海外に居住する同胞が増えるようになり、同胞子弟が韓国の兵役義務に関してよくわからない状況で本国に入国して混乱するケースも増えている。韓国兵務庁は9月24日、東京・港区の韓国中央会館で在外同胞兵役行政説明会を行った。同月26日には大阪でも同様の説明会が開かれた。東京の説明会には、民団関係者ら40人が参加。兵務庁からは4人、駐日大使館からは3人が出席した。兵務庁担当者からは、兵務庁組織の紹介や在外同胞の兵役義務に関する説明が行われた。
兵務庁「制度を元に戻すことはない」
2012年に改正された韓国兵役法により、1994年1月1日以降に出生した在外同胞の韓国籍男性は、18歳から37歳までの間に通算韓国滞在期間が3年以上になれば、兵役義務を課せれる。この兵役法改正で94年以降の出生者は、韓国での長期滞在や営利活動を自由にしたければ、兵役義務を果たさなければならなくなった。
94年以前の出生者の場合は、これまで国外で出生、または6歳以前に韓国を出国した人などに付与されていた「在外国民2世」制度により、兵役が延期され、実質的に免除されてきた。韓国国内での長期滞在や営利活動にも制限がなかった。
| 兵役行政説明会(東京) | 9月24日には、東京で兵務庁による兵役行政説明会が開かれ、同庁入営動員局の禹鐘雲資源管理課長が説明を行った。
最近の兵役行政について、禹課長は「在外同胞も多くなり、兵務庁の業務量も増える傾向にある」と話した。また、兵務庁職員でも在外同胞の関連業務をしたことがない人も多く、同胞事情に精通した人が少ない。
そのため、法改正などを含めた兵役制度は在外公館を通じて文書で送るだけで在外同胞全体には十分に周知されていない。実際に何も知らない在外同胞が韓国に入国して不利益を受けるケースも多々あるという。
そして、2012年の法改正理由について禹課長は「海外に同胞が少なかった昔とは違い、海外に住む同胞が増えた。一方で韓国に入国する同胞も増えている。そのため、兵役行政で国内の人たちと在外同胞との公平性問題があって法改正が行われた」と説明した。国内の兵役対象者からの不満の声が大きな理由に挙げられていた。そして「同制度を元に戻したり、廃止したりすることは難しい」とも話した。
今回の法改正で94年以降の出生者は、母国修学で韓国の大学進学にしても、兵役義務を果たさない限り、韓国で継続して働いたり、生活したりすることができなくなった。このような事情について、在日同胞の多くは知らなかったり、関心がなかったりする。
都内で唯一の韓国系民族学校の東京韓国学校では、毎年80人の卒業生のうち60人ほどが韓国の大学に進学する。60人のうち半数が男性だ。
同校の担当者によると、駐在員などの子弟も多く、兵役に関する認識もあって9割ぐらいは軍隊に行っており、卒業生の多くは、韓日関係の仕事に就いている。兵役法改正による影響については、将来的には、軍隊に行くのが嫌で、韓国の大学に行かない学生も出てくるかもしれないという。
同校で韓国の兵役義務については、中等部の社会科授業で「国民の義務」の一つとして教える程度だ。学校で説明会をすることもない。日本の学校に通う在日同胞であれば、教わることすらないのが実情だ。また、日本で暮らしていれば、韓国のように生活文化として兵役の情報を得られることもなく、全くわからないというのが現実だ。
法改正の対象者である同高2年の朴旻雨さんは「兵役法改正は知らなかった」と話した。朴さんは、幼い頃に来日し、小学校と中学校は日本の学校に通った。将来は韓国の大学か日本の大学に進学して、金融関係の仕事に就くのが夢だ。
しかし、韓国で軍隊に行く必要が生じるならば、「韓国の大学に進学したいという気持ちもなくなる」と話した。 |