(刺す音)
(村井菜穂美)あっ…!
(菜穂美)ああ…。
(シャッター音)
(シャッター音)
(シャッター音)
(角田六郎)知ってるか?これ。
(神戸尊)なんです?あっ…。
(杉下右京)10日前の通り魔事件ですねぇ。
これ確か犯人の手がかりがまったくないっていう…。
(角田)ところがこの週刊誌が発売されて犯人の身元が割れたってわけよ。
えっじゃあこのカメラマン警察に写真を提出してなかったんですか?うん。
…ったくスクープが取れりゃそれでいいって事かよ。
(角田)話はそれだけじゃないんだなぁ。
えっ?そのカメラマン今度は自分がスクープになっちまった。
えっどういう事です?今朝遺体となって発見された。
殺しだとさ。
えっ?通り魔の復讐だったりして。
そしたら大事だぞ。
(シャッター音)
(シャッター音)
(シャッター音)
(伊丹憲一)通り魔の名前は久保山透30歳フリーターです。
(伊丹)週刊誌の写真を前科者データと照合した結果傷害の前科があり身元が判明しました。
(中園照生)消息はつかんでるのか?
(三浦信輔)いえ久保山は週刊誌が発売されてすぐに行方をくらましたようでアパートはもぬけの殻でして。
(中園)バカ者!事件からもう10日も経ってるんだぞ!いつまで野放しにしておくつもりだ!申し訳ありません。
(内村完爾)でどうなんだ?そのカメラマン殺しのほうは。
(伊丹)は?まさか久保山が犯人じゃないだろうな。
(伊丹)いやそこまではまだ…。
もし仮に通り魔に復讐殺人を許したんだとしたらマスコミにまた叩かれるだろう。
(中園)とにかく一刻も早く久保山を確保しろ。
いいな!
(3人)はい!
(米沢守)被害者の有沢広明さんは神社に落ちていた石で撲殺されていました。
死亡推定時刻は昨夜の7時から10時頃とみられています。
でこれが遺留品と。
(米沢)貴重品は手つかずの状態で物取りの線は薄いかと思われます。
カメラですか…。
職業柄いつも肌身離さず持ち歩いていたようですな。
何か手がかりでも写ってるんじゃないですか?こちらが残されていたデータをプリントアウトした写真です。
あっ…っていうかこれ民政党の佐藤議員じゃないですか。
スキャンダル写真というやつですな。
捜査一課も一応事件との関連性を洗っているようです。
妙ですねぇ。
何か気になる事でも?このデータ番号…。
(米沢)あ…数字が飛んでますね。
ええ消去された写真があるようです。
気に入らない写真を自分で消したんじゃないですか?よくある事だと思いますけど。
もちろんその可能性もあります。
ですがこれを見てください。
消去されずに残っている前後のデータの撮影日は16日と18日。
その通り魔事件があったのが17日。
偶然でしょうかねぇ。
つまり通り魔が自分を撮ったカメラマンを恨んで凶行に及び写真を消去したという事でしょうか。
それはまだなんとも。
ですがもし仮に通り魔の犯行だとしたらカメラごと持ち去るんじゃありませんかね。
ああ…。
そりゃそうか。
米沢さんこの消去された写真の復元お願いできますか。
かしこまりました。
どうもありがとう。
(谷川正良)そうですか。
本庁の…。
有沢広明さん殺害事件について第一発見者である小島さんにお話を伺いたいと思いまして。
(小島秀隆)はい。
今朝の8時頃有沢さんが行方不明になっていると写真展のスタッフがここに来まして。
写真展って有沢さんの?
(谷川)来週から区民ホールの別館でやるんです。
それで自分が捜索に出たら…。
神社で死体を発見したと。
小島さんは通り魔事件の際も最初に現場に駆けつけたそうですね。
そうなんですよ。
そのせいで自分は上司にさんざん責められて…。
えっどうして?小島君。
自分が有沢さんに気づいていれば週刊誌に載せられる事もなかったっていうんです。
被害者の応急処置にあたってたんだろう。
仕方ないさ。
その通り魔事件についても詳しくお聞きしたいのですが。
ああ…このすぐ近くの大通りなんですよ。
案内して差し上げなさい。
わかりました。
じゃあちょっと待っていてください。
谷川さんは警察OBなんですね。
ええ。
交番相談員に再就職して3年経ちますが後輩の指導は何年やっても難しいものですな。
じゃあ行ってきます。
被害者は17日の朝この先の駅に向かっていました。
そこで反対からやって来た通り魔に…。
すれ違いざまに刺された。
はい。
被害者は一命を取り留めましたがあと少し発見が遅かったら危なかったみたいです。
でもさこれだけ人がいて誰も気づかなかったのかな。
車の騒音で気づかなかったんじゃないでしょうか。
あっこれか。
(小島)だと思います。
(トラック)「こちらは廃品回収車です」
(刺す音)「ご不用になりました電化製品身の回りの大きなものなど回収いたします」「どうぞお気軽に申し付けください」それは不幸でしたね…。
(三浦)久保山!待て!
(伊丹)待てこら!おい!久保山!
(伊丹)待て!
(芹沢慶二)この野郎!こら!
(芹沢)おいこら!おい!待てこら!杉下さんこれ…。
自殺の瞬間ですよね。
そのようですねぇ。
理解できねえな。
えっ中止…?
(芝田喜子)主催者があんな事になってはもう…。
それは残念ですね。
ええ…。
でもまあ内心これで良かったと思ってます。
とおっしゃいますと?ここだけの話実は当ホールでも今回の開催には反対意見も多かったんですよ。
写真の内容が内容ですし…。
なるほど。
ところであなたは今朝交番に有沢さんの捜索を頼んでいますね。
その経緯を伺いたいのですが。
昨日も有沢さんと私どもスタッフで準備をしていたんです。
夜の7時くらいでしょうか…。
(喜子)ああどちらへ?
(有沢広明)ちょっとタバコ買いに。
でしたら私が行きましょうか?そこのコンビニですよね。
いいんだ。
自分で行くから。
あっちょっと乾電池が切れちゃって…。
(喜子)昨日は夜から大雨の予報だったんで私は有沢さんが戻る前に帰ってしまったんですが。
朝になっても戻った様子がなくて連絡も取れないし心配になって交番に捜索を頼んだんです。
1つよろしいですか?はい。
有沢さんが出かけた時雨は降ってましたか?いえ降ってなかったと思いますけど。
ああもうよろしいですか?お忙しいところありがとうございました。
お邪魔しました。
では失礼します。
さて雨が何か?現場には有沢さんの傘が落ちていました。
予報では夜から雨との事でしたがすぐ近くのコンビニへまだ晴れているにもかかわらずわざわざ傘を持っていった。
つまり有沢さんは自分が戻るのに時間がかかるとわかっていた。
ええ。
そして人気のない神社で遺体となって発見された。
ひょっとして有沢さんは誰かと会う約束をしていたのではありませんかねぇ。
ちょっと何やってるんですか?杉下さん。
おっと…。
3年前の南府中の毒殺事件の写真ですねぇ。
あの…亡くなった人にあんまりこういう事言いたくないんですけど…。
はい?有沢さんはもし今自分の死体の写真が公開されたら一体どう思うんでしょうね?行ってみましょうか。
えっ?なんか生活感がないっていうか…写真関係のものばっかりですね。
杉下さん…。
写真展のポスターに使われていた写真ですね。
毎日眺めてたってわけか。
自分が撮った写真を。
それはなんです?例の通り魔事件の写真が載った週刊誌です。
大スクープなのになんか気に入らなかったんですかね。
井出さんは有沢さんと一緒に仕事をする事も多かったそうですね。
(井出彰紀)よく現場で一緒になったからね。
井出さんたちのような報道カメラマンはよく写真展を開催されるのでしょうか?まさか。
スクープ何本撮っていくらって仕事だよ。
俺からしたら自分で写真展なんか開く気がしれないね。
自分で開く?あの写真展の費用は奴の自腹だよ。
(井出)こんにちは!ああ有沢!どうだ?調子は。
(井出の声)しけた面してた。
あっちこっち回ったようだけどどこも金出してくんなかったんだろう。
なるほど。
そういう事でしたか。
まあ結構内容が過激でしたもんね。
あの飛び降り自殺の写真とか。
ああ…あの写真ね。
あれはあいつが注目されるきっかけとなったものなんだよ。
3年前ある女が西立川市内にある基地の外国人から暴行を受けたんだ。
そしてマスコミの過熱報道を苦に自殺。
その自殺の瞬間まで撮った。
そりゃ批判もされたがそれも込みで有沢の名前は売れてったわけ。
しかし人が自殺しようとしてる時によくカメラを構えてられましたね。
それが仕事だからね。
俺たちはみんなが見たがってるものを撮ってるだけだよ。
それなのに戦場なら立派な報道写真この平和な国ではえげつない仕事だと叩かれるんだ。
ふざけた話だよな。
ちなみに有沢さんが最近誰かと会う約束をしていたなんて話聞いてませんよね?ああ…あったな。
あったんだ。
取材で一緒になった時に電話が来てた。
学生時代の知り合いだって。
なんか込み入った話みたいだったよ。
それはいつ頃の事でしょう?先週の金曜かな…。
先週の金曜?通り魔事件の翌日ですね。
(久保山透)僕は人殺しなんかしてない。
(三浦)通り魔事件については認めるんだろ!それは…ちょっと…ちょっと刺すだけのつもりだったんだよ。
あんな…あんな大騒ぎになるなんて思ってなかったんだよ!こら!おい!ふざけた事言ってんじゃねえ。
人ひとり死にかけたんだぞ!僕は…僕は殺してない。
(ノック)僕は人殺しなんかやってないよ。
ちょっと…。
なんだよ?はぁ…出ましたアリバイ。
有沢さんが殺された時漫画喫茶の防犯カメラに久保山が映っていたそうです。
じゃあ殺したのはこいつじゃねえのか…?ええ。
(ため息)殺してない殺してない殺してない殺してない…。
人殺しなんかしてない…。
(笛野光起)有沢は高校時代から写真の事しか頭にないような男でした。
それがまさかこんな事になるとは…。
お察しします。
(笛野)ニュースで見たんですが通り魔を撮影したんですって?やっぱりその通り魔が犯人なんでしょうか?それはまだ捜査中でして。
笛野さん。
ここ数日有沢さんと何度か電話されてますよね?どんなお話をされていたんでしょう?大した事ではないですよ。
少し金を貸しただけで。
ああお金を?ええ。
10日ほど前だったかな突然有沢から呼び出されまして。
ちなみに額は?300万です。
それは大金ですね。
取材に金がかかるんでしょう。
まあ昔からの友人ですしいつか返してくれると思って。
取材にね…。
あっお金がかかるといえば有沢さん来週から開催の予定だったそうですね。
開催?おやご存じありませんか?はあ…。
写真展ですよ。
有沢さん写真展を開催するためにお金が必要だったようですよ。
有沢さんは写真展の事は何も話されていませんでしたか?確かに言ってました。
写真展ね…すっかり忘れてましたよ。
通り魔事件の写真ですか。
少し調べたい事が…。
理由も知らずに貸した300万円が気になった…ですよね?ええ。
そして笛野さんが金を渡したのと同じ時期この通り魔事件があった。
いました。
笛野…。
彼は通り魔事件の事はニュースで初めて知ったって言ってましたよね?ええ。
それあなたですよね?あなたの事を調べさせてもらいました。
あなたにはここにいてはまずい理由があった。
そうですね?笛野さん。
あなたは以前学生時代の女友達にストーカー行為をしていたそうですね。
それが問題となり警察に告発しないかわりに彼女の半径100メートル以内に近づかないという誓約書を交わしていた。
その女性の家がこの写真の現場のすぐ近くでした。
つまりこれはあなたがまだ彼女に付きまとっていた証拠になる。
場所を変えましょう。
特命係の杉下警部殿。
捜査一課をアゴで使っていただきまして。
恐縮です。
なんなんですか?大挙して押しかけて。
笛野光起さん。
ご同行いただけますか。
なんで?あなたの口座を調べさせていただきました。
先週有沢さんに300万円を振り込んでますよね?あれ?金を貸すために会ったんじゃなかったんですか?あなたまだストーカー行為をしていた事をネタに有沢さんに金をゆすられてたんじゃないですか?バレたら今度こそ告発されちゃいますもんね。
僕は何もやってない!まあまあまあ…。
詳しい事はあとでゆっくり聞きますから。
さあ。
はい。
いただきますよ。
どうぞ。
(米沢)例の消去されていた写真を復元したところやはりありました。
笛野さんがより鮮明に写っている写真が何枚も…。
なるほど。
どうかしました?これらの写真を見て何か気づきませんか?えっ?ちょっと失礼。
え…?ええ…。
恥ずかしながら私には何も…。
強いて挙げれば被害者の顔がぼけていて見づらい…なんて。
それです。
えっ!?写真のフォーカスに注目してください。
どの写真も被害者には焦点が合っておらずむしろ後ろのほうにいる通行人たちにフォーカスされているんですよ。
という事は有沢さんが撮ろうとしていたのは…。
あの通り魔事件について少々気になる事がありまして。
はあ…。
あの犯人はもう捕まったって聞きましたけど。
通り魔事件の目撃者についてです。
えっ?調書を見たところこの通り魔事件の目撃証言があまりにも少ないんです。
ところが…。
この写真を見ると多くの人が事件を目撃していた事がわかります。
にもかかわらず目撃証言が少ない。
これどういう事なんでしょうね?自分が現場に駆けつけた時…。
(うめき声)
(小島)大丈夫ですか?すいませんどなたか状況がわかる方は…?
(小島の声)犯行現場を目撃していた人は1人も残っていませんでした。
たぶんみんな逃げてしまったんです。
えっそんなバカな事…。
本当なんです。
目の前で人が刺されたのに通り魔を追う事も倒れた彼女を助ける事も誰もしなかったんですよ。
なるほど。
では最後にもう1つだけよろしいですか。
あの通り魔事件には大変奇妙な事がありました。
目撃者たちが誰も被害者の女性を助けようとしなかったのです。
これを「傍観者効果」というそうです。
事件に際し自分以外にも多くの人間が周囲にいる場合率先して自分が行動しようという考えが薄れてしまう集団心理の1つです。
しかしもし自分が傍観しているところを誰か知り合いに見られたら…。
絶対に見られたくないという人間もいるでしょう。
特に我々のような職業はそうでしょうねぇ?谷川さん。
おっしゃってる意味がよくわからないんですが。
これが何か?1枚だけ見てもわかりません。
は?これ…連続写真なんですよ。
連続写真?
(シャッター音)
(うめき声)
(シャッター音)
(菜穂美)た…助けて…。
(シャッター音)これらの写真を連続して見ると有沢さんがそんな無責任な傍観者たちを撮っていた事がわかります。
この通行人たちの向こうに時折見え隠れするものが…。
拡大してみました。
これあなたのものですよね?小島さんに確認しました。
あなたがこの通り魔事件の時非番だった事もね。
あの時あなたはこの現場の近くにいらっしゃったのですか?いえ違います。
電車に乗るのにそこにとめておいただけです。
それに私そもそも有沢なんて男よく知りませんから。
そうでしょうか。
先日お会いした時あなたは写真展は区民ホールの別館だとおっしゃっていました。
ですがちらしには本館と書いてあります。
ええ最初は本館のメーンフロアで行われる予定でした。
ところがメーンフロアは窓が多く照明の調整がしづらかった。
そこで有沢さんは別館の窓のない部屋に変更するよう頼んでおいたそうです。
しかしこの変更はまだスタッフだけしか知らなかったそうですよ。
ではあなたは一体誰に写真展が別館に変更された事を聞いたのでしょう?殺されて当然の男だったんです。
あなたの口座を調べさせていただきました。
先週100万円を下ろし有沢さんが死んだあとなぜかまたすぐにそっくりそのまま入金し直してますよね。
(伊丹)「あなたは有沢さんに写真を公開すると脅され金を払おうとした」「だが実際に会うと口論になり殺してしまった」そうですね?有沢とは彼を職務質問した事があって面識があったんです。
(谷川の声)そしてあの通り魔事件の日…。
(菜穂美)あっ…!ああ…。
(谷川の声)彼女の声はちょうど廃品回収車の音にかき消されて近くにいた人にしか気づかれなかったようでした。
その日は非番で制服も着用してない警棒も持ってない。
こんな老人が通り魔に挑んでも返り討ちに遭うだけだろうと恐怖がよぎって…。
頭の中が真っ白になって気がつくと逃げてしまっていた。
(伊丹)ところが後日有沢さんはあなたの写真を撮ったと伝えてきた。
ええ。
私としてはなんとしても隠し通したい汚点でした。
(谷川の声)私は迷ったあげく応じる事にしました。
しかしあいつはゆすりをやめる気はなかったんです。
だから…。
(殴る音)あっ…!ああ!
(殴る音)私はずっと真面目に勤め上げてきたのに…。
なのに…。
なのに…。
あの…まだ何か気になってるんですか?ええ。
おい暇か?
(神戸・杉下)おはようございます。
またまたご活躍だそうで。
犯人が元警官って事で上の連中は大騒ぎだよ。
そうなんですか。
しかしあの犯人地域課一筋で勤め上げて7年前西立川署で定年を迎えるまで一度も問題を起こさずにきた評判の警官だったらしいよ。
7年前に定年退職ですか。
確か交番相談員になって3年って言ってましたよね。
神戸君。
はい。
確かめたい事があります。
ああその写真ね。
その4枚で1つの作品になってるんだよ。
やはりそうでしたか。
いわゆる組み写真ですね?組み写真?いくつかの写真を組み合わせて1つの作品とする表現手法。
確かにこれだけなんか感じ違いますね。
それが狙いなんだとよ。
(有沢)凶悪な殺人犯にもいろんな顔がある。
それを表現したかった。
(井出)俺たちみたいなカメラマンがそんな事考えたってどこも相手にしちゃくれねえよ。
(有沢)週刊誌には売れたんだけどな。
この1枚以外は。
ほら見ろ。
俺たちに求められてるのは刺激的な写真なんだよ。
うるせえな…。
(井出)あの飛び降り自殺撮ってからダーティーなものも撮れるって売れたんだけどな。
どうもそのへんを理解してなかったね。
杉下警部…。
1つよろしいでしょうか。
(芹沢)いや困ります。
確認だけ。
あなたが貸したと言っていた300万円は実際には口止め料だった。
間違いありませんね?そうですよ。
何言っても聞かないからこっちから振り込んだんです。
あなたから?それで有沢さんはなんて?こんなもん要らんってそのあと会って突き返されましたよ。
おい!またこの週刊誌見てんのかよ。
神戸君。
はい。
通り魔事件があった時刻は何時でしたか?はい。
午前7時50分頃です。
何?どうしたのよ?僕たちが見ていたものは少しフォーカスがずれていたようです。
はい。
(角田)えっ?あっ…ちょっと…。
なんなんだよ?入りなさい。
もうお話しする事はありませんが。
先日僕がお話しした推理には至らない点があったようなんです。
ハハ…真犯人でも見つかりましたか?それに気づかせてくれたのは笛野さんという容疑者の口止め料でした。
口止め料?有沢さんは笛野さんから振り込まれた300万の口止め料をすぐに返却していました。
だとすると妙ですよねぇ。
勝手に振り込まれた300万を返すような人が他の人間から100万を脅し取ろうとするでしょうか?そこで疑問が生まれました。
本当に脅迫はあったのかと。
その答えを出す鍵はこれです。
あなたは以前あの通り魔事件の時廃品回収車の宣伝がうるさく被害者の悲鳴が周囲には聞こえなかったようだとおっしゃいました。
本当に廃品回収の車でした?どうしてそれがわかったんでしょう?実際にこの耳で聞きましたから。
なんですか?私が何かおかしな事でも言いましたかな?拡声器には使用条例というものがあります。
商業宣伝を目的とする拡声器の使用は東京都では午前8時以前にはできないんです。
あの朝廃品回収車はまだ営業前で拡声器は使用していなかったんですよ。
被害者の女性がようやく回復され先ほどお話を伺ってきました。
あの時彼女の耳に聞こえていたのは普通の乗用車から流れてくるカーステレオの音楽だけだったそうです。
ちなみに小島さんも同じように勘違いされていました。
ではなぜあなた方は廃品回収車だと思ったのでしょう?理由は1つしかありません。
音を聞いたのではなくこの写真を見て廃品回収車だと思い込んでしまったんです。
つまりあなたはここにいなかった。
あなたはなぜ現場にいたなどと嘘をつくのか。
僕はこれに1つの仮説を立てて考えてみました。
あなたが誰かをかばおうとしているのではないかという事です。
犯人は私です。
私が殺したんです。
もういいじゃないですか。
谷川さんこれを見てください。
有沢さんが写真展に展示しようとしていた組み写真と呼ばれる連作写真です。
有沢さんが撮ったこの自殺した女性…内海佳苗さんご存じですよね?あなたが定年前にお勤めになっていたのは西立川署でしたね。
佳苗さんが住んでいたのも西立川でした。
そこで調べてみるとかつてあなたが佳苗さんを補導した記録が残っていました。
そして佳苗さんが自殺したのは3年前。
あなたが交番相談員として復帰されたのもまた3年前。
つまりあなたと佳苗さんには親交があった。
その佳苗さんの飛び降り自殺の写真が公開された時あなたはどう思ったんでしょう?さらに有沢さんは展示会で佳苗さんの写真を他にも展示しようとしていたそうですねぇ。
彼女の死後の写真まで。
谷川さんあなたがかばおうとしていたのはすでに亡くなっている佳苗さんだったんですね?彼女を…佳苗の事を守らなければならなかったんです。
どうしても。
(騒ぎ声)おまわりだ逃げろ!
(谷川の声)最初はただの不良としか思っていませんでした。
ですが…。
またお前か。
今何時だと思う?
(谷川の声)度々非行を繰り返す彼女の面倒を見ていくうち佳苗は次第に更生していきました。
(谷川)佳苗。
ほらほらほ〜らかき氷。
(内海佳苗)おいしそう。
(谷川の声)退職したあともよくうちに来てくれて慕ってくれていたんです。
しかしそんな折あの暴行事件があった…。
佳苗。
(谷川)幸運を呼ぶそうだ。
かわいいだろう?はい。
私もねほら…おそろいだ。
谷川さん携帯持ってないじゃん。
えっ?これ携帯につけるものなの…?ありがとう。
私は大丈夫だから。
(佳苗)ありがとう!
(谷川の声)気丈に振る舞ってはいたが内心はずっとつらかったんでしょう。
(谷川の声)結局あの日…。
(谷川)ちょっとごめんなさい!あっああ…。
佳苗…。
(シャッター音)その時あなたの中で有沢さんに対する強い憎しみが生まれたんですね。
人生に絶望しかけた私を救ってくれたのも佳苗でした。
(佳苗の声)「私は谷川さんの優しさに救われました」「ありがとう」
(谷川の声)そして私は再就職する事を決意しました。
交番相談員は警察官のように拳銃も手錠も持てない。
ただ手を差し伸べるだけ。
ですがそれで人を救える事もあるかもしれない。
そして3年の月日が経ちあなたは有沢さんの写真展が開かれる事を知りました。
(谷川の声)その時確信しました。
今度こそあの子を私が守ってやらなければならないと。
そんな時通り魔事件が起こった。
しかもこの写真には駅の近くに置いたままにしていたあなたの自転車も偶然写っていた。
あなたの脳裏に有沢さん殺害の計画が浮かんだ。
プライドを守るために殺したという嘘の動機を用意し自分で金を引き出し脅迫されたように見せかける。
そうすればもし捕まっても佳苗さんの死後の写真だけは隠し通す事ができる。
そう考えたのでしょうね。
(谷川)どうしてもか?
(有沢)俺の写真を見てください。
そうすればわかる。
あんたのやろうとしてる事は死者への冒涜だ!来月の9日から区民ホールの別館でやるんで…。
待ってます。
(殴る音)あっ…!ああ!
(殴る音)佳苗は死んでやっと解放されたというのにこれ以上あの子を苦しめるような事は許せなかったんです。
谷川さん。
有沢さんがなぜ佳苗さんの写真を展示しようとしていたかわかりますか?そういう男だからですよ。
自分の写真に注目を集めるために佳苗の遺体をさらそうとしたんです。
報道の権利を笠に着て…身勝手に!有沢さんには本当に公開したい写真があったんです。
有沢さんが撮ろうとしていたのは佳苗さんの遺体ではなかったんです。
彼はあなたから湧き上がる怒りやり場のない悲しみその感情を写真に撮って多くの人に伝えたかったんじゃありませんかねぇ。
(谷川)なんでそんな写真を…。
有沢さんの部屋にはこの飛び降り自殺のパネルが貼られていました。
自分への戒めとして毎日その写真を眺めていたのかもしれません。
自分には誰も助けられずファインダーを向ける事しかできない。
この組み写真には『罪』という題がつけられていたそうです。
自分たち報道の手によって1人の少女の尊い命が失われてしまった。
その贖罪の意識から有沢さんはこの組み写真を公開したかったのだと思いますよ。
そしてこれが最後の写真です。
あ…。
これは…。
これがどんな写真なのかあなたが一番おわかりでしょう。
(佳苗)携帯持ってないじゃん。
(谷川)えっ?これ携帯につけるものなの…?
(佳苗)ありがとう。
(シャッター音)
(シャッター音)私は大丈夫だから。
いい写真ですね。
絶望のふちにあっても人はまだこんな笑顔を見せる事ができた。
この笑顔が失われてしまった悲劇を有沢さんは世に伝えたかったんです。
そしてそれこそが報道カメラマンとしての彼の魂だったのでしょう。
新婚さんいらっしゃい!今週も富山県射水市からお送りしますここは「きっときと市場」射水市の海の幸が味わえます2014/09/14(日) 12:00〜12:55
ABCテレビ1
相棒 season10[再][解][字]
「フォーカス」
詳細情報
◇番組内容
杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)の名コンビが難事件に挑む!豪華ゲストも見もの!
◇出演者
水谷豊、及川光博 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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