世界トップレベルにあるフランスの数学

フランスの数学はトップレベルです。研究者1,000人が活動し、内外の賞を多数受賞、パリ数理科学財団(FSMP)を通じて世界で最も数学者が集中しています。同財団は数学にフランス色を与える意志と持ち前の手腕を発揮して、外国からエリートを呼び込むためのプログラムに取り組み、資金を調達しているほか、将来の数学者を教育、研究を最高水準に引き上げる努力を続けています。

JPEG - 148.9 kb
パリ数理科学財団の創 立日
© UPMC - Pierre Kitmacher

すべての学問の最も重要な基礎であり、普遍的な言語である数学は、最も抽象的な概念化や最も実際的な実現化を可能にします。数学は至る所に偏在し、私たちの日常生活の一部となっています。数学は経済学や人文学、産業、さらに応用分野では地震学、海洋学、今では不可欠になった暗号理論(例えば、インターネットで購入する商品をクレジットカードで安全に支払うため)など、あらゆる分野で利用されています。「数学は生物学分野でも著しく発達し、[…]生物学における数理モデル化は、未来の生物学研究において避けて通ることのできない要素だと思われます」とFSMP専務理事を務めるピエール・エ・マリー・キュリー大学のジャン=イヴ・シュマン教授は説明します。

パリ数理科学財団は正会員500人を含む科学者1,000人が加入し、パリの9つの研究所とともに、純粋数学および応用数学の全分野、ならびに基礎情報科学に関心を持つ数学者を育成する世界最大の場となっています。「理論と実践的応用を完全に分離する壁はありません」とジャン=イヴ・シュマンは指摘します。FSMPは2007年9月、パリの国および世界レベルの数学研究所を助成すべく創設され、国立科学研究センター(CNRS)、高等師範学校、ピエール・エ・マリー・キュリー大学、パリ=ディドロ大学、パリ=ドフィーヌ大学、コレージュ・ド・フランス、国立情報科学・制御工学研究所を結ぶネットワークを形成します。

「私たちは主に国際的な活動を進めています。例えば、大規模な科学プロジェクトを持つ、世界的に著名な研究者を対象に正教授ポストを創設しました。正教授は1年間、パリの数学者とともに優秀な研究の中核を担います」とジャン=イヴ・シュマンは具体例を挙げます。世界的な数学者がパリに2、3カ月間滞在できるようにする招へい制度もあります。

さらにポスドク・プログラムによって、外国の博士研究員(ポスドク)を毎年15人受け入れています。「このプログラムは国際手続き上の便宜も図られ、外国の優秀な研究者を呼び込んでいます。これは大きな成功です」とジャン=イヴ・シュマンは明らかにします。

パリ数理科学財団は、数学への関心を養うことも使命の一つに掲げています。FSMPは外国人学生を対象に修士・博士奨学金プログラム「パリ数理科学大学院」の創設を計画しています。「2010年の新学期に修士課程(Master 1)の学生20人を受け入れることが目標です」とジャン=イヴ・シュマンは語ります。FSMPは地方の数学者がアンリ・ポワンカレ研究所で講義を受けられるように滞在費用も出しています。「私たちは大企業と全国規模の計画を進めています。国やパリ市から多額の補助金を受けていますが、民間資金を求めて積極的に運動もしています。というのも、私たちのプログラムの展開には費用がかかるので、何としてでも新たな資金調達が必要だからです」とジャン=イヴ・シュマンは指摘します。実際に財団は、他国の大学から引き合いがあったオーストラリアの若い天才数学者を招へいするため、即時に予算を捻出しました。さらに極めて優秀なチュニジア人学生1人、見事な成績を修めた中国人修士学生4人およびベトナム人学生1人も、財団の働きかけでフランスに来ました。

フランスはフィールズ賞の受賞者数でアメリカに次いで世界2位です。同賞は40歳以下の研究者を対象とする最も権威ある数学賞です。数学のノーベル賞ともいえるアーベル賞は2003年、最初の受賞者としてフランス人数学者のジャン=ピエール・セールに授与されました。そして今年、ロシア出身のフランス人数学者、高等科学研究所のミハイル・グロモフ教授が受賞しました。幾何学への革命的な貢献が受賞理由です。第5回ヨーロッパ数学会議が2008年7月にアムステルダムで開催され、フランスの数学の優秀さが称えられました。その一例として、パリ高等師範学校のロール・サン=レイモン教授が、赤道地帯の複雑な気候現象の理解に数学を応用した業績に対して褒賞を受けました。パリ=ディドロ大学のジョスラン・ガルニエ教授は、数学を地震学に応用してカリフォルニアの地質図を作図した業績が認められ、同じく褒賞を受けました。

ジャック=ルイ・リオン研究所のピエール=アルノー・ラヴィアールCNRS主任研究員は2009年、ヨーロッパ科学アカデミーから権威あるブレーズ・パスカル賞を受賞しました。数理モデル化ならびに物理学的・力学的問題のデジタル近似の分野における最も重要な貢献が認められました。クレイ研究賞の授賞式が2009年5月4日と5日にアメリカのハーヴァート大学で行われ、フランス人数学者のジャン=ルー・ヴァルズピュルジェCNRS主任研究員に賞が授与されました。p進群の調和解析における業績、なかでも移送の問題と基礎補題に対する貢献が受賞理由です。「フランスの数学は極めて高いレベルにあります。私たちはこの高水準を大学で守っている」ことをジャン=イヴ・シュマンは認めています。

関連ホームページ
- パリ数理科学財団 (Fondation Sciences Mathématiques de Paris)

最終更新日 29/01/2010

このページのトップへ戻る