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WIRED VOL.13

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未来都市は「センシング」を必要としている:イノラボ所長・渡邊信彦

いま東京は、2020年のオリンピック開催に向けて、大きくその姿を変えようとしている。しかしその青写真は、決して2020年がゴールではなく、その先の20年、30年を見据えたものでなければならないはずだ。「そのためには、計画の初期段階から街にセンサーを埋め込むことが不可欠」だと、オープンイノヴェイションラボラトリー(通称イノラボ)所長の渡邊信彦は考えている。その真意はどこにあるのか…。渡邊自身が語る。

 
 
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TEXT BY TOMONARI COTANI
PHOTOGRAPHS BY KAORI NISHIDA

渡邊信彦 | NOBUHIKO WATANABE
株式会社電通国際情報サービス(ISID)執行役員
オープンイノベーション研究所 所長
金融システムにインタラクションデザインを持ち込みネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。経営企画室長を経て2011年オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在はさまざまなセンシングデータを元にソーシャルシティという新しい街のプラットフォーム開発を手掛ける。2020年東京大改造にむけて2014年8月、スポーツ&ライフテクノロジーラボをスタート。Senseable City TOKYO 2020をコンセプトに新しいスポーツの開発にも取り組んでいる。10月10日に開催される「WIRED CONFERENCE 2014」にも登壇予定。

前回、東京でオリンピックが開催されたのはちょうど50年前のことで、首都高速道路をはじめとする大型の都市改造計画はさまざまな経済効果を生み出し、日本の発展に大きく貢献しました。その意味において東京は、「オリンピックレガシー」を見事に使い切ったと思います。

今回のオリンピック開催に際しても、特にお台場や虎ノ門、あるいは新国立競技場周辺において大型な都市改造計画が予定されていますが、決してゴールは2020年ではありません。50年先とはいかないかもしれませんが、少なくとも20〜30年先を見据えた都市づくりをしていくことが大切です。

しかし前回とは異なり、今回の都市改造計画はまだまだ具体的なイメージが湧かない部分も多く、このままだと各ステークホルダーがやりたいことを個々に打ち出すだけで終わってしまうことにもなりかねません。

もちろん、それでもあるは程度インフラが整っていくとは思いますが、先々を見据え、バラバラに動いている計画をひとつにつなげていく作業を初期段階でしておかないと、後から取り返しのつかないことになる点もいくつかあると思います。そのひとつが「街にセンサーを埋め込む」ことだと、ぼくたちイノラボは考えています。

この10年で、センサーの技術は大きく進化しました。そしていま多くの人が、スマートフォンというセンサーの塊を持ち歩いています。そんな状況を最大限に生かし、東京をより楽しく住める街にするために、街を「情報銀行」のように捉えていくことが必要だと思っています。

つまりセンシングされたデータが、個人のものだときちんとフラグがついたかたちで街に自動的に貯まっていき、個人は使いたいときに、例えば病院やスポーツクラブ、あるいはレストランや劇場とつながっていくカギをもっている、というイメージです。そういうプラットフォームが構築されることによって、医療や教育をはじめとするさまざまな分野で一気にイノヴェイションが起きる可能性があり、それによってぼくたちのライフスタイルは大きく変わっていくはずだと考えています。

近年、再生医療や遺伝子の研究、あるいは義手や義足や外骨格のテクノロジーが飛躍的に進歩したことにより、今後数十年の間に、人の寿命は飛躍的に伸びるという予測が出はじめました。もし仮に、これまでより50年長く生きることになるのだとしたら、いまよりもさらに、ヘルスケアやメンタルケア、あるいはエンターテインメントについて真剣に考えていかなければならないでしょう。その先鞭としても、街にセンサーを埋め込み情報銀行化することは非常に大切ですし、オリンピックを前に街が大きく変わろうとしているいまこそ、その実験をスタートするのに最適なタイミングなんです。

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