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ディーアのホアルムーラス

Hoarmurath of Dir

おお、いと高き御方よ
御身に帰依したてまつる
御身を利すために紛身せんことを
一切の罪を嘲い
衆愚の善を侮蔑し
いと高き御方の悪意をもって
この世に遍く御身の意志が到らんとするまで
影横たわるモルドールの国に


 METWのカード『ディーアのホアルムーラス』には、猛き極北の巨獣を模した兜に身を隠した冷たい眼差しの姿が描かれています。そのシンボルが示すように、彼は極北の国を支配する王でした。その支配が苛烈であったことは創造に難くありませんが、その登極も尋常なものではありませんでした。ディーアを吹き荒れる冷たく苛烈な嵐、氷の王、血族殺し、魂を汚す者、第6のナズグルの生を紹介しましょう。

 ホアルムーラスの誕生は第2紀の1954年、エンドール北部はディーアの森、ウアブのエムーラス(Emurath of Uab)でのことでした。彼の生まれは粗野な山人であり、狩猟によってその身を立てていたのですが、その母親は偉大な女族長でした。彼女はウルドール(Urdar)の地を良く治めていましたが、1962-1975年に勃発したウムリ戦争(Umli Wars)で戦死を遂げます。ウルド(Urd)の定めによると、彼女の後を継ぐのは女性でなければなりませんでした。よって彼女の娘であるアムーラス(Amurath)が後を継ぎ族長となり、ホアルムーラス自身は家長となりました。

 家長であり、族長の兄でもあるという立場は、ウルドの男性に許されるものとしては最も名誉に溢れた地位でした。しかし、アヴァール・エルフ(Avar Elves)と秘密の親交を結んでいたホアルムーラスは遥か南方の価値観を身に付けていました。その価値観によると、妹の下に立つという立場は許容し難いものであり、その不満はすぐにウルドールの伝統そのものへと対象を広げていきました。

 彼の言動は短慮かつ性急なものとなり、一族に大きな不和を招きました。そして当然の結果として、彼は一族にあって冷遇の対象とされました。不遇を察したホアルムーラスは、己の見識を部族全体に広め、すぐに彼を守る支持者の一団を率いるようになりました。ことここに至って、アムーラスはこの秩序を乱す兄に追放の決定を下し、ホアルムーラスは断固たる反逆をもって返答に替えました。続く戦乱の最中、彼の軍は女王の殺害に成功し、彼はアヴァリ(Avari)の後押しを背景にウルドの王を宣しました。反対勢力を粉砕し、妹の死の代償を受けることもなく…。

 1992年、彼はウルドールの王となり、部族の伝統は完全に逆転しました。南のエルフとの同盟は彼の生命線とも言える重要なものでしたが、権力を得た彼は貪欲に不死性にも焦がれるようになり、遂にその同盟を翻してしまいます。変わって彼が求めた同盟は、(あろうことか)モルドールとのものだったのです。そして2000年、モルドールの使者として血族殺しの王の元に現れたのは、第2のナズグル、東夷のカムールでした。そしてその手には第6の指輪が携えられていたのです。カムールは自身の指輪が育っていくのを見ながら、主が下僕に下す不死の恩寵を身をもって示し、氷の王を口説きました。ホアルムーラスはこれを受け入れ、突然に、と言っても良い性急さで影の支配下に下ったのです。

 2世紀が過ぎる頃には、氷の王は北の地に強大な版図を築いていました。彼はエルフをも足元に下し、正に強大な帝国を築き上げていたのです。2250年に彼はこの地を離れましたが、新たな地でも強固な地盤を築きました。彼はここ、モルドールで、主の横に立ち1000年を与しました。3262年のサウロン虜囚後には、一時的に故郷に戻っていたホアルムーラスですが、ヌメノール没落後のロヴァニオンにおける一連の戦いに加わり、「最後の同盟」軍の攻勢にあたっては闇の塔防衛に力を発揮しました。

第3紀

 エルドールに、そして故郷であるウルドに彼が戻ったのは第3紀1050年のことでした。既に彼の帝国は失われていましたが、そんなものは枷にもならず、瞬く間に王国の再建は成されました。彼は(未だに失われずにいた)ディーアの森を居城に定め、ゆっくりと力の回復を待ちました。1640年には、彼の王国は昔年の姿を取り戻していました。サウロンの呼び出しで再びモルドールに赴いたのもこの年のことです。闇の王自身が力を取り戻すため、指輪の幽鬼達の力を欲したのです。ホアルムーラスは、オスティグラスにて(妖術王を除く)7人と再会し、放棄されていたダーサング(Durthang)の砦を検分し、ここを己が居城としました。後に彼が砦を空けると、魔狼ガウルヒア(Demonic werewolf Gaurhir)が指揮を執り、“6番目”の下僕としてこの地に残りました。“冷たき一者”のダーサングでの潜伏は2000年まで続きました。この間、1975年にゴルゴロスにおける軍の再編のため他のナズグルと会見を持ったことだけが例外でした。

 ホアルムーラスは、同盟国であるウドゥンのウルク召集に力を発揮しました。そしてこの巨大な盆地の内部において軍を編成しました。2000年、彼は手勢を率いて月の都を強襲しました。この戦いに勝利を収めると、妖術王・アコーラヒル・インドゥアと共に、この地、すなわち今や自由の民から憎しみと恐れを込めてミナス・モルグルと呼ばれる地に居を定めました。彼はこのモルドールの新たな要塞都市(闇の手によって大掛かりな改築がなされました)とその軍の訓練と指揮に責任がありました。

 指輪戦争の最中、ホアルムーラスはイシリエン襲撃にその姿を見せています。指輪の探索・ペレノール野の戦い・モランノンの戦いにも加わりました。そして清算の時、氷の王はオルドルインの炎に消えた指輪と共に、己が滅びを知ったのです。


 ホアルムーラスは長身でがっしりとした外見を持ち、身長は1メートル85センチ、90キロ以上の体重がありました。この体格はウルドールの平均である低い身長から逸脱していましたが、青の瞳と非常に薄い肌は、正に彼の一族の典型でした。彼はウルドの霊魂使い(Animist)として、僧侶的な服を好みました。その光灰色の長衣の下に、氷竜の皮であつらえた鎧を隠していました。そしてその兜は北極熊オヴィル(Ovir/White Northern Bear)を模したものでした。


from 『Gorgoroth』


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