そもそも、この報告書は、国際的人権団体 「国境なき人権」 が、国連の自由権規約委員会に提出したものだ。ここでいう自由権規約というのは、 「市民的および政治的権利に関する国際規約」 = International Covenant on Civil and Political Rights (略して CCPR) のことだ。1966年12月16日に国連総会にて採択され、1976年3月23日に発効した。日本は、1978年に署名し、その翌年に批准した。
国連の人権委員会は、その規約を批准した国々に対し、守れれているかどうかの審査を数年に一度行っている。日本に対する審査は、2014年7月に行われた。その審査の約一年前から、人権団体など NGO からの報告書を、国連・自由権規約委員会は受け付けている。その一環で、2013年7月に提出されたのが、この報告書である。
そのような性格上、報告書は、日本の問題点を具体的に示し、「市民的および政治的権利に関する国際規約」に照らして、第〜条に違反している・・・という形をとっている。これは、拉致監禁に関する人権問題というよりは、人権問題、たとえば、ヘイトスピーチ問題、死刑問題、代用監獄問題などを訴える人権団体などの NGO は、すべて、その形式をとっている。
参考リンク:
国連の人権審査機関 - 国連自由権規約委員会について
(記事最後に、★市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)の全文あり)
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402634045.html
後藤徹裁判 控訴審 甲185号証の2
「国境なき人権」の報告書:「棄教を目的とする拉致と監禁」より
1)日本の国際的義務違反
1) 日本の国際的義務違反
本章は、棄教目的の拉致監禁の過程中に侵害されたとHRWFが見なす主要な条項をハイライトしている。
>> 信教の自由 (ICCPR第18条)
ICCPRの一員として日本は思想、良心及び信教の自由を保証する義務を自らが負っている(ICCPR第18条)(注10) 。この人権には或る宗教を有し、受け入れ、明示する自由が含まれる。第18条第2部には「何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない」と明記されている。
国連人権委員会はその総評22第2項において 「第18条は伝統的宗教或いはその制度的特徴に類似した性格や習慣を有する宗教や信仰にのみその適用が制限されるものではない。したがって本委員会は、どの宗教や信仰に対しても、それらが新しく創設されたり宗教的少数派を代表するがゆえに優勢で支配的な宗教団体の一部から敵意の対象とされ得るという事実を含む何らかの理由から差別が行われる如何なる傾向に対しても懸念をもって見ている」 と指摘している。
国連事務総長に対する 宗教・信仰の自由に関する特別報告はその2012年の中間報告の中で信教の自由の一環としての転向改宗の自由に焦点を置いている。以下の抜粋は特に日本における拉致監禁被害者の実態に関連したものである。同報告者は 「国民が或る団体や社会環境から転向した際に以前に属していた団体や社会環境が第三者を使って暴力や嫌がらせを加えるといった違法行為から国民が自由に転向できる権利を保護する義務は国家に課せられている」 (注11) と強調し、さらに「改宗を強制されない権利は非国家主体または第三者、即ちに私人または民間団体にも関連している。もしも個人または団体が強制的手段によって或いは特に弱めのある状況を直接利用することによって人を改宗しようとする場合は、かかる行為に対しては国家による保護が必要であろう」(注12) と述べている。
ところが本報告に示されているとおり、拉致監禁の事例においては、被害者の両親が多くの場合は 「脱会カウンセラー」 たちの指示や積極的な支援を受けて新宗教のメンバーをその信仰から離脱させようと強制し、日本政府当局が被害者の宗教・信仰の自由の保護を怠ってきたのである。
>> 個人の自由と安全の為の権利(第9条)及び移動の自由(第12条)
ICCPR第9条には 「すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない」 と明記されている。
ICCPR第12条には 「合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する」 と明記されている。
然るに日本では拉致被害者がその信仰を放棄せしめる目的から親族によって何週間、何ヶ月さらには何年にもわたり個室やアパートに監禁されてきた。
>> 拷問その他の虐待を受けない権利 (第7条)
ICCPR第7条には「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない」と明記されている。
総評28第11項では、家庭内暴力は非人間的で劣悪な待遇の一種と見なすことができ、本条項に該当するとの人権委員会の意見に焦点が当てられている。
日本における棄教目的の拉致監禁被害者は多くの場合に拉致される過程の中で肉体的暴力を受けてきたと報告されている。被害者の両親または親族が強制監禁中に彼らを虐待したという主張もなされている。HRWFが知る限りでは、加害者として申し立てられた者の誰一人として法廷に起訴されていない。
>> 結婚し家庭を築く権利(第 23条)
ICCPR第23条第1部には 「家庭は自然で基礎的な社会の集合単位であり、社会と国家により保護されるべき権利がある」 と明記されている。同条第2部では 「結婚適齢期の男女が結婚し家庭を築く権利が認められなければならない」 と付け加えている。
多くの場合、統一教会入会者の親は、他の諸理由の中で、彼らの息子娘が他の統一教会員と婚約し二人の宗教的結婚が法的に登録される前にその結婚を阻止しようとの目的から拉致監禁を実行してきた。親がその息子娘を監禁中に解放の為の条件として彼らの婚約を解消させたり配偶者と離婚させたりする事例もあった。
1995年8月に後藤徹氏とその婚約者が統一教会の国際合同結婚式に参加したが、後藤氏は1995年9月11日に拉致され、その12年5ヶ月後にやっと解放された。
>> 有効な救済を受ける権利 (第2条) 及び差別を受けない権利 (第26条)
ICCPR第2条第3部は諸国家に 「この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保する」 ことを義務づけている。国家はまた、 「救済措置を求める者の権利が権限のある司法上、行政上若しくは立法上の機関又は国の法制で定める他の権限のある機関によって決定されることを確保すること及び司法上の救済措置の可能性を発展させる」 べきであり、そして 「救済措置が与えられる場合に権限のある機関によって執行されることを確保」 しなければならない。
ところが本報告の第3及び4章で紹介するとおり、日本政府当局は棄教目的の拉致監禁の被害者に対し有効な救済を提供してこなかった。ほとんどの事例において警察は強制監禁及び未承諾の脱会カウンセリングを即座に止めさせる為の適切な措置を取ってこなかった。伝えられるところでは調査はおざなりな方法で行われるか或いは全く為されず、自由の剥奪の状況下で為された拉致監禁及び未承諾の脱会説得の加害者には何の刑事責任も問われてこなかった。民事裁判所は 「脱会カウンセラー」 に対し将来において未承諾の 「脱会カウンセリング」 を止めることを命じる差止請求の発令を拒否してきた。民事訴訟における損害賠償は比較的低く、犯された犯罪の重さとは釣り合い得ない。
ICCPR第26条には 「すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する」 と明記されている。
日本の政府当局が新宗教運動に回心する人々に対し有効な救済を提供してこなかったのは、統一教会のような非伝統的な宗教に対して社会においても政府及び司法当局内でも根深い偏見があるという理由からであるという指摘がある。その結果として、警察と司法当局は拉致監禁被害者たちが解放または脱出後に申し立てる拉致監禁の通報及び刑事告訴に対し無視したり適切な対応を取ってこなかった。こうして新宗教のメンバーたちは不公平に扱われ、宗教的信条に基づく差別という理由から犯罪からの保護を拒否されてきた。(注10) 日本国憲法には信教の自由に関連した権利が明記されている。同国憲法第20条には「1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。2)何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 3)国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と明記されている。
(注11) 中間報告、2012, p. 8
(注12) 中間報告、 2012, p. 9.
<次回に続く>
報告書中に、ICCPR 規約の条項がたくさん出てきたので、ここで、それらを記しておきます。
http://humanrightslink.seesaa.net/article/402634045.html
★市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)
第七条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。
第九条
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。
2 逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。
3 刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。
4 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。
5 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。
第十二条
1 合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。
2 すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。
3 1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。
4 何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。
第十八条
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
4 この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
第二十三条
1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。
2 婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。
3 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない。
4 この規約の締約国は、婚姻中及び婚姻の解消の際に、婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる。その解消の場合には、児童に対する必要な保護のため、措置がとられる。
第二十六条
すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。
次回は、本論の第二章 「拉致・監禁及び 強制的脱会カウンセリング(ICCPR 第7、9、12、18 及び 23条違反)」 の紹介です。日本で、どのようにして、拉致監禁が行われてきたかを、具体例を交えながら、国連人権委員会に訴えている箇所です。ワードで8ページ分です。
------PR------
日本ブログ村ランキング
クリックお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村
###
【後藤民事裁判提出資料の最新記事】