(英エコノミスト誌 2014年9月27日号)
巨大な新運河は中国の深刻な水不足を解決しない。
間もなく、長江から北へ首都・北京まで続く全長1200キロの運河への水門が開かれ、中国屈指の土木プロジェクトの中核要素が完成する。
新たな水路は、世界最大の引水構想の一部に過ぎない。これまでに運河建設と、運河に水を送る中国中部の貯水地拡張への道を開くために、30万人以上の人が住まいを追われた。
だが、政府は急いでおり、こうした住民の苦情を気にも留めてこなかった。
深刻な水不足、運河開通も一時しのぎ
中国の指導者たちは、すでに何百億ドルもの資金を投じた「南水北調」プロジェクトは、国の発展と安定を脅かす水問題を解決するために極めて重要だと考えている。北京周辺の穀倉地帯では、1人当たりの水の量がニジェールやエリトリアといった極めて乾燥した国々と同程度しかない。
水の過剰使用で数千もの川が消滅した。地下水面が低下し、川が干上がるにつれて、手に入る水の量が急激に減っている。残っているわずかな水は多くの場合、汚染がひどく、工業用水にさえ使えない。
世界銀行は、中国の水危機は主に健康被害のために、中国に国内総生産(GDP)比2%以上のコストをもたらしていると述べている。このため北京に新たに水が供給されることは、政府関係者に大きな安心を与える。実際、水不足があまりに深刻なため、過去に首都移転のようなドラスチックな解決策を提案した人もいたくらいだ。
だが、中国の水問題は今後も解決されないままだ。新たな運河は引水計画の2本目の水路だ。中国東部で昨年水門が開けられた1本目の運河は、中国南部から1400年前に建設された京杭大運河に沿って北部の平野へ水を運ぶ。水の需要が急増し続け、汚染が蔓延したままの状況では、どちらの運河も一時的な暫定措置にしかならないだろう。