「家電の街」「パソコンの街」として知られるようになったアキバ(秋葉原電気街)は、これまで「家電やパソコンがほかよりも安く買える」ということを売りにした店舗が多く立ち並んでいた。だが、インターネット通販の普及を受け、アキバに安さを求める客が急速に減ってきている。スマートフォンやタブレットの普及などを受け、パソコンの需要が減少しているといった変化もある。その流れを受けて、アキバの一部店舗は「専門色ならではの強さ」を前面に押し出してネット通販との差異化を図り、ファンの支持を勝ち取っていた。

 アキバの変化にいち早く対応した専門店は、どのようなポイントが支持されているのだろうか。平日にもかかわらず多くの客でにぎわっている人気ショップを取材した。

3000種類のイヤホンから客に合った最適な1台を選び出す「e☆イヤホン」

 e☆イヤホン 秋葉原店は、圧倒的な品ぞろえで定評のあるイヤホン&ヘッドホン専門店だ。アキバを代表する人気ショップの1つに挙げられる同店だが、アキバに進出したのは2011年9月で、意外にもまだ3年しか経っていない。2014年7月には、フロア面積を約2倍に増床したうえで移転オープンを果たすなど、勢いが止まらない。

 店内には、日本国内に流通するほぼすべてのイヤホン&ヘッドホンが展示されており、その数は約3000種類にもおよぶ。店内の製品は、高級品も含めて自由に手に取って試聴でき、ユーザー目線の展示方法と評価が高い。2014年9月には、自分の耳型に合わせたイヤホンのカスタマイズ製作を請け負うカスタム専門店を併設し、一歩進んだニーズにも対応できるようになった。

e☆イヤホン 秋葉原店の店内に所狭しと陳列されるヘッドホン&イヤホン。約3000種類にものぼる商品は、すべて実際に触って試せる
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 同店の岡田卓也氏は、「接客を通じて顧客に最適な商品を提案していくのがモットー」と、何よりも接客を重視していると語る。実際に店内を見渡すと、来店客と積極的に会話しながら商品説明する店員の姿が目に付く。

 一般の量販店では、お目当ての商品をあらかじめ決めたうえで来店する顧客が大半だ。だが、イヤホンやヘッドホンは製品ごとの違いや特色がカタログやWebサイトの情報からでは分かりにくい。e☆イヤホンでは、専門知識や商品知識を持つ店員が時間をかけて接客し、約3000種類の膨大な商品のなかからその人に合った1台を提案しているという。安売りや客の回転を重視するいまの量販店では、商品知識を持たない店員も少なからず散見され、深いアドバイスは期待できないケースが多い。

 もちろん、充実した接客だけでなく、価格の安さも常に意識しているという。人気メーカーの売れ筋商品は、いずれもネット通販価格と比較してもそん色のない安さだった。岡田氏は「ネット通販価格に対抗できる価格を目指す」と語り、価格比較サイトの最安値と同等レベルの価格帯で商品を提供したいと自信をのぞかせる。しかも、在庫を豊富に用意しているため、通販と違ってすぐに商品を持ち帰れるのも魅力だ。

 e☆イヤホンは、ちょっとした修理を実施するクイック修理コーナーをフロア内の一角に設けているのも特徴だ。破損はメーカー保証の対象外になるため、メーカーに修理を依頼すると1万円近くかかるケースもある。だが、e☆イヤホンならば店内で修理が可能なうえ、イヤホンケーブルの断線修理は3000円〜と、費用も抑えられる。注目したいのが、e☆イヤホンで購入した商品だけでなく、他店で購入したものでも分け隔てなく修理するというのだ。

店内に設けられたクイック修理コーナー。イヤホンケーブルの断線などの故障ならば、専門スタッフがその場で修理する。メーカー修理と比べて修理代金が安く済むのと、すぐに対応してくれるのが魅力だ
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 販売だけでなく、細やかなアフターケアを提供する点もe☆イヤホンの特色といえる。量販店では難しい小回りのよいサービスが専門店ならではの強みといえよう。