2014年3月15日(土)

委託外注費 -消費税増税で外注や派遣が増えるナゾ

PRESIDENT 2014年1月13日号

著者
柴山 政行 しばやま・まさゆき
公認会計士・税理士

柴山 政行

1965年、神奈川県生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、92年10月に公認会計士二次試験に合格。大手会計事務所勤務などを経て、98年に柴山政行公認会計士事務所を開設。コンサルティング、実践的な会計教育など業務の拡大にともない、2004年に合資会社柴山会計ソリューションを設立する。近著に『一目で見抜く!財務諸表解読法』がある。

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公認会計士・税理士 柴山政行 構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート
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円安による輸入コストの増加に消費税の増税……。賃金が上がらなければ、国民の生活はますます苦しくなる。その消費税の増税により、派遣社員の増加や社内の社員を独立させた外注化等が増えるかもしれないのだ。

「えっ、なぜ」と疑問に思った人がいるはず。実は企業の節税方法として、会計人にとっては有名なカラクリがある。

まずおさえておきたいのは、社員に払うのが「給与」なのに対して、外注先に払うのは「外注費」ないし「委託費」となり、消費税法上は「課税仕入れ」となる。つまり、給料は消費税の課税対象外だが、外注費は課税対象になっているということだ。

消費税率が5%で外注費が300万円であれば、15万円の消費税を一緒に相手に支払う。そうなると、企業の負担は合計で315万円。「消費税を負担しなくて済むよう、300万円で社員を雇ったほうが得ではないか」と思うかもしれないが、そう単純な話ではない。

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社員と派遣、消費税への影響は15万円……?

企業は売上高に応じた消費税、つまりお客さんから預かっていた消費税を国に納める。でも、そのときに仕入れや他の多くの経費などに対して支払っていた分の消費税を控除することができる。派遣または外注先への委託費も課税仕入れなので、先の15万円の分を控除できる。

売上高の1000万円に対して、仕入れ原価400万円、諸経費200万円、給料300万円がかかったとする。消費税率が5%なら、売上高1000万円に対して預かった消費税は50万円。一方、自社が支払った消費税は、仕入れ分20万円、諸経費分10万円の合計30万円。つまり「50万-30万」で20万円が納税額となる。

一方、社員の代わりに派遣や外注を頼むと、外部委託にかかった15万円の分をさらに控除できるので、「50万-(20万+10万+15万)」となって5万円の納税額で済む。結果、それだけ懐に残るキャッシュが増え、「それなら派遣・外注を頼もう」ということになる。

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