御嶽山噴火:笑顔、情熱帰らない 通夜に仲間ら200人

毎日新聞 2014年09月30日 23時08分(最終更新 09月30日 23時16分)

 御嶽山の噴火から4日目の30日、死亡が確認された登山者の遺族らは、沈痛の面持ちで「地獄の山」から戻ったひつぎと対面した。失われた明るい笑顔、仕事への熱い情熱の大きさに、仲間や同僚は言葉を失い「何もしてやれなかった」と悔やんだ。

 ◇愛されキャラに別れ 名古屋の会社員、浅井さん

 名古屋市中村区の会社員、浅井佑介さん(23)の通夜が30日夜、同区内の斎場で営まれた。「山にはちょくちょく行っているとは聞いていたけど。どうして」。同僚や友人たちは、浅井さんの若すぎる死を悼んだ。

 「死が受け止められない」。通夜の後、報道陣の取材に応じたいとこの会社員、後藤尚弘さん(40)は声を落とした。

 事故当日、浅井さんは高校時代の友人で登山仲間の2人と出かけた。御嶽山は小学校の時に家族と数回登ったことがある山だった。無料通信アプリ「LINE(ライン)」で母親に写真が送られてきたのは、27日午前10時ごろ。登山道で撮った写真だった。その約2時間後、山は噴火した。

 事故後、家族に警察から連絡があった。目撃者の話から、山頂の山小屋付近で噴石が右の肩の後ろに当たった。山小屋に逃げ込んだが、外傷性ショック死で息を引き取ったのだという。2人の友人の安否は今も不明だ。

 中学時代の親友で会社員の井川公輔さん(23)は「あいつが巻き込まれるなんて」と信じられない様子で話した。浅井さんは中学時代、ラグビー部で活躍。「体が大きかったから、後ろの席だと黒板が見えなかった」という。現在は名古屋市内のインターネット関連会社に勤め「愛されキャラで、周囲から頼りにされていた」(職場の同僚男性)という。今春には正社員になったばかりだった。

 「無職でまともな生活をしていなかった俺に、自分の職場に来いと言ってくれた」。別の会社を見つけたが、その心意気に、井川さんは今も感謝しているという。

 通夜には親族や友人、会社関係者など約200人が参列したという。高校時代の卒業アルバムの写真が遺影に掲げられた。【大野友嘉子、山本佳孝、三上剛輝】

 ◇同僚失い「力出ない」富士通テン

 御嶽山の噴火で社員2人が死亡した富士通グループの「富士通テン」は30日、神戸市兵庫区の本社で記者会見を開いた。上司や同僚ら3人が「2人を失ったのは大きな損失だ」と肩を落とした。

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