄道の分岐点を名付けたものなんですワ。

(佐々木)追分という町は内地から渡ってきた人たちが室蘭本線に乗ってやってきてさてどっちさ行こうかと思案する場所だったそうですワ。
まっすぐ北さ向かえば美唄から旭川。
東さ乗り換えれば夕張炭鉱。
手っ取り早く金になるのが夕張だが命は惜しい。
思案の挙句大抵は金の魅力につられて夕張さ向かったそうですワ。
でも結局は炭鉱で命を落とすか運良く助かっても職を失くすしかなかったわけですな。
追分っていうのは道だけじゃなく人生の分かれ道でもあったんだ。
あ〜…。
おい木下君岡部警部に連絡だ。
被害者の名前が判明したって。
はい。

(大森)被害者は小西勝男29歳の渡り大工。
死因は頭部を鈍器のようなもので殴打されたことによる頭蓋骨骨折と脳挫傷だ。
渡り大工といえば決まった棟梁を持たずに条件のいい仕事があれば全国渡り歩くフリーの大工だな。
えぇ。
よほどの腕がないと仕事にありつけないんじゃ…?小西もそれなりの腕は持っていたようだがな。
博打好きでな。
稼いだ金を上田市に持ち帰っては怪しげなカジノや賭場に出入りしていたようだ。
暴力団とモメていたという噂もあるぞ。

(大森)そこでだ。
暴力団絡みでな我が長野北署と地元署の合同捜査となったわけ。
で署長は私に何をしろと?・
(大森)決まってるじゃないか。
応援に来てほしいんだよ。
せっかくですがね署長。
私はね署長お得意の「追分節」で今てんてこ舞いなんですよ。
どうしてもダメかね?申し訳ありません。
体はひとつなもんですから。
では失礼します。
(恵美)こう…やっぱり下のほうがいいんじゃないかしら。
(陽子)はいこんな感じでどうでしょうか?あぁいいわ陽子さん上手になりましたね。
まぁそんな…。
この分ならすぐご主人の月給をたすけられるわ。
陽子さん。
あの事件まだ解決してないからあなたのコロンボさんお宅にはずっと帰ってこないんでしょう。
寂しくありません?えぇでももう慣れっこになってますから。
一刻も早く犯人が捕まってほしいわ。
じゃないと私なんだか気味が悪くて。
そうよね一枝さんにとってはひとごとじゃないんですものねぇ。
あっそういえばウチの人ね「追分節」がどうのとかと言って今北海道の夕張に出張捜査に行ってるんですよ。

(一枝)え〜北海道の夕張?警部さんも大変なのねぇ。
いやなんか警部さんなんて言われると…。
だってコロンボさんでしょ。
格好だけ。
この先のようですね安原耕三が住んでたアパートは…。
この人形は…!?ちょっとどうしたんですか?
(北本)これ売り物じゃねぇんです。
あんまりよくできてるんで店の宣伝にぶらさげてるんですワ。
この帽子や顔の作りなんかこぶしの人形と寸分違わずそっくりだ。
なぁ。
そうですね。
随分手の込んだ仕上げで手作りみたいですけどどこで手に入れられました?貰ったんですワ。
誰に?ウチが経営してるそこの安楽荘ってアパートに住んでた人に。
安楽荘?まさしく安原耕三が住んでたアパートじゃないですか!じゃおじいさんこの人形は安原さんに貰ったんですか?いやいや安原さんじゃねえです。
5年程前まで安原さんの隣の部屋に住んでた女の人ですワ。
女の人?はい。
二親を南大夕張で亡くしてなぁ。
三次災害のようで責任ねえって会社が弔慰金支払うの渋ってまだちっちゃい歳の離れた弟抱えて苦労してた女の人ですワ。
働き口なんてこの町じゃ無いんで札幌さ出て水商売に勤めて弟を高校までやったんだが弟がグレて飛び出しちまって行方知れず。
それでガックリきたんだろうな。
もう北海道にはいたくねえってどっかさ引っ越して行ったんだワ。
おじいさんその女の人の名前は?恵美さんだぁ。
谷田恵美。
えっ谷田恵美!?人形作家の谷田恵美さんです恵美さんは指先が器用でな。
よく人形こさえてたんだ。
引っ越す時にお礼にって人形を置いていったんだワ。
父親が同じ炭鉱で働いてたってんで安原さんはよく谷田姉弟の面倒を見てたワ。
ここが安原さんが暮らしてた部屋ですワ。
(戸を開ける音)もう出てって1年半になるけど新しい借り手がねえんだワ。
そういや朝に晩に安原さんはよく江差追分を唄ってたな。
警部。
あのポスターは2002年の開催分です。
つまり安原耕三が引っ越して行く前のものだな。
安原はあの大会を観に行ったんでしょうか?うんおそらくな…。
実はなこないだ貯めてた小遣い吐き出して信濃追分さ行ったんだ。
「追分節」の全国大会があるってんでな。
そこで唄ったんか?いやぁ聴いてただけだ。
そこで江差追分会・夕張支部に入ってたヤツに再会したんだワそこで会ったというのが安原耕三。
桑江は安原にいい仕事があると勧められて江差を引き払って東京へ出る決意をした…。
なるほど。
これで信濃追分での被害者桑江仲男と東京の八百屋お七の墓前での犠牲者安原耕三との関係が完全に結びついたわけですね。
はい。
2人はかつて炭鉱労働者でした。
そして江差追分会・夕張支部の会員でした。
その2人が信濃追分節・全国大会で再会したんでしょう。
そして2人は相次いで殺された。
人形作家の谷田恵美は安原耕三とは見知った関係だった。
ガンさんは谷田恵美がこの連続殺人事件に絡んでると…。
えぇ絡んでるとしたらその動機は何なのか?軽井沢に戻ったらすぐにアリバイを含めて彼女の過去を洗います。
(パトカーのサイレン)どうしたんですか?待ってくださいよ!事件は待っちゃくれないんだよ!もういつもこうなんだから…。
(カッコウの鳴き声)
(木板をたたく音)・
(恵美)はい。
(戸が開く音)どうも。
どうぞ。
ありがとうございます。
いただきます。
うんうまい!しかしなんですねこんな山ん中で女ひとり。
寂しくありませんか?別に。
引っ越された陶芸家の方からお借りしてるんです。
あぁそうですか。
こぶしさんのお店の前に死体が投げ棄てられていたあの事件がなかなか解決のメドが立たないんですよ。
丸岡一枝さんのお知り合い関係を片っ端から当たってみてるんですがね。
そういうことでどうかお気を悪くなさらないでください。
谷田さんあなたの本籍地はどこですか?はっ?本籍地です。
東京ですが…。
えぇでもその前は?北海道の夕張市ですよね?もう調べられてるわけですね…。
はい。
あなたは夕張市から東京に本籍地を移されましたよね…。
え〜東京都台東区上野7丁目1番地。
ところが調べてみるとこの番地には上野駅しか存在しない…。
谷田さんあなたはなぜ住んでもいない東京しかも上野駅を本籍地だと偽ってるんですか?ハーッ確かに私は夕張で生まれ育ちました。
そして…。
そしてご両親が炭鉱事故で亡くなられた後同じ北海道の追分町に移住されましたね。
えぇそこでも苦労して私は北海道にはいい思い出がないんです。
それに…あの時代の知り合いとのつきあいはできるだけ避けたかった。
それで架空の本籍地を初めて東京に出てきた時の思い出の上野駅にしたんです。
町名や番地がデタラメでなければ役所は書類を受理しますからね。
なるほどそれで上野駅ですか…。
私はどうしても夕張の炭鉱での札幌で働いた辛さを忘れたかった。
書類上の戸籍なども葬りたかったんです。
あなたは東京で殺された安原耕三さんを知ってますよね?北海道の追分のアパートでお隣同士だったでしょう?はい。
谷田さん。
13日と3日後の16日どこで何をしていたか教えてください。
それって…。
えぇこぶしの前で桑江仲男さんの死体が棄てられてた日と東京で安原耕三さんが殺された日です。
私…私が疑われてるんですか!いやいや念のためですよ念のため。
2日とも私はこの工房で人形を作ってました。
創作に没頭するためにいつも食料は数日分買い置きしておきますので…。
私のアリバイを証明してくれる第3者は誰もいません。
そうですか。
また改めて伺うと思いますがよろしく。
信濃追分と江差追分。
2つの事件に「追分節」が関係してる以上本籍地を虚偽申告している谷田恵美は怪しいですね。
いややはり丸岡一枝の線じゃないでしょうか。
センサーが鳴ったのにあの犬が吠えなかったというのはどうしても納得いきません。
やはり彼女は偽証を…。
だけど一枝と「追分節」および江差追分会・夕張支部の関係はないに等しいじゃないか。
谷田恵美の履歴のどこかに2人のガイ者との軋轢があったと考えるほうが自然だ。
警部。
警部はどう考えてるんですか?う〜んう〜ん…。
私谷田恵美の過去をもう1度洗い直してみます。
谷田恵美。
谷田恵美…。
ガンさん連絡ありがとう。
早速我が管内の大工殺しの件だがこれが被害者の小西勝男だ。
いや〜署長にわざわざご足労願ったのはですね実はちょっと相談に乗っていただきたいことがありまして。
ほおすると桑江仲男は割のいい仕事をするために北海道から東京へ出てきたってわけか…。
仕事の詳しい内容については聞いてなかったみたいですが。
署長。
割のいい仕事ってのはかなり危険なというかヤバイ仕事だったんじゃないかと思うんですよ。
う〜ん…。
かつての江差追分会のメンバーの誰かが組織的な仕事を始めた。
そして1年半前まず安原耕三がそれに加わった。

(祭りの騒音)そして安原と桑江は追分節全国大会の浅間神社で出会った。
安原は桑江を仲間に引き入れようとした。
ところがそれがヤバイつまり非合法の仕事だと知った桑江は参加を断ろうとした。
しかし秘密を知られてしまった以上組織としては口封じをせざるを得なかった。
つまりは仲間割れか?はい。
となると桑江を引きずり込もうとした安原までが殺された理由は?親友を殺された安原が組織に楯突いたかあるいはその畏れを感じた組織の統率者が先んじて手を打ったと考えてみてはどうでしょうか?やはり谷田恵美の存在だな。
彼女は事件に絡んでいるのかいないのかもし絡んでいるとしたら彼女の役目はいったい何だ?谷田さん。
いい思い出がないというのもわかるんですがねあなたなぜ夕張での過去でのこと全然お話にならないんですか?2つの事件を解く鍵は夕張にしかも江差追分会の中にあると私は思うんですよ。
なんでもいいんですよ。
桑江さんのこと話していただけませんか?竹村さん。
はい。
毎日お見えになられてもお話することはありませんし仕事にも集中できないのでどうかお引取りください。
そうですか…。
あぁそうだ。
たしか弟さんがいた筈ですよね。
今どうしていらっしゃいます?若い頃にグレて家を飛び出したままです。
それっきりお会いになってないんですか?ええ。
二親を亡くされてたった2人の肉親なのにそれは寂しいことですね。
(カッコウの鳴き声)恵美さんから弟さんのことを聞いたこと?ええええ。
何でもいいんですけど。
さあ。
恵美さん昔のことは滅多にお話にならないから…。
私こちらに来て恵美さんと知り合ってとても親しくしていただいているんですけど恵美さんの昔のことは何も知らないんです。
もしかするとあの方は私のこのお店なんかお嬢さまの道楽のように思ってるんじゃないかしら…。
いや〜そういうこともないでしょうけどね。
でもなぜ?お客さまにいただいたワインをここで一緒に飲んだ時恵美さん珍しく深酒をしてとても酔っぱらって…。
私ね…ちっちゃい弟を育てるためにまだ未成年だったのに水商売に入ってひどいことまでやらされて…。
あゴメン。
今の聞かなかったことにしてね彼女が過去に触れたのはその1回だけです。
竹村さん。
まさか恵美さんのこと疑ってらっしゃるんじゃないでしょうね?あの人は人殺しなんてする人じゃない。
そういえば昔のこともう1回だけ聞いたことがあります。
私子供の頃から死体を見るの慣れてたの。
炭鉱の事故で同じ炭住に暮らしてた人が次々に亡くなってみんな志半ばで死んでったわ。
みんな苦しそうな顔して恨めしそうに死んでった。
人が死ぬのっていやなものですよね。
だからここの表に死体が置いてあったって聞いた時私正直しばらくここにお邪魔するのよしたくなりました。
恵美さん…。
でもあなたをひとりにはしておけないから勇気を出してあの夜ここへ来たのよそんな人が人殺しなんかできるわけないじゃないですか!
(チャイム)ちょっと失礼します。
はい。
(一枝)あら!?お父さん…?いくら電話で話してもラチがあかんからこうやって直接乗り込んできたぞ。
初めてねここにいらしたの…。
ああ。
先日はどうも…。
お邪魔をしております。
ああ…その節はどうも…。
はあ〜こういう店か…。
何だこれは!なあ一枝…早くこんな店を畳んで東京に帰ってきてくれないか?おおっコタロー!お前ちゃんと一枝のガードマンやってるのか?
(コタローの甘えた鳴き声)あの…今ふと思ったんですがお父さんは今日はじめて軽井沢のこの店にこられた…?なのにコタロー君はお父さんに吠えるどころか喜んでますね?だとすると3年前に白山一丁目のご実家に一枝さんがいた頃からすでにコタロー君は飼われていたんですか?えっ!?ああ…はい。
そうだったんですか!ああっしまった!私はとんでもない勘違いをしてた!いやね…。
女の独り暮らしなので番犬代わりに仕込んだので…初対面のときに一枝さんそう言われたんで私はてっきりコタロー君は軽井沢に引っ越されてからボディガードのために飼われたんだとばっかり思っていましたよ。
ああ…コタローはあの実家の裏の「三叉路」という骨董屋さん絡みでいただいたものなんです。
ええっ!?三叉路…?〜〜ここここ…〜ああっ!うん!?三叉路が〜建てられているとき長野県の上田から仕事に来ていた〜若い大工さんがいたんです。
自分のワゴン車に寝泊りしながら仕事を渡り歩いている人で〜犬の赤ちゃんと〜移動していたんですがだんだん大きくなり一緒には暮らせなくなったと…〜で可愛くてたまらなかったので私が貰い受けたんです。
〜ちょちょっと待って…上田市出身の若い大工ですって?はい。
〜小西勝男さんという人です。
〜小西勝男!?これが〜被害者の小西勝男だ〜ああ…ああっ!かわいそうについこの間暴力団か誰かに金銭トラブルで殺されたと新聞で読みましたが…。
おおっ…おっ!ううん!はあっ!警部…!?警部!大丈夫ですか?警部!あっ!いやごめんごめん!これは大変なことになってきました。
あのコタロー君が…。
(コタローの吠える声)君は吠えなくても…。
コタロー君が東京で飼われていたという事はコタロー君が見知っているが故に吠えないという相手の人物がグッと増えるということなんですよ。
つまりですよたとえばコタロー君の元の飼い主の小西さんがこの軽井沢の店にやって来たとしましょう。
コタロー君はさっき丸岡先生にやったように吠えるどころかシッポを振って体全体で喜びを表したんじゃないでしょうか?ええきっとそうでしょう。
うん。
だったら同じように同じようにですよ小西さんが建設に関わっていた三叉路に出入りをしている人間にもコタロー君は懐いていたのでは…?懐いていました。
施工主を含めて半年の間に工事中の三叉路には数人の男性が出入りしていたんですがコタローはまだ小さかったせいかその全員に懐いていました。
う〜ん。
三叉路は骨董屋ですが品数も少ないみたいですしあれで商売は成り立っているんですかね?どうですかね?いつも同じような連中の出入りだけで客が入っていくのを見たことがありませんね。
う〜ん。
玄関に死体が置かれても吠えなかったコタロー君。
〜桑江仲男…安原耕三と追分節…。
〜三叉路の建設に関わってコタロー君を一枝さんに譲り〜先日殺されてしまった小西勝男という渡り大工…。
〜三叉路なんですが古物商として登録していて代表者は永井満良です。
永井満良…。
ええ。
その永井ですが調べてみたら閉山するまで南大夕張炭鉱に勤めていることがわかりました。
南大夕張ですって…!?〜ええしかも三叉路には他に5名の役員がいるんですが〜そのいずれもが夕張か南大夕張の出身者なんです。
〜安原耕三はどうですか?私の推論が間違っていなければ〜北海道の追分を引き払う〜1年半程前から安原は三叉路の構成員だった〜はずなんですよ。
ええ残念ながら安原の名前はありません。
〜ですが役員ではなかったが構成員のひとりだったと私も…。
5人の役員の名前を〜教えてください。
読み上げますよ。
金井信男〜中島隼人…桜井一郎。
西村剛…新井信二…。
〜以上ですね。
〜ああ…。
〜〜岡部警部!今のは全員自然消滅した江差追分・夕張支部のメンバーですよ!やはりそうですか。
ガンさんこれでガンさんの推論が次第に裏付けられてきたことに…。
問題は骨董品屋を標榜している三叉路の本当の仕事が…おそらくは割のいい非合法の闇の仕事というのがいったい何なのかということですよ。
〜〜この男…!?おお失礼これはどうも…〜〜〜そういうことか。
私のほうはガンさんたちとの〜合同捜査に切り替えるべく上司の許可を得ます。
〜ガンさんも@’Hs!*はい!岡部警部〜一緒に頑張りましょう!〜この度は張り込みの場所を提供していただき感謝しております。
一度は娘が疑われておりますし容疑を晴らすためなら…。
さあどうぞ。
おそれいります。

(カメラのシャッター音)〜警部いつかあの店に〜道を聞きに入ったときに我々に応対した男ですね。
〜そうだな。
他はみんな50代〜60代だがあの男だけ飛びぬけて若いな。
〜どうぞ。
〜サンキュー。

(吉川)あっ!どうした?〜あれが代表取締役の永井満良です。
(カメラのシャッター音)おい幸雄。
はい。
うん…!?幸雄?今男は「幸雄」と呼ばれたなぁ?はい確かに…。
多分…いやおそらく…!?おい木下君。
はい。
谷田恵美さんに至急連絡を取ってくれ。
はい。
わざわざどうもすみません。
〜〜幸雄…。
ええっ。
〜〜間違いありません。
〜私の弟の幸雄です。
本当なの?〜恵美さんがあんなに会いたがっていた弟さんなの?〜〜やっぱりそうですか。
〜ああっ永井さん…!?えっ!?恵美さん永井満良をご存じなんですか?〜江差追分会の役員で昔からよく仲間の面倒を…。
〜警部!お願いします。
男らはそれぞれ東南アジアの国々に入国出国を繰り返し陶器類を輸入しています。
一方谷田幸雄はその陶器類が三叉路に持ち込まれた翌日決まったようにバッグを抱え暴力団関係の事務所に…。
岡部警部!三叉路の家宅捜索令状を取りましょう。
〜〜何か…?永井満良さんですね?〜〜ああ…そうですが?関税法並びに麻薬取締法違反容疑で〜家宅捜索します。
〜〜ああっあの…〜それはイタリア製…そっちはベルギー製の〜貴重な陶器類ですから割らんように細心の注意を払ってください。
〜どうも割らないと証拠品は発見できないようですねぇ。
ななんですって…!?実はさっきそちらの方が海外から持ち込まれたこの陶器成田空港の税関事務所でレントゲン照射検査をしたんです。
その結果この陶器は二重構造になっていて中に何か粉末状のものが詰まっていることがわかりました。
そんなバカな!〜これはヘロインですね。
〜永井満良さん〜あなたたちは東南アジアからヘロインを陶器類に隠して持ち込み〜谷田幸雄さんはそれを暴力団に売り渡す役目を演じていた。
〜これが生と死と隣り合わせの炭鉱で互いに苦労し亡くなったお仲間を「追分節」で見送ったあの江差追分会の今の姿ですか?〜あなた方は〜炭鉱事故の弔慰金や退職金目当てに集まってきた〜暴力団に力を貸し〜麻薬の密輸に手を染めた。
黒い石を掘ってた〜この手ではしょせん白い粉は〜扱えなかったってことさ。
永井さんあなたは〜密輸が成功する度にかつての江差追分会のメンバーに〜次々に声を掛け〜仲間を増やしていった。
(金井信男)俺たちは〜ヤマでしか働けなかったんだ。
学もないし…こんな時代〜雇ってくれる会社なんて〜どこもないべさ!
(中島隼人)永井さんはそんな〜俺らに声を掛けてくれた。
だからといって犯罪に加担して〜いいことにはならない!〜絶対にならない!〜永井さんあなたは軽井沢の〜信濃追分で開かれた追分節全国大会に出かけた〜安原耕三さんの推薦で桑江仲男さんを新しく仲間に迎え入れることにした。
〜〜ところが桑江さんはそれが脱法行為だと知り〜参加を拒んだ。
そこであなたは桑江さんを〜信濃追分へ呼び出した。
永井さん俺にはとてもあんな仕事はできね降ろして…。
あんたたちはあのヤマの仲間だ警察に売るようなことはしねぇ。
だから…。
う〜ん。
う〜ん…わかった。
わかったよ桑江君。
無理強いするつもりはないんだ。
ただ俺はねぇ昔ヤマで一緒だった仲間たちが生活に困っているのを見捨てておけなかっただけのことなんだ。
すまねえ。
この場所であのとき安原さんに会わなかったらこんなことにゃぁ…。
もう会うこともないだろう。
ヤマで命を失った仲間たちに乾杯して最後に2人で江差追分を一緒に唄って別れようじゃないか。
(苦しみの呻き声)〜最後に青酸カリ入りのビールを飲んで〜桑江さんは死んだ。

(恵美)違うって言って!永井さん!
(ドアの開く音)君は…!?お姉ちゃん!〜幸雄…。
〜永井さんあなたは自分が〜クビになる危険も顧みず会社にみんなの待遇改善を〜突きつけたし亡くなった方たちの家族の面倒も〜よくみてくれたわ。
〜そう私や幸雄のことも…。
〜あなたがいてくれたから〜私たちは…生きてこれたといっても〜過言ではないわ。
〜恵美さん…。
あなたほど仲間を大切にする人は〜いなかったわ。
〜ねえ永井さん桑江さんを〜殺してはいないわよね?警部さんがおっしゃってることは間違いなのよね?言って!〜ねえウソだって言って!仲間を殺してないって〜言って!〜〜俺は…。
〜〜俺は…。
永井さん…。
恵美さん。
永井さんあなたなぜこぶしの表に桑江さんを置いたんですか?最初はどこか他の…目につかないところに置くつもりだったんです。
しかし…信濃追分の〜分去れの常夜灯を見たとき長い間ヤマで辛苦を一緒に舐めた桑江君を〜せめて「追分」の名が付く場所に葬ってやりたいそう思って…。
〜でも彼を殺した浅間神社には戻りたくなかった。
〜場所を決めかねていると魔女人形が目についた。
〜私はそれに引き寄せられるように〜こぶしに近づいていったんです。
〜あの魔女人形は〜ヤマの仲間たちの墓前に供えられた人形とそっくりだった。
〜永井さん…。
〜〜そう…まだあなたが少女だった頃〜〜幼い弟と一緒に事故で犠牲になった仲間たちの墓前に供えてくれた人形と〜〜全く同じ人形だった。
〜永井さん…あなたその人形の思い出のために〜桑江さんをこぶしの表に〜置いたんですね?〜〜魔除けの人形が桑江君を〜守ってくれると思った。
人目につかない場所に置いて〜朽ち果て白骨化させるには〜忍びなかったんです。
(探知機のチャイム)そのとき…そのときシッポを振った犬が〜昔可愛がった犬のような〜気がした。
前にこの店を建てるときにあなたを知っていたからコタロー君はあなたを見ても吠えなかった。
まさか…まさか桑江君を置いたあそこが…裏の丸岡さんの娘さんのやっている店で私が昔可愛がっていたコタローがそこで飼われていたなんて…。
あの犬がコタローだったなんて…。
これも…「追分節」で繋がった仲間たちを裏切り殺した報いだったんでしょうかね…。
八百屋お七の墓の前で安原耕三さんの殺害におよんだのは…?私が桑江君を消したとき安原君は仕事で長崎まで出向いていた。
私が桑江君を処置したことを知って彼は…声を荒らげて私を責めたてた。
協力できないと言ったからって殺すことはないだろう!
(雨の音)見てくれよこの週刊誌。
追分節全国大会のことが出ている。
俺と桑江が出会った大会のことが…。
俺は桑江にこれを見せてやろうとずっと持ってたんだ!それなのにあんたは桑江を…。
許してくれ。
俺たちの組織を守るためにはああするしかなかったんだ。
桑江に仕事を紹介するんじゃなかった。
桑江!許してくれ!だけどなぁ永井さん人殺しまでするようになっちゃもうおしまいだよ。
この中にも毒が入ってるんじゃないのか?手や足を失くし激痛に耐えられず叫び声を上げていた仲間を〜あんたや俺はクスリを使って…。
安原君。
〜「痛い!殺してくれ!」…〜アイツらはそう6+んであんたと俺の手を握って…。
〜もうおしまいだよね!〜永井さん。
犯罪に手を染め桑江まで〜巻き込んでしまった俺は罰を受けなければ〜ならないんだ。

(苦しみの呻き声)〜許してくれ…。
〜許してくれ俺が悪かった。
〜許してくれ許してくれ!〜〜それじゃあ安原さんは自ら毒を呷った…?信じてもらえないでしょうが〜それが事実です。
上田市の塩田平で〜この店を建てる時の大工だった小西勝男さんを殺したのは?〜小西は私を脅迫してきました。
〜脅迫…!?コタローのそもそもの飼い主だった彼は〜こぶしの前に死体を置いたのが誰かは察したんでしょう。
〜〜コタローは鳴かなかったしそこが丸岡一枝さんの店だとわかれば〜私を含めたこの三叉路のメンバーと殺人が〜なんらかの繋がりを持っていると考えても不思議はない。
〜それにここを建てるときに〜小西君とは親しくなり我々が夕張炭鉱出身者であることを〜〜彼に話してましたし…。
その線から彼は〜私に目をつけたんです。
博打の借金に〜追われていた彼は〜口止め料を請求してきた。
仲間を殺してしまっていた私は〜もうまともな思考ができなくなってしまっていた。
〜谷田幸雄君…君はなんで永井さんに手を貸すようになったんだい?〜永井さんも安原さんもここにいるみんなも〜姉と2人きりになった俺たちを親身になって面倒をみてくれた。
〜札幌で仕事をする頃から姉は夜たまにしか帰らなくなり…〜まだ小さかった俺を〜みんなは…実の子供のように〜可愛がってくれた。
俺が永井さんやみんなに協力するようになったのは〜俺なりの〜せめてもの恩返しさ!〜ごめんね…幸雄。
〜ごめんね。
〜夜の仕事を始めなくちゃ私たち2人の生活費は〜得られなかったの。
でもそのためにお前は〜高校のクラスメートたちに私のことでなじられて〜〜それから…ひねくれさせてしまったのは〜私のせいなの。
〜犯罪の道に〜追いやってしまったのは竹村さん…〜すべて私の責任なんです!違う!〜お姉ちゃんのせいじゃない!〜俺は俺は自分で…。
〜幸雄!幸雄…ウッウウウ…。
〜ごめんねぇ。
〜お姉ちゃん…。
ヤマは…炭鉱は俺たちをこき使うだけこき使って〜な〜んの補償も〜してこなかった。
俺はそういうことを〜放置してきたこの国に復讐してやろう〜と思ったんだ。
永井さん…違う!それは違うと思う。
どんなにひどい目に遭っても恵美さんは一生懸命に生きてきた。
幸雄さんを育てるために懸命に生きてきた。
(尺八:江差追分)〜だけどあなたは…。
〜あなたたちは…!しょせん…〜あなたたちには俺たちの怒りや苦しみは理解できないと思う。
〜〜そんな正義感よりもね〜俺はね…俺を頼ってきてくれる仲間を〜食べさせて護ることのほうが〜大事だったんだよ!だからといって〜麻薬の密輸をおこない無垢な人たちを〜麻薬中毒に追い込むような真似をして〜いいわけがない!永井さん〜こんな罪を犯したあなたを昔の死んだ仲間たちは〜きっと辛く…悲しく…〜無残な思いで見ていると思います。

(尺八:江差追分)〜「松前江差の津花の浜でヤンサノエー」・「すいた同士の泣き別れ」・「連れて行く気は山々なれどネ」〜いやいや〜さすがにガンさんだなぁ。
東京と軽井沢追分節に繋がる事件も一挙に解決したうえに私のほうの事件もきれいにしてくれたんだからな。
エッヘヘ…いや「瓢箪から駒」とはまさにこのことですね。
エヘヘ…。
私はね〜君のような男と知り合って警察官になって本当に〜よかったと思ってるよ。
またまた…いつかなんか私みたいなのを面倒を見てたら首が幾つあっても足りないって〜おっしゃってましたよ。
〜まあそれでな…これだ。
うわっ!そうですか署長賞…?〜ありがたいです。
ありがたく〜ちょうだいいたします!ガンさん少しカンが〜ニブってるんじゃないのか!)〜これはな陽子さんにだよ。
〜ええっ!?私にですか…?おうおう。
聞くところによれば美容院で借りてきた週刊誌が事件解決のヒントになった〜というじゃないか。
エヘヘ…まあ〜そうなんですが…。
だから〜これは陽子さんに…。
陽子さんは刑事じゃないから〜公金は使えんからこれはあくまでも〜私のポケットマネー。
うわっ!〜ありがとうございます。
〜私もね仲人として鼻が高い。
警察官の妻はこうでなくては…。
〜なあガンさん。
〜うんそうだろう!ちょっと〜あなた呑みすぎよ。
〜おっと…。
〜2014/09/14(日) 11:00〜12:54
テレビ大阪1
内田康夫サスペンス「信濃のコロンボ5 追分殺人事件」[字]

東京と長野で起きた2つの殺人事件。「毒殺」「追分」を結びつけるものとは一体・・・?

詳細情報
番組内容
信濃追分の人形店の店先に身元不明の男の死体が遺棄された。男は“追分節”の大会を見にきたらしい。捜査を開始した長野県警の竹村は、男には見覚えがないという人形店の主人・一枝の飼い犬が事件当夜、吠えなかったことに注目する。一枝の元には人形作家・恵美も心配して駆けつけていた。一方、都内のかつて本郷追分と呼ばれた場所でも、男の死体が見つかる。
出演者
竹村岩男・・・中村梅雀
竹村陽子・・・原日出子
丸岡一枝・・・田中美奈子
谷田恵美・・・渡辺梓
岡部和雄・・・松村雄基
吉井刑事・・・加藤純平
秋山徳二・・・大門正明
丸岡和人・・・清水紘治
永井満良・・・西田健
大森修治・・・里見浩太朗   ほか
原作脚本
【原作】内田康夫
【脚本】佐伯俊道
監督・演出
【監督】江崎実生

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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