August 6, 2010
コウモリの間に致死性の病気の感染が拡大しており、このまま対策を打たなければ北米で最もよく見られる種のコウモリが20年以内にアメリカ北東部で地域絶滅する恐れがあるとする最新の研究が発表された。希少なインディアナホオヒゲコウモリなど、ほかの種のコウモリも同様に絶滅の可能性があるという。
2007年にニューヨーク州の洞窟で発見されたこの病気は、低温を好む白い真菌(カビ)に感染したコウモリの鼻口部、翼、耳が白くなることから「白い鼻症候群(White-nose syndrome)」と呼ばれている。
発症したコウモリは落ち着きがなくなり冬眠できなくなる。眠れないために蓄えた脂肪を燃焼しつくし、その結果死に至る。感染した冬眠コロニーでは年間75%のコウモリが死ぬという信じがたい致死率だという。
これまでに、冬眠するコウモリ9種に感染が確認されており、その中には広い範囲に生息し研究も進んでいるトビイロホオヒゲコウモリが含まれている。
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2007年にニューヨーク州の洞窟で発見されたこの病気は、低温を好む白い真菌(カビ)に感染したコウモリの鼻口部、翼、耳が白くなることから「白い鼻症候群(White-nose syndrome)」と呼ばれている。
発症したコウモリは落ち着きがなくなり冬眠できなくなる。眠れないために蓄えた脂肪を燃焼しつくし、その結果死に至る。感染した冬眠コロニーでは年間75%のコウモリが死ぬという信じがたい致死率だという。
これまでに、冬眠するコウモリ9種に感染が確認されており、その中には広い範囲に生息し研究も進んでいるトビイロホオヒゲコウモリが含まれている。
生物学者ウィニフレッド・フリック氏のチームは、過去30年間にアメリカの5つの州に生息する約20カ所の冬眠コロニーで収集したコウモリの個体数データを集め、個体群モデルに基づいて分析を行った。
その結果、白い鼻症候群が北アメリカで確認された頃にトビイロホオヒゲコウモリの個体数が激減していたことが判明した。おそらくヨーロッパまたは他の遠隔地からもたらされたと考えられる。
ボストン大学とカリフォルニア大学サンタクルーズ校で研究を行うフリック氏は、「現在の致死率が続けば、北アメリカに生息するトビイロホオヒゲコウモリは、今後16年から20年のうちにほとんどいなくなってしまうだろう」と話す。
感染はアメリカ北東部以外にも急速に拡大しているようだと同氏は指摘する。2010年には南はテネシー州、西はオクラホマ州に及ぶ地域で感染したコウモリが見つかっており、北はカナダのケベック州とオンタリオ州にも感染が拡大している。「急速にアメリカ大陸全体の問題になりつつある。驚いてはいないが途方にくれている」。
感染地域が拡大するにつれて、被害を受けるコウモリの種も増えていく。「調査対象にトビイロホオヒゲコウモリを選んだのは、データが充実しており、非常に一般的で生息数の多い種だからだ。しかし、このカビはコウモリの冬眠コロニーで成長するため、ほかの冬眠するコウモリも同様の危機に直面するはずだ。その中にはインディアナホオヒゲコウモリなど、すでに絶滅の危機に瀕している種も含まれている」とフリック氏は説明する。
現在、白い鼻症候群の治療法はなく、研究が進められている。
この状況はコウモリにとって非常に厳しいが、人間にとっても懸念材料だとフリック氏は話す。なぜなら、農作物に被害を与える虫や感染症を拡大させる蚊などの害虫の多くをコウモリが食べてくれるからだ。「この病気に感染する種類のコウモリはすべて昆虫を捕食する。1匹で一晩に自分の体重と同じ量の昆虫を食べることができる」。
この研究は「Science」誌の2010年8月6日号に掲載されている。
Photograph courtesy Alan Hicks