2014年9月30日(火)

部下を大きくする「目標設定」と「動機づけ」

PRESIDENT 2014年7月14日号

著者
横田 雅俊 よこた・まさとし
カーナープロダクト代表取締役

横田 雅俊

長野県生まれ。設計士として活躍後、外資系ISO審査機関にて営業職を経験。最年少、最短、最高記録を更新し、世界8カ国2300人のトップセールスになる。営業に特化したコンサルティング・トレーニングファームとしてカーナープロダクト設立。近著に『1000人のトップセールスに学ぶ「売れ続ける会社」の営業法則』、『営業は感情移入』。

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カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊 構成=村上 敬
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なぜ部下が顧客に振り回されるのか

上司と部下は、どうしてわかり合えないのか。「『誰かに認められたい』が部下のモチベーション」(http://president.jp/articles/-/12819)で、上司層と部下層計600人を対象にしたアンケート調査を用いて分析をしました。上司世代は仕事に自己実現や自己成長を望み、部下世代はまわりから承認されることを仕事に求めていました。こうした職業観の違いが、上司と部下の間に溝をつくる一因だったわけです。

両者の職業観の違いは、さまざまな弊害を引き起こしているのです。

典型的なのは、お客様に振り回される部下です。お客様はこちらの都合などおかまいなしに、「あれもやってくれ」「これも頼む」と、さまざまな要望をぶつけてくるものです。本来ならば、その中から優先度の高いものを選び、可能な範囲で対応するべきでしょう。しかし、お客様から嫌われたくない部下世代は、言いなりになって何でも引き受けてしまう。その結果パンクして、結局はお客様との約束を果たせず迷惑をかけます。

部下が承認を求める対象は、お客様だけではありません。部下は上司からも認められ、自分の居場所を確保したいと考えています。上司にとって歓迎すべきことに思えますが、じつはこれにも弊害があります。たとえば自社商品が複数ある場合、上司から重点商品を優先して販売するよう指示を受けたとします。しかし多くの場合、お客様に合わせて提案を変えるのは営業の役割であり、現場で臨機応変に判断を下すべきです。

ところが「上司に認められたい」と考えている部下は、自分の判断がなく、ひたすら上司の指示どおりに動こうとします。顧客価値を前提に考えることができず、結果的に顧客の離反といった悪影響を及ぼします。まわりからの承認がモチベーションになるという部下世代の職業観は、このように「お客様に振り回される」「自分がない」という欠点に容易に転換します。これを放置すれば、現場が混乱するだけでなく、本人の成長も止まります。

こうした状況に対して、「最近の若い人のことはよくわからない」と早々とあきらめている上司もいます。しかし、それでは上司としてのミッションを果たしたことにはなりません。人材育成は、上司の重要な仕事の一つです。簡単にわかり合えないからといって突き放すのではなく、粘り強く、部下の職業観を引き上げることが大切です。

では、どうすれば部下の目線を一段、二段と引き上げられるのか。今回は、「目標」と「動機」という切り口で論じてみたいと思います。

まず「目標」です。部下世代はなぜ周囲に流されやすく、自分というものが希薄なのか。その一因は、目指すべきゴール、つまり目標が定まっていないことにあります。登山をイメージしてください。どの山に登るのかを決めず、とりあえず出発したとしたらどうなるでしょうか。おそらく周囲の地形を見ながら、なんとなく上を目指しながら歩くことになるでしょう。仕事で目標のない状態は、これと同じです。行き当たりばったりで、その都度まわりを見て態度を決めるというやり方になってしまいます。

もちろんどの会社も、何らかの目標は設定しています。たとえば営業職なら、普通は一人一人に売り上げ目標が課されています。他の職種でも、定期的に面談をしてキャリア目標を設定する会社が少なくありません。いずれにしても目標をまったく設定されていない人はいないはずです。

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