固定価格買い取り制度(FIT)が始まってから順調に伸びてきた再生可能エネルギーの普及にブレーキがかかり始めた。

 再エネでできる電気を全量買い取ることが義務づけられている大手電力側で、送電線の受け入れ容量が足りなくなる地域が出てきたためだ。大手10社のうち九州電力など5社がほぼ全域で新規の契約をストップした。

 容量不足は、再エネへの投資意欲や活用への期待が大きいことのあらわれだ。しかし、太陽光や風力には、季節や天候、時間帯によって発電量の差が大きい難点がある。うまく調節しないと周波数や電圧に影響して停電や機器の故障につながる。

 解決手段のひとつは、送電網を増やして広域的に運用することで変動を吸収しやすくすることだ。電力会社の間の送電網を太くすれば、例えば九州だけだと余ってしまう再エネ発電による電気を、電力需要があるほかの地域に流せるようになる。

 これまで送電網への投資は電力各社の経営判断に委ねられてきた。電力システム改革では送電と発電の部門が分離する。個別の事情に縛られず、全体を見た送電網が築けるようになる。

 来年4月には各地の送電業者を束ねる広域的な運用機関ができて主要な送電線や電力会社をまたぐ連系線の整備を担う。国の政策上の必要性や発電事業者からの申し立てに基づいて送電網の増強もしやすくなる。

 費用負担のあり方など、詰めるべき点は残っているものの、こうした電力改革を着実に進めることが大切だ。

 もっとも、大規模な送電網の整備には時間がかかる。発電施設と接続する箇所での送電線の容量不足といった問題もある。

 経済産業省は作業部会を設け、各社の受け入れ可能量の計算方法や条件を検証する。変圧器や蓄電池の増強なども電力会社任せにせず、前倒しでの実施を含めて考えてもらいたい。

 事業申請が突出して多い大規模な太陽光発電に対しては、現在は年1回の買い取り価格見直しの頻度を増やすなど、価格メカニズムを通じて適正規模へと誘導するのも一案だろう。

 原子力や化石燃料に代わるエネルギーの開発や温暖化対策の観点からも、再エネの促進は世界の潮流だ。

 政府は新しいエネルギー基本計画で、13年から3年程度を「再エネの導入を最大限加速する」期間とし、2030年には発電量の2割以上にする目標を掲げてもいる。再エネ普及の機運をしぼませないよう、知恵を絞ってほしい。