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田中知・東大教授、原子力事業者などから760万円受け取る 規制委の新委員になる予定

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SATORU TANAKA
インタビューに答える東大の田中知教授(東京・本郷の東京大学)撮影日:2012年05月01日 | 時事通信社

[東京 9日 ロイター] - 政府が原子力規制委員会の新委員に起用する方針の田中知・東京大学大学院教授が、2004年度から11年度までの8年間に、原子力事業者や関連の団体から760万円超の寄付や報酬を受け取っていたことがわかった。

東大本部がロイターの情報請求に対して回答した。

田中知氏が規制委の専門審査会の委員に今年就任した際に、規制委が公表した情報によると、田中氏は、東京電力<9501.T>福島第1事故が起きた翌2011年度に、東電元会長の田村滋美氏が理事長を務める「東電記念財団」や原発メーカーの日立GEニュークリア・エナジーなどから160万円以上の報酬や寄付を受け取っている。

これらの金額のほか、東大本部の回答によると、田中教授には原子力事業者などから2004年度から10年度にかけて合計600万円の寄付金があった。内訳は、青森県大間町で原発建設を進めている電源開発<9513.T>が計300万円、日立GEニュークリア・エナジー(前身の日立製作所<6501.T>含む)が計300万円。東大の法人化(04年度)以前については情報が残っていないという。

原子力規制委員会の発足に当たり民主党前政権が定めた「ガイドライン」は、規制委員に就任できない「欠格要件」の考え方として、「直近3年間に同一の原子力事業者等から、個人として一定額以上の報酬等を受領していた者」と明記している。

原子力規制庁の担当者によると、田中教授が直近3年間に日立GE社などから受け取った寄付金については、同教授の研究室に対する寄付なので欠格要件に抵触しないという。東電記念財団からの報酬についても、規制庁担当者は、「東電記念財団は、電力会社等から運営費の過半を得ていない団体なので欠格要件に該当しない」と説明した。

<脅かされる規制の独立・中立性>

ロイターは田中教授に、原子力事業者などから過去に760万円を超える報酬や寄付金を受け取りながら、独立性と中立性を保ちながら規制が行えるかどうかなどについて質問を送ったが、回答はなかった。

脱原発を主張する原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は、田中教授が寄付や報酬を受領したことについて、「(規制の独立・中立性が)影響を受けると思う。(金銭的な)つながりがあると規制が影響を受けることは規制庁も認識しているはず」と指摘した。

<政府、規制委員人選のガイドラインを破棄>

田中教授は、2010年から12年に原子力産業協会理事を務めたが、この点も民主党政権が定めたガイドラインに欠格要件に抵触するとの指摘が一部の国会議員から聞かれる。欠格要件として「直近3年間に原子力事業者等及びその団体の役員」が明記されており、原産協はガイドラインが委員への就任を禁じた「団体」に当たる。

だが、菅義偉官房長官は5月29日の記者会見で、田中氏が原産協理事としての報酬を受けていなかったとして、欠格要件に該当しないとの見解を示した。

また、原子力規制委員会・規制庁を所管する石原伸晃環境相は6日の衆議院環境委員会で、今回の人事案決定に当たり、民主党政権時代のガイドラインについて「考慮していない」と答弁。自民党政権としてのガイドラインは現在なく、今後も作る意向はないという。

田中氏を含む政府人事案は、原発推進に慎重な公明党が賛成する方針を決めており、今週にも国会での同意を得る見通しだ。

脱原発を主張する超党派議員で作る「原発ゼロの会」の事務局長を務める阿部知子衆議院議員(無所属)は、ロイターの取材に対し、「ガイドラインは、規制委員会に政治や推進側からの独立性を持たせる法の精神を具現化するために作ったもの。それを破棄するのは、原子力規制委員会の設立の精神を蔑ろにしている」と批判した。

(浜田健太郎 斎藤真理 編集:宮崎大)

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