私は苦手なことが普通の人より多いという自負があるのですが、なかでも苦手なのが悩みを相談される類いのもので、だってあれでしょ、だいたいの人はもう答えが自分の中にあって、そして「やっぱりそうだよね」って安心したいわけだから、私は必死こいて「この人はなんと言われたがっているのか」を探らねばならず、それがたいへん疲れるので苦手なのです。
あとあれだ、明らかに相談する相手間違えてるだろっていう場合もありますしね。私に向かって「どうしたらモテますか?」って訊いてくる女の子とかね。知らん。知らんて。そんなのモテた経験のある人に訊いてよ。「えーだって寺地さん結婚してるじゃないですかー」ってね、結婚てモテる人から順にやるもんでもないじゃないですかー。私もかぐや姫みたいにワッと男性が集まってきた中から選びとって結婚したわけじゃないじゃないですかー。結婚って「モテ」というより「ご縁」の問題じゃないですかー。って無駄に語尾を伸ばしながら答えましたけどいまいちその女の子には伝わらんかったっぽいです。無念。
突然話が飛ぶようですが私は昔ビヤガーデンでバイトをしてました。そこには正社員の男性が三人おりました。うち二人はバイトの扱いがひどかったので鬼畜&鬼畜ってサイモン&ガーファンクルみたいに呼ばれていたのですが、もう一人はとても優しい人でした。見た目がホワイトアスパラガスみたいだったので以下ホパラと呼びます。
バイトは十人ぐらいいて、その中にミキちゃんというめちゃくちゃかわいい女の子がおりました。のちにミス○○大みたいなのに選ばれたと聞いております。
ある日閉店後に女子更衣室でひとりで着替えていたときに隣の男子更衣室からたぶん鬼畜&鬼畜の片割れとホパラさんとバイトの誰か数人らしき声が聞こえてきて、なにやら「ミキちゃんかわいい」みたいな話をして盛り上がってる様子。壁が薄くて丸聞こえだったのです。
ああそうだねかわいいよねと思いながら聞いているといきなりホパラさんが「俺は寺地さんのほうがかわいいと思う」と言ったので私はびっくりして鼻水を噴射しそうになりました。
ホパラさんの爆弾発言により壁の向こうは大恐慌をきたしており「えー!嘘!」「寺地て!」「ホパラさん、視力いくつ?」「ちょっと頭おかしくない?」みたいにものすごくワチャワチャしていました。
とりあえず私は壁をぶちやぶって頭おかしい発言をした奴を思うさま槍で突きたい、槍の人と渾名される程に容赦なく槍をふるいたい、ついでに「寺地て!」って言った奴も二回ぐらいは突く、と思いましたがグッと堪えてただひたすら壁の向こうのホパラさんに感謝することに専念しました。
たぶんホパラさんも冷静に見て私よりミキちゃんの外見のほうがかわいいのはわかっていたはずです。ミキちゃんは性格も良い子だったので、内面も私よりずっと優れていた。にもかかわらずホパラさんが私を「かわいいやつ」としてくれたのは、あれはひとえに「波長」の問題だったのだと思います。
私は当時人見知り気味でしたがホパラさんと話す時は不思議と緊張しなかったし、いつでも楽しかった。それはホパラさんもおそらく同じで、だから「かわいい」と認識してくれていたのでしょう。
結婚というのもやっぱりある程度波長の合う相手とするものだと思います。この「波長」というのはわりと厄介で、趣味や食物や性的嗜好が同じでもいまいち合わないという場合もありますし、波長が合っても相手が結婚制度に関心が無い場合ももありますし、私とホパラさんのように波長が合っても熱烈なロマンスが生まれなかった場合もありますし、私と夫のように抜群に波長が合う訳じゃないけどなんかヤッサモッサしながらそれなりに仲良く夫婦やってますという場合もありますし、とにかくモテ=既婚じゃないと思うんだよね、モテない=未婚ではないようにねっちゅうことを私は言いたかったわけですけども、その女の子は鬼畜&鬼畜のくだりから完全に生返事でした。全然伝わらんかったっぽいです。くそう、今度からは同じこと相談されても「○○ちゃんはかわいいから大丈夫だヨッ!」って適当に答えちゃうからな! 覚悟してろヨッ!