2014-10-01
少年ジャンプ+について考える話
本に部屋がうもれる危険性を大きく変えた電子書籍という存在にとても救われている本の虫こと自分ですが、ちょっとあんまりにもあんまりだと思う記事があったので、つられんなよとツッコミはいりそうなところですが思うところを書きます。
愛深き故に!敢えて言おう!『少年ジャンプ+』はカスであると!
この記事において「愛が故に『少年ジャンプ+』はカスだ」と言われていますが、どの部分が「カス」とまで言われるほどひどいのか理解できませんでした。
記事の文中において問題と取り上げている箇所は以下4点かなと見受けられます。
1.値段設定
2.月額課金制
3.ものづくりに対する姿勢
4.既存の体制の打破
まず1の値段設定について、週刊誌の電子書籍が1冊あたり300円という値段が妥当かどうかでいうところを考えてみたいと思います。
1.値段設定
今回の電子書籍サービス展開にあたり、以下ざっくりと初期コストにかかってそうなものをピックアップしてみました。
・パソコン向けWebサイト
・それらに紐づくサーバサイドの開発(会員機能・コンテンツDB)
・上記のサーバ費
・運用に必要な管理機能
発注先にもよりけりですが、開発費はそれなりの規模であると見ていいのではないでしょうか。
さらにコンテンツを定期的に配信するための運用体制が必要となるため、新規雇用や他社との提携調整といった人的コストも負荷が大きいと考えられます。
人的コストについては継続的に発生するのは当然のこと、サービスそのものの改善のためにもコストは発生しつづけるので、初期コストだけで当然おさまるものではないでしょう。
これらを会社の1ビジネスとして展開するにあたり、該当の記事内では「印刷コストで十分ペイ出来るはず」とありますが、そもそも少年ジャンプ+は少年ジャンプを超える!と言っているのに、売り上げをライバルに担保してもらおうという考えはあんまりにもかっこわるくないでしょうか。
規模の小さい会社でなら売り上げは片方が持てば…というのもありますが、規模の大きい会社においては同じ会社内でもプロジェクトが違えばライバルです。自己のプロジェクトのみで売り上げを確立する手段を提示できなければそもそも会社がプロジェクトにGOを出さないでしょう。
また今回ポイントとして注目すべきなのが「電子書籍サービス」ということです。最近では電子書籍の教科書がでてきたりと、デジタルネイティブ世代のお子さんが多い世の中ではありますが、親の許諾なしに電子書籍を買う小学生がどのくらいいるのでしょうか?
この電子書籍サービスは、小学生、中学生、高校生等の学生ではなく、社会人の新規開拓ビジネスであると考えられます。ターゲットはお金に余裕があり、時間に余裕がなく、昔ジャンプの読者だった社会人と考える方が妥当ではないでしょうか。(もちろん社会人の既存読者も含まれていると思いますが)
少年ジャンプの電子書籍といえども、その中身は雑誌とはいくつか異なる点があります。
広告の有無、カラー記事の有無、オマケコンテンツの有無、アンケートの有無。
大きくいうとこの4つが雑誌と電子書籍での差異になっていますが、その中でも電子書籍の利点としては前者2つはオンラインコンテンツを楽しむユーザーの満足度を高める点として大きい役割があるのではと考えられます。
※余談ですが、自分自身はカラー漫画は苦手です。
ただ既存の読者からの声もある通り、オマケコンテンツ(作品の合間にある企画や作者からのコメント)がないのは寂しくもありますし、また週刊少年ジャンプという雑誌に大きな影響を与えるアンケートがついていないのも応援したい気持ちがある人にこそ憤りを感じる点でしょう。
そこをもって300円として考えたときに、300円のコンテンツとして週刊少年ジャンプ+で読める1冊分のジャンプは高いのでしょうか、安いのでしょうか。
価格の高い安いは個人の感覚によるものですが、少なくとも古本屋をまわらずとも話題になったジャンプがいつでも300円で買えて、なおかつかさばらずにどこでも読めるという点で300円が高いとは自分は思いませんでした。
また個人的に目次で読みたいタイトルがすぐ読めるのもありがたいです。
300円が高いと感じるのは、おそらく雑誌と比べてのことだと考えますが、そもそも雑誌と異なる点が大きく、また今後もサービスが改善されていくであろうことを考えると現段階では先行投資の意味合いも個人的には大きくあります。
アンケート機能はS.Q.のようにオンラインで受け付けてくれるようになるといいですよね。
アプリから購入した書籍に対してアンケート機能つけられるはず、だ…!がんばって!
2.月額課金制
さて、1冊300円が高いと感じているという旨を記事内では書かれていますが、それに対して月額課金という囲い込みはどうなのかと一石投じられています。
月額課金の内容について説明すると、週刊少年ジャンプとジャンプNEXT!!の2種類の雑誌が、課金したその日の直近の最新1号ずつと30日間の間900円で購読できるというものです。
具体的な日付をもって説明すると、月額課金を申し込んだ日が9月23日(火)とすると、9月22日(月)に配信された最新号がまずは読めるようになります。またそこから1ヶ月間の10月23日(木)までが月額の対象となるので10月20日(月)に配信された号までが購読対象となるわけです。
要するに少なくとも4週間分×2種類は900円で読めるので、1冊あたり112.5円。雑誌よりはるかに安いです。しかも購入したものは、月額課金を解除してもずっと読めるとのことです。
1冊300円が高いといいながら30日間900円で最低8冊は読める金額設定に対してなんの不満があるのかが本当によくわかりません…NEXT!!を読まないとしても4冊900円で、個別に買うより安いですね。
囲い込みっていうよりかは、純粋に月額課金あった方が読む方もラクじゃないですか…?っていうかお得ですよね…??何がダメなのでしょうか…。
3.ものづくりに対する姿勢
月額課金で安くしたところで、囲い込み目的でないかといえば、もちろんそんなことはないでしょう。そういう意味だってあるとは思います。
ただ、それがものづくりの姿勢に影響するかどうかでいえば皆無だと考えられます。
だって雑誌でも漫画毎週出すんですよ?
前述したオマケコンテンツやアンケートはないにしろ、雑誌で掲載した漫画がほぼそのまま掲載されるんですよ?
もしそこ手抜いちゃったらもちろん雑誌派の人だって買わない人だって出てくるだろうし、月額登録してたとしても解約しちゃいますよね。
それどころか、本来なら別になくてもいいカラー漫画つけて配信するのは、きちんと電子書籍としての場でコンテンツを活かしたいとおもう、ものをつくって人に届ける、届けた人に喜ばれたいという気持ちの現れではないんでしょうか。
しかもあのアプリやWebサイトを見る限りにおいて、Web系コンテンツがメインでない会社にありがちな雑すぎる作りではなく、ちゃんと使う人のことを考えて作られているのは、電子書籍の他のサービスを使ったことのある人であれば特に感じられるのではないでしょうか。
4.既存の体制の打破
「既存のモデルを打破してこそのイノベーション」だということで、ジャンプを超えるために少年ジャンプ+にイノベーションを起こしてほしいと、記事内で書かれていますが、「既存のモデル」とはこの場合にどこをさすのでしょうか。
文章の流れ的におそらく既存のアプリビジネスを指しているのだと考えられますが、そもそも大手出版社がアプリビジネスという流通に乗り出すというのは、出版業界において大きなイノベーションなのだということがスッパリ抜けているように思います。
ここにこぎつけるために、どれほどの担当者の苦労があったのかを考えるとありがたすぎて五体投地でお礼をいいたいところです。
出版業界について自分もそこまで知見があるわけではないですが、聞く限りにおいて決められ限られた流通経路の取り合いという様々な歴史の絡み合いから、一歩外に出たというのは大きな意味合いがあると感じます。
※それでいうと先攻していたモーニングには敬意をあらわしまくっても足りないくらいです。
またイノベーションという観点でいうと、新しい漫画の発表の場がジャンプという肩書きでもってして増えたのは、漫画好きとしても喜ばしいことです。
もちろん今、世の中的にはちょっとコンテンツ発表の場が増え過ぎて消費者側が見切れない感もなくはないですが、漫画を見極めるということに熟練した少年ジャンプ編集部の方々には、新しい漫画家さんの発掘を超期待したいところです。
全体を通して少年ジャンプ+をフォローしましたが、もちろん改善点等はまだ多くあるとおもいますし、雑誌のジャンプを超えるといったからには、怒濤の勢いをぜひ見せていただきたいと楽しみにしています。
あー、ジャンプが毎週勝手に届く生活しあわせすぎるー!少年ジャンプ+ありがとー!!
少年ジャンプ+
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