御嶽山噴火:捜索再開、関係者葛藤
毎日新聞 2014年10月02日 07時15分
「答えがない、一種の賭けだった」
捜索を再開するか、見送るか。御嶽山の噴火で山頂に取り残された登山者らの捜索方針を決める関係機関の調整会議は1日、葛藤を抱えながら捜索再開を選択していた。
「火山性微動が昨日と同じような状態になったら直接、部隊に消防無線で連絡します。2次災害は起こさせない」
1日午前5時10分、長野県庁3階で始まった会議。気象庁から派遣されている宮下誠・火山防災官は、自衛隊や警察など集まった約15人に再開を提案した。前日の捜索を阻んだ火山性微動は1日午前0時過ぎごろから低下の兆候が見られたものの、依然、「高止まり」が続いていた。「微動の収束から約2時間が経過すること」。前日に決めた再開の基準は満たしていない。
「収容中に退避連絡が来た場合、収容者はどうするのか」。家族らのために早く作業を始めたいが、2次被害は出せない。ある参加者は「葛藤で、会議はかなりぴりぴりしていた」と振り返る。
それでも、会議は約5分で終わった。気象庁内で検討を重ねた「火山性微動の数値が一定で推移すれば噴火の危険性は少なくなる」との結論を、参加者は信じた。
運も味方した。足を取られる深い灰や噴石、有毒ガスに難渋してきた地上部隊が山頂付近まで着くと、火口からみて北の風が吹いていた。
多数の登山者らが見つかった八丁ダルミは火口のすぐ東に位置し、「噴石の上に灰が積もり、登山者か石かはヘリコプターからは判別が難しい場所」(陸上自衛隊松本駐屯地の田中浩二3等陸佐)だ。しかし、難所の八丁ダルミや、剣ケ峰と一ノ池の間などは北風なら影響を受けない。晴天も手伝い、良好な視界の中で地上部隊の救助作業は進んだ。
「本当は2〜3日でも経過を見たかった」。1日の捜索終了後、目を充血させながら振り返る宮下防災官の姿があった。
会議直前まで助言を求められた山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大大学院教授(地震・火山学)は今回の判断について「完璧を求められたら、行くな、としか言えない。でも使命がある以上、隊員の安全確保を尽くした上で行う(今回のようなやり方が)最善策ではないか」と話した。【稲垣衆史、福富智、関谷俊介】