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呉善花<緊急寄稿>さよなら、幻想の国・韓国

日韓首脳会談はいますべきでない

 いわゆる従軍慰安婦問題をはじめとする歴史問題について、日本はどう韓国に対応すればよいのか。私の答えは「何もしないこと」です。話し合いで解決しようとすると、弱みをみせていると捉えられて、さらなる謝罪や賠償を要求されることになるでしょう。

 私は少なくとも「歴史問題については棚上げにしよう」と韓国政府がいってくるまでは、日韓首脳会談はしないほうがいい、と考えています。2013年2月に朴槿惠政権が発足した際、日本のメディアには「日韓関係は改善が期待できる」という好意的な報道が目立ちました。父親の朴正熙元大統領が日韓基本条約を締結して日本との国交を回復した人物だったため「親日的」と考えられており、娘の朴槿惠氏も同じイメージでみられたのです。しかし大統領選に出馬を決めて以来、反日的な発言を繰り返してきた朴槿惠氏をどうして「親日的」と考えてしまうのか、私は不思議でなりませんでした。

 現に、大統領就任直後から、朴槿惠大統領は強硬な反日姿勢を打ち出してきました。2013年3月1日の「3・1独立運動」記念式典では、日本統治時代を振り返って「加害者(日本)と被害者(韓国)という立場は千年の時が流れても変わらない」とまで演説。これに対して日本国民は怒るというよりも、呆れてしまいました。韓国が日本と友好関係になることを永遠に避けているように感じられたからです。

 もともと保守本流の政治家でありながら、朴槿惠氏が強固な反日姿勢をとり続けているのはなぜか。野党をはじめとする親北勢力が、父親の朴正熙元大統領を「親日派」として朴槿惠大統領の大きな攻撃材料としていることが原因の一つとして挙げられます。現在の朴政権は与野党間の危うい勢力バランスで支えられていますので、国民の支持をつなぎ留めるためには、確固たる反日姿勢を打ち出すしか手がないのです。しかし、朴槿惠大統領が反日姿勢を強めるほど、かえって親北の左派勢力を勢いづかせることになってしまいます。

 現在、韓国国内に北朝鮮のスパイが12万人ほどいるといわれますが、彼らは政府機関、マスコミなどに根深く入り込み、国民の反日感情を煽動しているとみられます。反日の隠れ蓑を着た親北勢力が「反日=愛国」を煽り、与党・保守勢力も国民の支持を得るために「反日=愛国」姿勢を強める。これが朴槿惠政権発足と同時に出現した韓国のどうしようもない政治状況の実態です。

 前述しましたように「米軍慰安婦問題」は野党や左派勢力が朴政権を攻撃する格好の材料となったわけですが、朴槿惠大統領の反日姿勢が彼らの伸長を促していることを考えれば、じつに皮肉なことだといえます。

 韓国で保守勢力が後退し、左派勢力が伸長しているもう一つの理由として、経済格差の進展があります。順調な経済成長を続けているとみられた2002~2011年のあいだに、韓国は一部の大企業と富裕層が国民の利益を独占するすさまじい二極化社会になってしまいました。失業率の上昇や貧困層の拡大により社会秩序が不安定になりつつある韓国では、凶悪犯罪が多発するなど、格差が社会問題化しています。国民のなかには「あんなに儲けている金持ちがいるのに、自分たちはなんでこんなに貧しいのか」といった不満が広がっているのです。

 こうしたなか、さまざまな団体や集団から生活保障を求める動きが強く出てきています。政治家もこれは無視できません。「米軍慰安婦」の問題にしても、貧富の格差を背景に「恵まれない人の生活を助けるべきだ」「長年、見捨てられてきた人たちの生活を政府は保障せよ」という社会風潮が後押ししていると考えられます。

 

韓国ではなく、世界にどう対応するか

 いずれにせよ、韓国は反日姿勢を続けてこのまま日本と疎遠になれば、中国への依存を強めるしかありません。ところが中国経済には不動産バブルの崩壊や輸出減速などさまざまな問題があり、けっして好調とはいえません。折からのウォン高で打撃を受けている韓国経済がさらに中国経済への依存を強めれば、共倒れになる心配もあります。にもかかわらず、朴槿惠大統領がこれまで日本との対話を拒否してきたのは、中国に媚びを売るためとしか考えられません。これは外交の選択肢を狭めるだけで、けっして賢い方法だとはいえないでしょう。

 今春まで安倍政権は「河野談話」について「検証はするが、見直さない」といっていました。韓国の立場を重んじたギリギリの配慮で、いま振り返れば、このときが日韓首脳会談を行なう最大のチャンスでした。慰安婦問題について『朝日新聞』が誤報を認めた以上、今度は日本国民から「河野談話」の再検証や見直しを要求する声が高まっていくことでしょう。安倍政権はそうした国民の声を簡単には無視できません。そうなれば、日韓ともに対話を切り出しにくい状況になります。しかし先ほどもいったように、歴史問題について韓国から棚上げをいってくるまで、日本側から働きかけを行なう必要はありません。

 むしろ日本がいま考えるべきなのは、韓国ではなく、世界にどう対応するかです。日本を貶めるようなプロパガンダを、韓国は欧米を中心に各地で盛んに行なっています。慰安婦などの問題を正しく理解する欧米の政治家、あるいは研究者は稀であり、韓国側の一方的なプロパガンダが世界に浸透してしまう現状があります。

 先日、訪韓した私の大学の教え子が「竹島は韓国のものよね」と急にいわれて、戸惑ったと話していました。韓国では子供のころから「竹島はわが領土」というような歌を歌わされて育ちます(これも調教です)。心の底からそう思っているわけで、100パーセント疑いをもっていない。残念なことに、その教え子はうまく言い返すことができなかったそうです。日本では領土問題や歴史問題についてきちんとした教育を行なってきませんでしたから、無理もないことかもしれません。

 また、同じくその教え子が驚いたのは、ある大学で韓国語によるスピーチコンテストが行なわれたときのこと。参加資格者は韓国以外のアジア人や欧米人留学生で、テーマはなんと日韓問題なのです。ほとんどの参加者が韓国側の言い分に沿って日本を非難するスピーチをしていたそうです。それだけ韓国の主張が海外で浸透している、ということがいえます。

 日本は、韓国の海外での宣伝行為についてもっと危機感をもつべきではないでしょうか。たとえば、日本の小説は翻訳版が世界中で読まれているのに、なぜか近現代史関係の論考や評論は翻訳版が少ない。摩擦を恐れているのか、それとも利益にならないと考えているのか、二の足を踏む出版社が多い。論壇誌に寄稿された論文の英語翻訳も、現状ではほとんど進んでいません。

 日本の政府はもちろん、日本のメディアも自国の主張をもっと世界に広げていく方法を探してほしいと思います。日本軍の慰安婦問題について、いくら『朝日新聞』が誤報を認めたところで、韓国が日本への謝罪要求を引っ込めることはありえません。世界で慰安婦像を建てる運動なども、ますます加速していくでしょう。

 もちろん、そのきっかけをつくったのは何よりも『朝日新聞』の一連の記事や報道であり、その罪はきわめて重いといえますが、「捏造」や「嘘」など何でもありの幻想の世界に生きている韓国の国民には、いまさらいくら真実を突き付けても通用しないと考えて、日本は自国の正義を世界に向けて発信していく努力をしていくべきです。

 


<掲載誌紹介>

2014年10月号

今月号の総力特集は、『朝日新聞』の8月5日と6日の慰安婦問題の検証記事について、弊誌としても検証し、日韓関係について考えてみた。池田信夫氏は自身がNHK勤務時にこの問題を取材した経験から、詳細に経緯をまとめている。「身売りを強制連行と書いたのは捏造か、控えめに表現してもねじ曲げであり、過失ではありえない」と結論付けている。また、水間政憲氏は1982年の吉田清治氏の「奴隷狩り」記事を裏付ける内容だった、1984年11月2日の『朝日新聞』の記事を紹介。でっち上げで世界を騙した吉田氏もひどいが、裏付けもせず記事を垂れ流した記者の責任も今後問われるべきだろう。
今月号はほかに特集が2本。特集Ⅰはバブル崩壊も囁かれる中国問題である。現在、ベストセラーに名を連ねる『中国の大問題』の著者であり、前駐中国大使の丹羽宇一郎氏に話をうかがった。特集Ⅱでは新しく誕生した「安倍改造内閣への提言」として、主に経済政策の方向性について考えた。
また、巻頭では、東京電力会長に福島復興と経営の立て直しをテーマにインタビューした。ぜひ、ご一読を。

 

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BN

著者紹介

呉善花(お・そんふぁ)

拓殖大学教授

1956年、韓国・済州島生まれ。83年来日、大東文化大学(英語学)卒業後、東京外国語大学地域研究科修士課程(北米地域研究)修了。新潟産業大学非常勤講師を経て、現在、拓殖大学国際学部教授。著書に、『韓国併合への道 完全版』(文春新書)ほか多数。

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