10年で48倍!急増する「高齢者の暴力事件」その原因とは?
1日放送のNHK総合『あさイチ』の特集は「急増する高齢者の暴力」。ここ10年で驚異的に増えている高齢者による暴行事件、その原因とは?
驚異的に増加する高齢者の犯罪、15年前に何が?
65歳以上の高齢者犯罪の検挙数は、ここ10年で、傷害は9倍、暴行はなんと48倍にも増加しているという。
他の世代と比べて極めて高い増加率で、平成11年までは横ばいだったものの、その後一気に急増。しかし、その原因は不明で、警察庁も調査に乗り出しているのだとか。
また、検挙される高齢者の3分の2が初犯で、これまで犯罪に縁がなかった人が高齢になって事件を起こすことが多いそうだ。
高齢者が集まる病院で多発する暴力事件
特に、暴力事件が起きやすいのが病院で、私大病院の医療従事者で過去1年間に暴言・暴力などを受けた経験のある人は、44.3%。
暴言を吐いた人の年齢は、50代がトップで24%、次いで60代が21%。暴力をふるった人の年齢は、70代(24%)がトップで、次いで60代(22%)、50代、80代と、高齢者が上位を占める結果に。
都内のある大学病院には、警察OBが常駐する院内交番を設置し、院内での暴言・暴力行為やトラブルを見張っているという。
院内暴力を犯すのは”偉いポジション”の高齢者?
些細なことで患者に激昂され暴力を振るわれた看護主任は、暴力をふるった老人がある企業の会長であったことを後で知り驚いたという。大企業のHPに掲載された姿は温厚そうで、とても暴力をふるう人物には見えなかったとか。
院内暴力は、もちろん病院側の不手際が原因で起こることもあるが、ほとんどは患者側の粗暴な行為が原因なのだそう。
院内暴力に詳しい筑波大学・三木明子准教授によると、院内暴力をふるう高齢者にはある共通点があるそうで、「特権意識というか”自分が一番大事”という考え方を全面に出してくる人。自分には特別にしてほしい。例えば、診療の順番でも早くしてほしい、最高の治療結果が欲しいとか、そういう色々な所で、暴力で要求を通そうとする」という。
スーパーや旅先でもトラブルに…
病院以外でもトラブルは多発しているようで、視聴者からもエピソードが寄せられた。
スーパーでは「毎日のようにお弁当を購入するおじいさんがいて、いつもサービスのおしぼりをつけていた。ある日、それを知らないスタッフがおしぼりをつけ忘れたところ、腹を立て、レジスタッフを激昂し続けた」
70歳の父を持つ娘からは、「父と一緒に旅行した際、電車が遅れたことに対して『時間を返せ!』と駅員を罵倒し続けた。子供(孫)もいて、恥ずかしいと言うより怖かった」という体験が寄せられた。
元大学教授が実体験を告白!
また、72歳の元大学教授が、自身の体験を語ってくれた。
散歩中、原付バイクに乗った若者から突然『なんか用か?』と声をかけられた元教授。近辺でひったくりの被害があったと聞いていたため犯人かと思い、懲らしめてやろう、怖いおじさんがいると知らしめてやろうという気持ちから、怒鳴りつけ、思わず手を出してしまいもみあいに。駆けつけた警察官が仲裁に入ったものの、先に手を出したことから加害者扱いされてしまったという。
「『先生』『教授』と呼ばれていたのに普通のおじさんになっちゃった。普通のおじさんじゃないだろう…」と、元教授はショックを隠し切れない様子だった。
疎外感や孤立感、焦りが暴力の原因?
筑波大学教授で精神科医の斎藤環氏は、「こういう方はよくいると思うんですが、疎外感や孤立感がポイントだと思う。人間やっぱり、余裕とか成熟っていうのは社会的つながりがあってこそ。特に大学教授までされていた方は、退職するといっぺんにそういうものがなくなってしまう。先生と呼ばれて、ちやほやというか評価されていた人が普通のおじさん扱いされる、このギャップが分かっていても耐えられないという。孤立はしてませんけど、一種の疎外感が強いのは事実。もう1回、自分の居場所探しをしないといけないという焦りが怒りの沸点を下げてしまう」と解説。
また、疎外感や孤立感、焦りなど「不安に置かれている状況下は、怒りの準備状態でもある」と斎藤氏。
認知症が原因で暴力をふるってしまうケースも
一方で、認知症による症状が原因で暴力をふるってしまう高齢者もいるという。認知症には、物忘れなどの他に、幻視、妄想、興奮などの症状があるそうで、幻想や妄想などの症状は他者からは分かりづらいため、家族も認知症であることに気づかず、病院へ連れて行くのが遅れ暴力がエスカレートしてしまうのだとか。
また、暴言・暴力の加害者のほとんどが男性であることについて斎藤氏は、「女性より男性の方が社会的に孤立しやすい。男性は、人間関係のほとんどが仕事関係という人が多く、定年退職してしまうと社会から孤立してしまう」と語った。
孤立してしまうと、「家族に迷惑がかかる」「周囲の目が気になる」といった、犯罪行為に対するストッパーが無くなってしまい、このことが高齢者犯罪の急増の原因のひとつになっていると斎藤氏は指摘した。
高齢者による、暴言・暴力に対する対処法は?
高齢者から、罵倒や暴力を受けた際の対処法として斎藤氏は「なかなか、その場でどうするかというのは難しいですが」と前置きし、「怒りに怒りで返すとエスカレートするので、あえてそこは謙虚に返す」と語った。
また、「私の悪い所を教えてください」と、教えを乞うというのもひとつの対処法なのだとか。
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