米マイクロソフト(MS)が開発中の次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」を公開した。タブレット(多機能携帯端末)での操作性に配慮した現行の「8」より、パソコン(PC)での使い勝手を重視した。MSの牙城であるPC市場で攻勢を強める米グーグルや米アップルに対し、守備を固める狙いがある。
「変化と進化を象徴する数字を選んだ。『10』はわれわれにとって重要な進歩だ」。来日中のMSのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は1日、新OSの名称を「9」ではなく、1つ飛ばして「10」にした理由を都内でこう説明した。
要望の多かった「スタートメニュー」を復活。「8」で好評だった「ライブタイル」と呼ばれる機能と組み合わせた。起動しているアプリ(応用ソフト)を一覧表示する「タスクビュー」機能や最大4つのアプリを整然と分割表示する機能なども盛り込んだ。
発売は来年の予定だが、企業のIT(情報技術)担当者らに試験版を提供し、外部の声を最終製品に反映させる。「これほど早い段階から、これだけ多くの情報を共有するのは初めて」(OS担当のテリー・マイヤーソン上級副社長)という。
背景には2012年10月に発売した「8」の反省がある。タブレットの普及をにらみ、タッチ操作がしやすい画面デザインや機能を採用した意欲作だったが、逆にPCでの操作がしにくくなったとの不満が続出した。
米調査会社によると、デスクトップPC市場における「8」のシェアは、1年後に投入した改良版の「8.1」と合わせても1割強にとどまる。PC市場でMSのシェアが侵食されていることも危機感を高める。
米国で9月の新学期を前にした商戦。米調査会社によると、今年はグーグルの「クロームOS」を搭載したノートPC「クロームブック」の販売シェアが前年の3.3%から4.5%に伸びた。アップルの「マックOS」を搭載した「マックブック」も24%から27%に拡大。ウィンドウズPCのシェアは72%から68%に縮小した。
グーグルが無償提供するOSを搭載したクロームブックは200~300ドル程度という安さと使い勝手の良さが受け、企業などで導入が進む。対抗して一部の端末を対象にOSの無償提供を始めたMSは「低価格PC市場は誰にも譲らない」(ケビン・ターナー最高執行責任者)と語るが、無償提供の拡大はウィンドウズ関連収入の目減りを招くもろ刃の剣だ。
1世代前の「7」やサポートが今春終了した「XP」を今も使うウィンドウズユーザーをつなぎ留めるためにも、発売までに商品力をどこまで高められるかが「10」の成否のカギを握る。
(シリコンバレー=小川義也)
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