(2014年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
香港市街で行われている大規模なデモは、中国政府にとって、北京の天安門広場とその周辺で民主化運動を鎮圧した1989年以降で最大の政治的難局になっている。
今回の香港のデモと、25年前の北京のデモとの間には不気味な類似点があり、中国共産党指導部は大いに動揺しているに違いない。
天安門と香港のデモの類似点と相違点
まず、今回もデモを主導しているのは民主的な改革を求める学生たちだ。また、今回も中央政府当局は事態を掌握できていないため、弾圧か屈辱的な譲歩かのどちらかを選ばねばならない状況に直面する恐れがある。
さらに、今回もまた、究極的には中国政府における共産党の権能と権限が問われることになっている。
ただ、2014年の香港と1989年の北京との間には大きな違いもある。まず、この25年の間に中国はとても豊かで強い国になった。
また中国政府当局は、「中環(セントラル)占拠」運動の旗印の下で始まった今回のデモが、1989年の中国の学生たちによる抗議行動よりも「オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)」という尻すぼみになった運動の方に似ることを期待することだろう。
そして中国当局には――選ぶ道次第ではあるが――1989年当時よりも裁量の余地がある。なぜなら香港は首都ではなく、英国から中国への香港返還を支えた「一国二制度」という統治方式により特別な地位を付与されている地方都市だからだ。
香港は民主主義に向けた次の一歩を踏み出せるか?
この統治方式の下で香港は、出版の自由と司法の独立を謳歌し続けている。どちらも中国本土には存在しない自由だ。そのため今は、香港が民主主義に向けた次の一歩を踏み出し、北京の政府による候補者の事前審査なしで行政長官を選ぶことができるようになるか否かが問題になっている。
もしここで中国共産党が聡明さを発揮するなら、香港が民主的な改革の試験台になるのを容認することだろう。