御嶽山噴火:不明者の把握、難航
毎日新聞 2014年10月02日 01時41分(最終更新 10月02日 08時54分)
御嶽山の噴火は、山の災害で安否不明者を正確に把握することの難しさをまざまざと見せつけている。
長野県災害対策本部は発生当初、氏名や年齢などを記載した不明者のリストを県のホームページ(HP)で早期に公表する方針を示していた。だが、噴火から5日目の1日になっても公表は見送られたままだ。土砂災害なら犠牲者の大半は地元の居住者で、不明者の特定は早く進む。だが、今回の噴火では「何人が入山していたかさえ、いまだに分からない」。担当者はそう話す。
9月30日正午過ぎ。現地を所管する長野県の木曽広域消防本部は安否不明者の数について、前日より27人多い79人との独自集計を発表した。しかし同日夕には一転、8人減の71人に修正した。新たに王滝村と木曽町の情報を集約したことで数が増える一方、情報を寄せてくれた人に確認する作業を進めた結果だった。県対策本部は「十分な裏付けを取らないとミスリードを招く。県警の情報とすりあわせ中だ」として不明者の数の公表も28日以降控えたままだ。
県対策本部によると、県警は主に専用フリーダイヤルに寄せられた安否確認の情報の他、登山口に駐車してあった車の所有者情報、登山届を基に独自に安否不明者数をとりまとめている。ただ、フリーダイヤルに30日までに寄せられた約240件の中には「長野県に向かった知人がいる」といった漠然とした情報も含まれている。また、御嶽山は県がHPで公表する山のランク付けでも日帰り可能な難易度の低い山とされ、登山届を提出しない人が多いことも足かせになっているという。県警は1日、30日までに死亡が確認された12人のうち5人が登山届を出していなかったことを明らかにした。
木曽町役場にこれまで家族などから安否不明との申告があったのは46人。だが、家族などの安否が分からないと役場を訪れる人は後を絶たず、1日時点で約130人が待機している。
安否不明者の把握が進まないことは、今後の捜索にも影を落とす。自衛隊関係者は「不明者を正確に把握し、遺体の数と合致するかどうかを確認できなければ、捜索をいつまで、どの範囲までしたらいいか判断できない」と懸念する。【稲垣衆史】