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 すっかりさび付いてしまった歯車が、やっと少しずつかみ合い始めた感がある。国連総会が開かれたニューヨークを舞台にした日韓の政治の言動は、そんな思いを抱かせた。

 韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相は、おそらくこれまででもっとも穏やかな表情で岸田外相と握手した。

 両首脳の演説も印象的だった。朴槿恵(パククネ)大統領が「慰安婦」という言葉を使わずに、戦時の女性への性暴力問題を取り上げると、安倍首相は「日本は紛争下での(女性に対する)性的暴力をなくすため、国際社会の先頭に立つ」と呼応した。

 このきっかけを日韓両国は大切に育てていかねばならない。そのためには互いに無用な刺激をしないことが求められる。

 安倍政権の発足に続き、韓国で朴政権が誕生したのは約1年半前のこと。新政権同士の関係は空回りを続けた。

 双方ともこれまで自国の「世論」を気にして、外交の柔軟さを欠いていた。だが、国交正常化50年となる来年が迫るなか、疎遠な政治の関係をこのまま放置していいのか、という危機感が背中を押している。

 朴大統領は、これまで歴史認識問題に熱心とはいえなかった安倍政権に強い警戒心を抱いてきた。政権発足以来、対日強硬論を唱えた尹外相の存在も大きかった。

 だが、政権内の権力構造の変化にともない、最近では経済分野など外交当局以外の部署から多様な日本情報が入ってくるようになった。尹外相の発言力は弱まり、大統領も軟化を始めたようだ。

 日本も「対話のドアはオープン」(安倍首相)と言うだけで中韓の首脳をドアに近づける努力は十分ではなかった。

 日韓の外務当局間で続いている局長級協議の主議題は慰安婦問題である。歴史認識がからむ問題の解決には政治指導者の決断が欠かせない。

 だからこそ、首脳会談を始めるべきだ。トップ同士の対話は重くのしかかった懸案を改善する役割を当然担っている。

 関係改善に向けた始動は遅きに失したが、前を向いて歩みを進めるしかない。

 両首脳がともに出席する年内の国際会議は、11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)などいくつかある。これらの機会を上手に使い、国交半世紀の節目をどう迎えるか、思い描くイメージを伝えあうべきだ。

 隣国の首脳同士が行き来しあえるという本来の関係を、早く取り戻さなければならない。