価値のない話

「夢と違うじゃねえかよお!」

「押しつけ」の押しつけがましさの話

 インターネットをしていると「うへぇ」となるワードに遭遇するときもある。そのひとつが「押し付けないでください!」だ。

 

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傾向と対策

 大体が自分と違う意見の相手に対してコメントするときに用いられる。類義語は「人それぞれ」であるが、言葉の破壊力が違う。

 

(用例1)

 記事:ベビーカーは満員電車に乗るべきではない。赤ん坊が危険だ。

 反応:自分の意見を押し付けないでください! 乗らなくちゃいけない人もいます!

(用例2)

 記事:女の子はやっぱり化粧をしたほうがかわいいよね。

 反応:自分の意見を押し付けないでください! 敏感肌の人もいるんですよ!

 

  この反応は政治的な話題やロジカルな空間ではほぼ目にしない。いわゆる日常の気遣いレベルの話題でよく見られる光景だ。もしブログでこの手のコメントをする人がやってきたら、まともに反論をしてはいけません。できればスルー推奨が望ましいでしょう。下手に反応を返すと、喜んで「反論」をコメントに投下したりネットストーカーになったりという危険があります。

 

言葉の背景の勝手な考察

 冷静に考えなくても、インターネットと言う不特定多数の言論空間で「押しつけ」という意識を持って文章を投下している人はいないだろう。誰が読んでいるかわからないのに「私のあなたに聞いてほしいの! 意見を聞いて! 聞いて!」と特定の人物に向かって言っているわけではない。

 

 とかくインターネットは画面の向こうのことが全て自分とリンクしていると思いがちである。不特定多数に向けられた言葉に対して「全て私のことを言っているんだ!」と勘違いしてしまってもおかしくはない。そこで自分と違う意見を見かけると「この人は私を攻撃している!」と思い込む。防衛本能で「押し付けないでください!」を発動させる。記事の執筆者からすると押し付けたつもりもないのにそんなコメントが来るとムッとする。「それはあなたの観測範囲のせいでしょう」と一見冷静なコメントを返す。反応があったことに対して、発言者は「やっぱりこの人は私をのけ者にしようとしている! 敵だ!」と思い込んでしまう。以下不毛なやり取りが続くと言うわけだ。

 

 インターネットにはいろんな情報がごろごろしている。赤もあれば青もあるし、黄色もあれば緑もある。ある程度の慣れがないと、全てを受け入れようとしてパンクしてしまう。このスキルを「スルー能力」とよく言うのだけれど、慣れない人は「この人の意見は聞かない!」という意味でコメントで表明をする。別にスルーすればいいだけの話だけれど、スルーするという選択肢を持たないために「反論」を行う。その反論の際一番使いやすいのが、「押し付けないでください!」というフレーズなんだって思っている。

 

 もちろん言論自体が個人を否定することはよっぽどのヘイトでない限り、そんなにあることでもない。炎上記事などもこの辺のグレーでやらかい部分を刺激するところがあるが、それを読んで「これは私のことを言っているな!」と思う思考もヘイト並に危険である。もっとタチが悪いのは「私は関係がないけど、私が声をあげないとこの意見に反対している人のためにならない!」という謎の正義感である。

 

 個人的観測だと、この台詞を使う人は実生活でも女性に多い気がする。女性は他者との共感性が男性より優れているから、良い感情以外に悪い感情も共有しようとしてこのようなことを言っている可能性が高い。相手と同じでないと、共感が出来ない。つまり「共感を自分のアイデンティティだと思いこんでいる人」と「自分の考えが侵害された」と一足飛びな発想をしやすい。

 

「押し付けないでください!」の二重性

 興味深いのは、「押し付けないでください!」という人がその反論を「押し付けてくる」ところだ。うるさいところで「うるさい!」と怒鳴る人が一番うるさい構造にそっくりで、おそらく本人に自覚は一切ない。何故なら、自分の正義が全ての状態なので、相手の主張に耳を貸す余裕がなくなっているからだ。そうなると、すべてはモンスターカスタマーと同じだ。自分の主張を相手が受け入れ謝罪するまで徹底的に「自分の正義」を主張し続ける。下手な相手の相手をしたら最後、ブログなら更新停止または閉鎖くらいまで追い詰められることになるだろう。

 

 ネットで発信をしていると、意見の合わない人にぶつかることはよくある。しかし、様々な意見があって世界は回っているし、意見を表明しているだけでは害はない。無駄に攻撃的なコメントを付けて回っている人を見ると、ネットと実生活と他人の思考と自分の思考を全て同一線上でとらえているのではないかと思う。ネットは用法容量を守って、自分に便利なように使いましょう。

 

 つまりこの記事も「人それぞれ」なんだけどね。そうじゃない人もたくさんいるけどこういうこともあり得るよねって。それだけ。