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今回の御嶽山の噴火でよくわかったように、日本の指導部は国民の命というものを真剣には考えていない。当人たちはそれなりに考えているように思っているだけで、「言い訳」を探しているに過ぎない。その一つが温暖化である。これから多くの人が寒冷な気候で苦しむことなど「その時になったらその時だ」と思っている。
世界の気温はここ17年間、上昇が見られず、その間、温暖化学者やNHKは「温暖化が進んでいる」というウソを言い続けてきたが、一向に反省が見られない。未来は分からないが、すでに過去に事実と違うことを言ったことについて、その理由を釈明する必要がある。
17年というと、現在20歳の人は「温暖化」を経験していないことになり、現在40歳の人は人生のもっとも重要な時期に温暖化とは無関係の社会で生活をしていたことになる。でも、この20年は、温暖化対策、節電、節約、排出権取引、レジ袋追放、そして最後に熱中症と温暖化がウソなのにまるでそれが現実だったような仮想の社会で人生を送ってきた。
政治やマスコミがウソを言うのは、今回が初めてではないが、学者までがずっとウソを言い続けてきたことは学者の一人として本当にがっかりすることである。そしてその中でも「過去に経験したことがあるのに、あたかも未来のことのようにコンピュータを使う」というのがもっとも不誠実だろう。
先日の講演会で、地球が出来た時には大気の95%がCO2であったこと、現在が0.04%だから、これから100年後に予想されている0.05%というのはすでに地球が経験済みであるという話をしたら、ショックだった人がおられた。その人は論理的に考える人なので、自分が騙されていたことに衝撃を受けたのだ。
95%のものが、0.04%に減ったのだから、その途中に0.05%の時代を通ったことは誰でもわかる。単純計算すると現在より0.01%多い時代は今から39万年ほど前でその頃の地球の気温はわかっているし、現在とほとんど変わらずに氷期と間氷期を繰り返していた時期だ。だからまず、誠意ある学者なら、「地球のCO2は現在よりかなり多かったが、それが徐々に減ってきた。だから、CO2が増えたらどうなるかは、過去を調べるとわかる。現在のペースでCO2が増えたとしても100年で0.01%程度増えると予想されていて、過去の記録からは気温にはほとんど変化は見られない」とまずは言うべきだ。
次に、20世紀の初めから現在まで、CO2はずっと上がり続けているが、地球の平均気温は1940年から1980年にかけてと、1995年から2015年にかけてはやや低下している。つまり、CO2が上がっても気温の上昇が止まっている期間が20年、30年と続く理由を説明しなければならない。
つまり、科学は同じ現象の場合、過去の自然現象を説明することができる場合に限って未来を予測できる。当然といえば当然で、科学はある条件や仮定が同じなら、同じ結果にならなければ科学ではない。学者同士で議論している間の論文などはまだ科学ではない段階のものもあるが、社会に影響を及ぼすようなものを学者が発言する時には科学の段階になければならない。どうしても緊急な場合は「まだあやふやですが」という注釈が必要だ。
過去と現在の違いを求めれば「時間」の差がある。自然にCO2が変化するときには、0.01%がもっとも遅くて40万年ぐらいかかるが、人工的に増やすときには100年でも変化する。だから、もっとも良いのはCO2の変化が激しかった時があるので、その過去を調べること、次には速度が違う時の影響に絞って研究することだ。このことについては次回の「不誠実」にも書きたいと思う。
(平成26年9月27日)
武田邦彦
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