最先端の流行を生み出す街ニューヨークマンハッタン。
ここに今人気のレストランがあります。
2009年にオープンした地中海料理店。
世界的なレストランガイドでも高い評価を獲得した名店です。
人気はなんといっても肉料理。
取って置きのメニューを作るのに大活躍するのがこちら!三重県の桑名で作られた鋳物のフライパンです。
熱伝導に優れた鋳物による絶妙の焼き加減がニューヨーカーをうならせます。
特製ソースで仕上げた牛肉のステーキ。
表面はパリッと!中はジューシー。
ニューヨークのベストシェフとして名をはせる腕利きです。
2年前見本市で出会って一目惚れ。
以来ずっと愛用しています。
ニューヨークのトップシェフも信頼を置くイッピン。
きょうは料理がおいしくなるキッチン鋳物の秘密を徹底リサーチ!鋳物作りが盛んな三重県桑名市。
この地域にはおよそ40軒の工場が集まっています。
イッピンリサーチャーは料理大好き女優の平山あやさん。
桑名で作られている鋳物の展示室を訪ねてみると…。
調理道具がズラリ!あ!タコ焼き器ね。
おなじみ家庭用のタコ焼き器。
こちらはパエリアを楽しめる鍋。
ステーキ皿はレストランでよく見かけますよね。
こうした身近な調理道具が桑名では盛んに作られているんです。
そんな中から大人気のキッチン鋳物が生まれました。
ニューヨークのトップシェフが愛用するフライパン。
予約から手元に届くまで2年半待ちといいます。
失礼します。
こんにちは。
生産が追いつかず店頭に並んでいないというので直接工場を訪ねました。
これ…わ!薄い!すごい薄いですね。
実際に使ってみますか?その方がはっきり分かると思うんですけど。
使わせて頂いてよろしいですか?はいどうぞ。
さてその実力は?入れます。
全部多い?お好きな量で入れて頂いて。
ちょっと多いからこんなもんでいいですかね。
もうなんかこんがり。
あんまり返さなくてもいいのかな?え!火が通るのが速い!
(メーカー側)しんなりするちょっと前ぐらいに取り出してちょうどいいと思う。
そうですね。
結構もういいのかな?かなりいいと思います。
もういいですね。
速い!1分たってなくない?そうですね。
入れてから速いですね。
シャキシャキ感を残しつつの…。
いただきます!うん!
(キャベツをかむ音)シャキシャキ!でもちゃんと火が通ってる。
そうなんです。
不思議!家で野菜炒めしたら水分が出てビチャってなっちゃうんですよ。
これは一切水分もないし全部が均等に炒められてておいしくなってる。
このフライパンの特徴はとても薄いこと。
測ってみると…。
厚さ僅か1.5ミリ。
この画期的な薄さによって食材に素早く熱が伝わりおいしく調理できるといいます。
ではどのくらい熱伝導がよいのか調べてみました。
調理する時の適度なフライパンの表面温度は180℃。
標準的な火力のコンロで熱すると14秒でその温度に達しました。
しかも全体にムラなく熱が広がっているのが分かります。
よく見ると持ち手だけは同じ鉄なのに温度が上がっていません。
これは持ち手の強度を上げるためこの部分に厚みを持たせているからです。
そのため熱が伝わりにくく持ち手が熱くならないのです。
上手に作るにはコツがいるチャーハンはどうでしょうか?返さなくていいんですね。
はい。
音が結構パチパチいってます。
(メーカー)ジュージューいってますね。
あとは全体を混ぜて…。
すごいパラパラ!本当にすごい!見て下さいよ。
パラパラチャーハン。
パラパラにするのが結構家でやる時に大変だったりするんですけど今簡単に出来ちゃった。
うん!薄くて熱伝導がよいフライパン。
薄さを作る秘密はどこにあるんでしょうか?1.5ミリの極薄フライパンを開発したのは…鋳物作り30年のベテラン職人でもあります。
鋳物は1500℃に溶けた「湯」と呼ばれる鉄を型に流し込んで作ります。
この時要求されるのがスピード。
薄いフライパンを作るためには僅か1.5ミリの隙間に湯を流し込まなければなりません。
素早く湯を流し込まないと途中で温度が下がり固まってしまうのです。
型に湯を流し込む作業は「鋳込み」と呼ばれます。
薄いフライパン作りは錦見さんの素早い鋳込みによって初めて可能になりました。
確かに速い!流れるような動きです。
型ひとつ当たりにかかる時間はおよそ2秒。
誤差は0.5秒ほどしかありません。
速さの理由はトリベと呼ばれる湯を入れた容器の傾け方。
湯を注いだ後完全にもとに戻していません。
傾ける角度を最小限に抑えスピードを上げていきます。
とはいえこの技。
一朝一夕にできるものではありません。
若手の職人に挑戦してもらいます。
職人歴6年の…ふだんは大きな機械部品の鋳込みをしています。
フライパンの鋳込みは初めて。
錦見さんに比べると倍以上時間がかかっています。
2人を比較するとスピードの違いは一目瞭然。
錦見さんはもう終わりました。
一方池田さん。
湯の流れも安定せず型からこぼれてしまっています。
斜めから見るとトリベを大きく傾けすぎその結果動きにぶれが生じているのが分かります。
3時間後フライパンが完成!果たして鋳込むスピードの違いはどう影響しているでしょうか?3番はきれいに流し込まれてる感じなんだけどこっちはバラバラというかデコボコしてたり割れてたりとか。
池田さんが鋳込んだフライパンは湯が完全に行き渡っていませんでした。
いつもは工業製品をゆっくり注湯しているのでまた全く鉄の量が違うのかすぐにいっぱいになってしまうので難しいです。
ちょっと焦ったのもあります。
はい。
鋳物用語で「鋳込む」という言葉があって「鋳物」の「鋳」に「込める」の「込」ですね。
まさに魂を込めるんじゃないんですけどぐっと押し込んでいるところが一直線に走っているという意味も含めて。
まっすぐ迷いなく行くというのが大切なんですね。
そうですね。
なるほどね。
すごい!もともと錦見さんの工場は自動車やミシンの部品を主に作っていました。
しかしバブルの崩壊で経営が苦境に陥ります。
薄いフライパンの開発は生き残りをかけた挑戦でした。
これまでの機械部品と違い薄く繊細な商品の開発は失敗の連続。
完成までに10年を要しました。
苦労したのが湯の品質を高めること。
薄くても丈夫な鋳物を作るためです。
湯に入れたのは石灰石。
不純物を吸着する働きがあります。
これを使って不純物をからめとりきれいにします。
薄いフライパン作りでは通常よりも回数を増やして行います。
不純物が残っていると湯が行き渡らず不良品になります。
ここまできれいになればOK。
湯の表面を見ると少しずつきれいになっていくのが分かります。
細やかな手間が薄く丈夫なフライパンを作り上げるのです。
よく聞かれるんですけど。
大変でしたねとかあんまり覚えてないんですよ。
大変だったことを覚えてない?大変だったかどうかも…。
いや楽しかったですから売れないなりに。
平山さんも「すごい!」って言って下さるじゃないですか。
料理したあとに食べてね。
あの一瞬が忘れられないわけです。
行く先々で。
職人の意地が作り上げた極薄のフライパン。
その実力は一流の料理人にも認められています。
地場産業として発展してきた鋳物作り。
昔ながらの製法を守る工場を訪ねました。
(専務)こんにちは!えっ?今何されてるんですか?昭和39年創業の…キッチン鋳物の歴史を忍ばせるものを見せてくれました。
職人だった祖父が使っていた鋳物の型。
昭和30年代鍋やフライパンなどが売れ始め桑名のキッチン鋳物の製造は最盛期を迎えます。
家庭用すき焼き鍋の型。
ふちにあしらわれた花の柄が無骨な鋳物に温かみを出しています。
昭和51年「およげたいやきくん」の大ヒットで飛ぶように売れたたい焼き器。
ステーキ皿は外食産業の普及とともに盛んに作られました。
あ〜ここのなんかこの模様が。
そうですね。
昔はこういう模様を出したりとか薄いものを作る職人の技術がすごく高度で。
こうした鋳物作りを支えてきたのが「キューポラ」。
コークスで鉄を溶かす昔ながらの溶解炉です。
電気炉が主流になった今も出口さんの工場では大切に使われています。
炉の温度は職人が空気の量を調整しながら上げていきます。
しかし高度成長期以降桑名の鋳物作りは機械部品に軸足を移していきます。
今出口さんは祖父の時代の型を使って個性的な鋳物を復活させたいと考えています。
もっと増やしてこれを広めていきたいと?そうですね。
世の中の皆さんに桑名は「鋳物の街」なんやと知って頂ければすごく光栄なことかなと思ってます。
暮らしと密接に関わってきたキッチン鋳物。
今再びその魅力が見直されようとしています。
こんにちは!最近桑名では地域を上げて新しい商品の開発に取り組んでいます。
その一つがこのレストランで使われているというのですが…。
出てきたのは牛ヒレ肉のステーキ。
鋳物のフライパンで焼き上げそのままテーブルへ。
うん!でもこのフライパンじゃないんです。
軟らかい!それはこちら。
え〜おいしそう!小ぶりでチャーミングなごはん釜です。
炊きたてですよ。
私白いご飯が一番好きなんですよ世の中で。
銀シャリ。
びっくりするぐらいおいしい!何ですかこれ?ふっくらしてる。
すごい!感動!このごはん釜実は地元の高校生の意見を取り入れて開発されました。
このレストランのシェフは三重県立相可高校調理科の生徒たちです。
店は週末だけ開いていますが本格的な料理が味わえると大評判。
そこで鋳物の生産組合が中心となり若きシェフたちにアイデアを求めたのです。
特徴は丸みのあるかわいらしいデザイン。
手軽に使える2合炊きです。
火が通るのがいつもより速い気がします。
ふだんよりも速い?はい。
どれぐらい速い?2倍とは言いませんけどそのぐらい速くてほっておいても底が深くしてもらってあるので吹きこぼれることはあまりないのでしっかりと火が通るのでふっくら炊きあがってすごく使いやすかったです。
このごはん釜完成までには職人のさまざまな試行錯誤がありました。
平山さん開発に当たったメーカーを訪ねました。
それまで桑原さんの工場が手がけていたのはマンホールの蓋や水道管の部品。
3年前から開発に取り組み始めましたがこれまでと全く違う鋳物作りに四苦八苦したといいます。
特に苦労したのがデザイン。
試作品を作っては高校生シェフと意見交換を繰り返しました。
こちらが試作第一号。
蓋の取っ手が違う素材だと取れやすいという意見が出ました。
そこで取っ手も含め蓋を全て鋳物で作りきっちりと閉まるようネジ式にしました。
ところが…。
取れますか?女性の力では熱くなった蓋を開けにくいというダメ出しが。
蓋はかぶせるだけの形に決定。
持ち手にも改良を加えました。
布巾や鍋つかみで持っても滑らないよう幅広に。
ここの幅がしっかりしてるから持ちやすい!デザインをクリアしても更なる難関が。
それは鋳肌。
すなわち表面の質感です。
やっぱりね鋳肌の部分はすごく気にしました。
直接料理と触れる面ですのであまりザラザラすぎるとうまく出来なかったりとか塗装がはげやすい原因。
シャモジやスプーンがボロボロになったりとか。
そういう問題がありましたので。
桑原さんが作ったのはこの滑らかな鋳肌。
ご飯の炊き具合も大きく変わるといいます。
鋳肌の違う2種類の釜で炊き具合を比べてみました。
一方は鋳肌が滑らかなもの。
もう一方は粗い質感のものを作ってもらいました。
同じ火力でご飯を炊き比べてみると鋳肌が滑らかな方はふっくらとした炊きあがり。
一方粗い方は底が焦げ付いてしまいました。
鋳肌が粗く凹凸が大きいと表面積が広がり熱の伝わる量が多くなります。
その分焦げ付きやすくなってしまうのです。
それまで桑原さんは鋳肌を滑らかに仕上げるという経験がありませんでした。
そこで型を作るための特別な砂を探し出します。
わ〜サラサラ!何百種類もあるという砂の中から選び抜きました。
この砂で何度も型を作っては試作を重ね…。
そしてついにこの滑らかな鋳肌にたどりついたのです。
焦げ付いてもお水を入れて沸騰させればポワ〜ンと浮いてきますし油を入れて更にカリカリにすれば全部取れてしまいます。
そういった面ではすごく鋳肌が滑らかだスムーズなのはお料理が楽になると思います。
こういうものって一つ持ってるとずっと長く使える。
愛着を持って使って頂けるんじゃないかなと。
この鋳物のお鍋でいろんなものを楽しんで頂ければ私もうれしいです。
この3月には高校生シェフが桑名の鋳物を使って創作料理のコンテストを開催。
地域ぐるみでキッチン鋳物を盛り上げています。
私は実際に使って料理をさせてもらいましたけどすごく料理がおいしくなる。
そしておいしい料理を食べる自分もうれしくなってこんなにおいしかったのかって発見があってとにかくファンになったっていう感じです。
料理をするのが楽しくなる桑名のキッチン鋳物。
型破りな職人の挑戦と地域を挙げた取り組みで注目のイッピンを作り続けています。
2014/09/14(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「おいしさ作る魅力の調理道具〜三重 桑名 キッチン鋳物〜」[字]
今回は三重県桑名のキッチン鋳物。2年半待ちというフライパンや、キュートなご飯釜など、アイデア豊かな調理道具を次々に生み出している。平山あやが驚きの職人技を体感。
詳細情報
番組内容
今回は三重県桑名のキッチン鋳物。入手まで2年半待ちという人気のフライパンや、高校生シェフと職人が共同で開発したキュートなご飯釜など、アイデア豊かな調理道具を次々に生み出している。完成までに、どんな職人ワザや試行錯誤が?イッピンリサーチャーの平山あやが製造現場に出向き、驚きの職人技に出会う。また実際に使ってみたり、料理を食べたりと、キッチン鋳物の実力を体感。料理が楽しくなる鋳物の魅力を伝える。
出演者
【リポーター】平山あや,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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