【ロンドン=黄田和宏】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は30日、加盟国のアイルランドが米アップルに適用してきた法人税の優遇措置について、公正な競争条件を整えるEUの規定に違反するとの見解を明らかにした。アイルランド政府が法人税を極端に低くして企業を誘致する政策を退ける判断は、国際的な企業の租税回避を巡る論議に影響を与えそうだ。
欧州委は同日、ルクセンブルクがイタリアの自動車大手フィアットに適用している税制も規定違反との見解を示した。
アップルに関して欧州委は同日、アルムニア副委員長が6月にアイルランド政府に送った書簡の内容を公表した。この中で欧州委は1991年と07年にアイルランド政府とアップルが税負担を軽くするために合意した取り決めについて「(EU規定が認めない)『国の補助』にあたる」との暫定的な判断を示し、今回の発表で追認した。
EUでは欧州単一市場内の競争条件を一定に保つため、欧州委が不公平な状況が生まれないように政策を点検している。この中で税逃れの問題を取りあげ、6月にアイルランドなどの税制について調査を始めていた。
アイルランドの法人税率は12.5%だが、欧州委によると、アップルは子会社を経由した取引や優遇策を使うことにより実質的に2%しか税金を負担していない。アップルはアイルランドの子会社が製造業者から製品を仕入れて欧州やアジアなどの拠点に売った形を取り、米国以外の利益を税率の低いアイルランドに集中させてきた。欧州委はこうした手法が税負担の過剰な軽減を招いたと問題視している。
欧州委は調査を続ける。違反と最終決定すればアップルは追加の税金を課される可能性がある。アイルランド財務省は29日、「EUの規則に違反していないと確信している」との声明を発表し、欧州委に反論書を出した。アップルも「特別な待遇は受けていない」との見解を示している。
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