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【社説】

日銀短観低調 民需の指標は総崩れだ

 経済指標は軒並み景気の停滞や悪化を示している。「経済の好循環」どころか、消費税増税を発火点に消費低迷が生産、投資を落ち込ませる悪循環だ。負担増を強行した政府の判断ミスではないか。

 日銀が発表した九月の短観(企業短期経済観測調査)も悪い。調査は三カ月おきに全国約一万社を対象に景況感などを尋ね、今回は円安が大幅に進んだ八月下旬から九月下旬に回答があった。

 円安による恩恵が大きい「大企業・製造業」のみ景況感がわずかに改善したが、これまで景気回復をけん引してきた「大企業・非製造業」や中堅、中小企業の製造業、非製造業はいずれも景況感悪化の回答が多い。三カ月先の見通しも総じて横ばいである。

 短観は企業が景気を皮膚感覚でとらえた指標として、景気動向を探るうえで重要視される。それが、この結果である。

 短観ばかりではない。直近八月の主な経済指標では、自動車やエアコンなどの生産低迷から鉱工業生産指数は低下。在庫調整の遅れが目立ち、景気はすでに後退局面にあるとの見方も出始めた。家計調査で一世帯当たりの実質消費支出は前年同月比で5%近く落ち込み、住宅着工戸数は同12・5%減である。

 政府は「雇用や所得は改善している」というが、中身が問題だ。完全失業率は3・5%に低下したとはいえ、働き口が増えたのは不安定な非正規労働ばかりである。現金給与総額は平均約二十七万五千円でわずかに増えたが、物価上昇を加味した実質賃金でみると同2・6%減である。

 消費税増税の影響を政府・日銀が読み間違えたのは疑いようがない。前回一九九七年に消費税を3%から5%に引き上げた際は、所得税減税を先行させ、国民の痛みを和らげる措置をとった。それでも、金融危機の影響などもあって消費は大きく落ち込んだ。

 今回は所得税減税はなく、増税一本やりで、一年半の間に消費税は二倍の10%に引き上げられる。年金の支給カットや厚生年金保険料の引き上げなど負担増もめじろ押しだ。アベノミクスのインフレ政策で物価上昇が激しく、消費は前回以上に落ち込むとみるのが当然ではなかったか。

 景気腰折れを防ぐために再増税は見送るべきである。企業も好循環を実現すべく、過剰な内部留保を改め賃上げに努めるべきだ。経済立て直しに全力を挙げることが政治の責任、国民の願いである。

 

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