御嶽山噴火:命奪った大量の噴石 検視の医師が示唆
毎日新聞 2014年09月30日 22時53分(最終更新 09月30日 23時26分)
御嶽山の噴火で、搬送された心肺停止の登山者の検視に立ち会う長野県木曽医師会会長の奥原佐(たすく)医師(65)が30日、毎日新聞の取材に応じ、「今も山に残されている人たちの身元が早く分かるようにしたいが、火山活動で捜索が思うように進まないのがつらい」と語った。
奥原さんは山頂から約30キロ離れた同県木祖村で診療所を営む。医師会に協力の依頼が入ったのは噴火翌日の28日朝。11ある診療所の医師全員が待機し、同日午後から木曽町にある旧上田小学校体育館に運び込まれた心肺停止状態の登山者の検視に交代で立ち会っている。
30日までに死亡を確認したのは12人。医師は死因などを記した検案書を作る。奥原さんは「(死因は)噴石が直撃したことによる(外傷性の)ショック死がほとんどではないか」と説明する。火山ガスによる中毒症状は確認されていないという。下山した登山者らの証言のように、大量の噴石が命を奪った可能性がある。
一様に登山者を覆う火山灰は県警の担当者たちがきれいに取り払っている。リュックサックなど所持品がない登山者の身元確認は難しく、1人あたり3時間近くかかる例もあった。8人が搬送された29日の作業は深夜にまで及んだ。
奥原さんは、1979年に御嶽山が噴火した際、今回の噴火で災害対策医療の拠点となっている県立木曽病院に勤務していた。「前回はけが人も出なかった。ここまでの災害は初めてだ」と言う。
開業医たちが待機する間はそれぞれの診療所の診察は止まる。この日、捜索は中断されたが奥原さんは診療の合間に体育館を訪れた。「地域の患者さんもいる。医師の数が少なく、長期化すると大変だが、可能な限り協力したい」【八田浩輔】