ことしの7月までに放送した「あさイチ」の中で、特に反響が多かった「スゴ技Q フライパンでおいしい生活 焼きの極意」(2014年1月28日放送)と、「スゴ技Q 知らなきゃソン!圧力鍋使いこなし術」(2014年4月30日放送)をドッキング。調理器具の技スペシャルと題してお伝えしました。
※「スゴ技Q フライパンでおいしい生活 焼きの極意」(2014年1月28日放送)
問い合わせ&ホームページ情報から抜粋
調理科学の達人、佐藤秀美さんが勧める牛ステーキ肉の焼き方は、焼き上がったときに肉の中心温度が65度に達しない程度にとどめる「65度焼き」です。肉は、コラーゲンの膜が筋繊維を束ねる構造をしているため、65度を超えるとコラーゲンの膜が縮み、肉汁を絞り出してしまいます。これが肉がかたくなる原因です。そこで、焼き上がりの中心温度を65度に達しない程度にとどめることで、肉汁の流出を防いでジューシーに仕上がります。
でも、いちいち中心温度を測りながら焼くのは、大変です。そこで目安となるのが、「肉汁」です。肉の表面に肉汁が自然に浮かび上がってきたら裏返し、反対側の表面にも肉汁が出て来たら加熱終了の合図です。そこでフライパンから出しておよそ5分おき、余熱を加えれば、65度焼きのできあがりです。
薄切り肉は火が入りやすく、肉汁が浮かび上がってきたときに裏返しても、すでに中心の温度が65度を超えて、かたくなってしまいがちです。また、表面に焼き色がつくまで焼いても、同様にかたくなりがちです。そこで佐藤さんが勧めるのは、アミノ酸を含む調味料と糖を含む調味料で作った「たれ」をつけてから、肉を焼く方法です。肉に焼き色がつくのは、肉に含まれるアミノ酸と糖が反応する、「メイラード反応」によるもの。そこで、アミノ酸と糖の濃度が濃いたれをからめておくと、肉の中心温度が65度になる前にメイラード反応がおきます。そのタイミングで肉を裏返したり、フライパンから取り出したりすれば、やわらかく焼き上げることができます。また、肉をやわらかくする働きがある「有機酸」を含んだ酢やりんご、みかんの果汁などをたれに加えるのも、オススメです。
佐藤秀美さん(放送大学非常勤講師・学術博士[食物学])
フランス料理店のオーナーシェフ、笹川幸治さんに教わったのは、白身魚の切り身を「皮はパリッと、身はジューシー」に焼く「ポワレ」という調理法です。ポイントは、火にかける前に皮を下にした魚を入れること。そして、強火にかけて皮が丸まってきても触らず、油が水分によってパチパチと音をたて始めたら、ヘラで身のほうから軽く押して皮を伸ばすこと。さらに、その後、すぐにふたをして、弱火で蒸し焼きにすることで。ふたをすると、魚から出た水分が蒸気になってフライパンの中に充満します。この水分と、蒸気が100度以下の物体に接して水に戻るときに出る熱で、身の部分がふっくらジューシーに焼き上がります。一方、フライパンと接した皮はパリッと仕上がります。
まるごとの魚を焼く場合の笹川さんオススメの方法は、「油のかけ焼き」。このときは、水分が出て油が音を立て始めてもふたはせず、熱くなった油をかけながら、両面5分ずつ焼くのがポイントです。
笹川幸治さん(フランス料理店オーナーシェフ)
料理研究家の村田裕子さんに、冷凍した豚の薄切り肉をおいしく調理する方法を教わりました。まず大事なのが、冷凍のしかたです。買って来たトレーの形のままラップにのせ、厚さを均等にして空気が入らないようにしっかりと包みます。
この冷凍法について、東京海洋大学大学院教授の鈴木徹さんに聞いたところ、肉が重なって表面積が小さくなった分、乾燥しにくくなるため、1枚ずつ冷凍するよりもオススメだということでした。
村田さんは、冷凍した肉は、凍ったまま調理します。酒をかけ、フライパンにふたをして蒸し焼きにしたあと、ほぐして味つけして焼く「もやしと豚肉のしょうが焼き」。そして、凍ったかたまりのまま作る2品、「豚肉とキャベツの梅風味蒸し焼き」と「ミルフィーユカツ」を紹介しました。
【材料・2人分】
・豚薄切り肉(冷凍)・・・200グラム
・サラダ油・・・大さじ1
・酒・・・大さじ1
・しょうが(すりおろす)・・・大さじ2分の1
・砂糖・・・小さじ2
・しょうゆ・・・大さじ2
・もやし・・・2分の1袋
・塩、こしょう・・・各少々
【作り方】
【材料・2人分】
・豚薄切り肉(冷凍)・・・200グラム
・キャベツ(冷凍)・・・4枚分
・酒・・・大さじ2
・ごま油・・・大さじ1
・梅干し・・・3コ
・みりん・・・大さじ3
【作り方】
【材料・2人分】
・豚薄切り肉(冷凍)・・・200グラム
・溶き卵・・・2分の1コ分
・小麦粉・・・大さじ1
・塩、こしょう・・・各少々
・パン粉・・・適量
・サラダ油・・・カップ2分の1
【作り方】
村田裕子さん(料理研究家)
鈴木徹さん(東京海洋大学大学院 食品生産科学部門 教授)
料理研究家でブロガーのヤミーさんは、これまで250種類以上のフライパンレシピを紹介してきました。なかでも意外なのがスイーツです。オススメの「ベイクドチーズケーキ」は、生地をよく混ぜ、サラダ油をひいたフライパンに流し込んだら、布巾でくるんだふたをして弱火で30分間蒸し焼きにするだけ(このとき、布巾が火にふれないよう、くれぐれも注意してください)。そのまま冷めるまでおいたら、できあがりです。ほかにも、フライパンで作る「リッチチョコケーキ」と「いちごのクラフティ」をスタジオで紹介しました。
【材料・直径20センチのフライパンの分量】
・クリームチーズ・・・200グラム
・バター・・・30グラム
・グラニュー糖・・・カップ2分の1
・ヨーグルト(無糖)・・・カップ2分の1
・卵・・・1コ
・薄力粉・・・大さじ3
【作り方】
ヤミーさん(料理研究家・ブロガー)
家庭で重宝なフッ素樹脂加工のフライパンですが、街でアンケートをとった結果、およそ7割の人が、1年以内に焦げ付くようになると答えました。そこで、フッ素樹脂加工のフライパンを長もちさせる方法を、調理器具専門店の飯田結太さんに紹介してもらいました。まず、空だきはNG。フッ素樹脂加工の耐熱温度は、およそ260度ですが、強火で加熱すると、およそ1分で260度を超えてしまいます。飯田さんによると、調理前のフライパンの予熱は、油をひいて中火で30秒から1分程度がよいとのこと。また、調理したあと、フライパンが熱いうちに水につけたり、ぬれた紙で拭いたりすると、金属とフッ素樹脂の膨張率の違いによって境目に力がかかり、加工がはがれる可能性があります。汚れが気になるときは、湯を張って粗熱がとれてから台所洗剤で洗うのが、飯田さんのオススメです。洗うときは、研磨粒子が入っていないスポンジをつかうと、より長もちします。
飯田結太さん(調理器具専門店 専務)
※「スゴ技Q 知らなきゃソン!圧力鍋使いこなし術」(2014年4月30日放送)問い合わせ&ホームページ情報から抜粋
圧力鍋料理の定番といえば「豚の角煮」。加圧のしかたによっては、赤身がパサパサになってしまうこともあります。そこで、ふっくらジューシーに仕上げるコツを料理研究家の枝元なほみさんに教わりました。
ポイントは、下ゆでのときのみ加圧して、調味料を加えてからは加圧せずに落としぶたでコトコトと煮ること。肉の赤身の部分は、コラーゲンの膜が筋繊維を束ねた構造をしており、加熱するとコラーゲンは、分解されます。圧力鍋は加熱温度が高いため、普通の鍋の場合よりもコラーゲンが早く分解され、筋繊維が調味料の塩分や糖分にさらされます。すると、浸透圧によって筋繊維から水分が抜けだして、パサつく原因になります。そのため、赤身がパサパサしていない、ジューシーな角煮に仕上げるためには、調味料を入れたあとで加圧せず、落としぶたをして煮るのがオススメ。ジューシーさよりもやわらかさを重視する場合は、2度加圧が有効です。
【材料・4~6人分】
・豚バラ肉(塊)・・・1キログラム
・しょうが(薄切り)・・・1~2枚
・ねぎ(青い部分)・・・1~2本分
・米・・・大さじ1と2分の1
・豚肉のゆで汁(脂を除く)・・・カップ1
・酒・・・カップ1
・砂糖・・・大さじ3
・しょうゆ・・・大さじ4
【作り方】
枝元なほみさん(料理研究家)
株式会社 山電
街で、圧力鍋についてのお悩みを尋ねたところ、多かったのが「野菜が煮崩れてしまうこと」でした。
そこで、日本料理店総料理長の野﨑洋光さんに、根菜類でも煮崩れしやすいかぼちゃを煮るときに、角をしっかり残すワザを教えてもらいました。
まず、大事なのは切る大きさ。圧力鍋は火が通りやすいので、普通の煮物より大きめに切ります。
加圧中のポイントは、水の量を通常の半分にすること。圧力鍋は密閉されているので水分が蒸発しにくく、少なめの水と野菜から出た水分で十分に火が通ります。
そして、火を止めたあとのポイントが、鍋に水をかけて「急冷」することです。そもそも、圧力鍋で時短調理ができるのは、圧力が直接食材に影響を与えるのではなく、鍋の内部が圧力によって120度まで上がるためです。火を止めても、100度以上がしばらく続くので、圧力が下がるまで鍋を放置すると、かぼちゃに火が通りすぎることがあります。一方、急冷すると急激に温度が下がるので、火が通りすぎることもなく、かぼちゃが煮崩れしにくくなります。
※急冷する場合、布巾の上から水をかける鍋もあります。お使いの鍋の取り扱い説明書に従ってください。
【材料・4人分】
・かぼちゃ・・・400グラム(正味)
<煮汁>
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・水、酒・・・各カップ2分の1
・砂糖・・・大さじ1と3分の2
・みりん、うす口しょうゆ・・・各小さじ1と2分の1
・トウバンジャン、ごま油・・・小さじ2分の1
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【作り方】
野崎洋光さん(「分とく山」総料理長)
清水克哉さん(大阪大学 極限量子科学研究センター 教授)
蒸し器やオーブンで作ると“す”が入りがちなプリン。実は、圧力鍋を使えば、“す”が入っていないなめらかなプリンを簡単に作ることができます。ポイントは、一瞬だけ加圧すること。
蒸し器で作る場合、プリン液の卵に含まれるたんぱく質は70度で固まり、100度になると水分が沸騰して水蒸気になり、それが抜けると穴ができます。これが、“す”です。
圧力鍋では、内部の気圧が高いので100度を超えても、水分は沸騰せず、たんぱく質の凝固が進みます。120度で水が沸騰するころには、たんぱく質がかなり固まっているので、“す”ができにくいのです。加圧が始まったらすぐに火を止め、10分放置して余熱で火を入れれば、なめらかなプリンができあがります。
【材料・2人分】
・卵・・・1コ
・牛乳・・・カップ4分の3
・砂糖・・・30グラム
・バニラオイル・・・少々
【作り方】
さいとうあきこさん(料理研究家)