安倍首相の「安全運転」には終わらせまい。野党のそんな意気込みが見えた論戦だった。

 きのうまでの衆参両院での代表質問は、1月の通常国会とはやや様子が変わった。野党第1党の民主党とともに、維新の党も安倍政権への対決姿勢を鮮明にしたからだ。

 圧倒的な力を持つ安倍政権に向き合う立ち位置が、ようやく定まったということだろう。この姿勢をこれからも貫き、予算委などを舞台にさまざまな論点を示してほしい。

 通常国会では「責任野党とは政策協議を行っていく」との首相の呼びかけに、野党の足並みが乱れた。だが、安倍政権は結局は議場外での自民、公明の与党協議ばかりを重視した。集団的自衛権の行使を認める閣議決定への過程はその典型だ。

 衆参両院で多数を持つ以上、与党はそうしたやり方に傾きがちだ。そこで野党が存在感を示すには、政策論で切り込む正攻法しかあるまい。

 民主党の海江田代表は、「地方創生」と「女性の活躍」を掲げる首相にこう問いかけた。

 「各府省が地方創生という冠をつけて縦割りのバラマキ予算要求を行っている」「首相は子育てや介護に追われ、仕事との両立に疲れ果てている女性を忘れてはいないか」

 地方や女性を重視すべきなのは総論ではその通り。だが、政権がこれから具体化するという政策が霞が関や大企業からの視点に偏ることはないのか。野党の側からも対案をぶつけていくべきだ。

 維新の党の江田代表は、消費増税の必要性は認めつつ「とてもさらなる増税を行える経済体力にはない」と語った。同じ意見の野党は多い。

 首相は所信表明演説で有効求人倍率の高水準や賃上げの実績を誇ったが、経済指標は明るいものばかりではない。アベノミクスの中間総括の意味でも、税率の再引き上げについては徹底的な議論が必要だ。

 江田氏はまた、国会議員に毎月100万円支給されている「文書通信交通滞在費」について、使途を公開する法改正を首相に呼びかけた。

 首相は「国会において議論を」との答弁にとどめたが、消費増税に伴い自民、公明、民主の3党が約束した「身を切る改革」は何ら実現していない。定数削減には賛否があるにしても、経費の透明化に何をためらう必要があろうか。

 野党は、巨大与党が安閑としていられない提案を打ち出し、国会を活性化させてほしい。