2014年09月30日
上司に相談しても何もメリットがないのであれば、誰も相談なんてしない
先に書きたいことを箇条書きにしておくと、
・上司は、部下に報告や相談を求めるのであれば、それに見合ったメリットを部下にも提供しなくてはいけない
・部下のタスクが上手くいかなかった場合、責任は割り振った上司の方にある
・上司の最大の仕事は、部下が仕事をやりやすい環境を整えてあげることである
・ただ「報告しろ、相談しろ」というだけの上司は、その内部下に相談してもらえなくなる
ということになります。当たり前っちゃあ当たり前の話です。
以下は、とある会社の、とあるチームについてのお話です。
そこのチームリーダー、仮にAさんとしますが、Aさんは日ごろ「部下からの情報共有不足」に悩んでいました。
Aさんのチームは、定型のタスクではなく、様々な期限のタスクを同時並行で回さないといけないチームです。その為、各人の進捗状況もかなり複雑になりますし、失敗時のリカバリも相当面倒くさいです。Aさんは、MS ProjectやTodoistとにらめっこをして部下のスケジュールを割り振りつつ、自分でも幾つかのタスクを担当する、というえらい大変なことをやっていました。
しかし、メンバーは全員頑張っているにも関わらず、Aさんのチームのアウトプットはあまり良質なものではありませんでした。タスクは往々にして期限遅れになり、出したレポートには往々にして誤りが混ざり込み、プロジェクトは往々にして進まなくなり、Aさんは幾度となく改善を求められていました。
Aさんが考える限り、その原因は「タスクの進捗遅れや問題発生時、部下が早めに相談・報告してくれないこと」でした。部下もAさんと同様、複数のタスクを回しており、当然タスク進捗上問題が発生することもあるのですが、それが即座にAさんのところに挙がってこないのです。何度も「問題やトラブルが起きたらすぐ俺に報告しろ!」と言ってはいるのですが、部下はいつも、ギリギリアウト、という状況になってから恐る恐る報告を挙げてくるばかり。
当然Aさんは問題を把握するのが遅れ、それに対する対処も後手後手になり、「あのタスクどうなった?」と他部署から聞かれるのは期限が切れた後、といった体たらく。当然チーム内の空気も悪くなり、Aさんは困り果てる、という具合でした。
実際のところ、岡目八目というべきか、私にはAさんのチームの問題点がそこそこ把握出来ていました。私が見る限り、Aさんの部下の人達がAさんに情報共有をしない理由は、複数あったのです。かつ、その多くは、多分Aさん自身の問題でした。
・Aさんにタスク遅れなどの報告を挙げると、まず怒られ、責任を追及される。
・Aさんから、期限遅れに関わる他部署との調整を新たに割り振られる。
・管理者ミーティングで、「○○(担当者)の進捗遅延でスケジュールが遅れている」といった報告をされる。
・最終的には、リソースの再配分ではなく、「期限を延ばしてもらう」という形の対策しか打たれない。
そりゃそうなるんじゃねえかなあ、などと私は思っていたのです。
上司は部下に、折々「報告・連絡・相談」を求めます。それは何故かというと、部下の進捗状況や課題を把握して、目標達成の為に何かしらの問題があれば早めに手を打つ為、です。これは当たり前の話です。
ただ、部下は上司に何を期待して問題やトラブルを報告するかというと、
・自分には片付けられない問題を解決してくれること
・チームリーダーとして、チームメンバーのタスクについて責任をとってくれること
・リソース不足があれば、タスクやリソースを再配分してくれること
・他部署との折衝など、マネージャーとして一段レベルが高い仕事を請け持ってくれること
などを期待する訳です。
これら期待した結果が得られず、それどころか「責任は詰められ」「調整は自分でする羽目になり」「タスク遅れは自分のせいと名指しされ」「期限が延びこそすれ、仕事が減る訳でもない」となれば、そりゃ上司に相談するのはイヤになります。
Aさんのチームの場合、勿論根本的な原因は「タスク多過ぎ」「リソース足りな過ぎ」にあることは間違いありません。本来上司は、キャパシティを大幅に占拠するようなタスクを受け持つべきではないんですが、Aさんの場合、自分自身もかなりのタスクを抱えていました。そちらにキャパシティがとられていたが為に、対応が柔軟性を欠いた部分もあるのでしょう。
とはいえ、Aさんが「上司の責任」を部下に転嫁していたことが、問題を大きくしていたということは否定出来ない事実だ、とも私は思います。
問題やトラブルは、総じて「報告しにくいこと」です。ただ、だからこそ、上司は可能な限り「報告しにくいことでも気軽に言える」環境、状況を整えてあげなくてはいけません。間違っても、「あの人に相談したくねえなあ」などと思わせてはいけません。
とすれば、例えばミスやトラブルが発覚したとしても、責任追及や叱責など後で必要ならすればいいですし、他部署や役員に怒られる役は自分が率先して引き受けてあげないといけない。それが出来ていない状態で、「報告・連絡・相談しろ!!」などと、部下に一方的に言うだけでは、ちょっと上司の在り方としてどうなんだろうなあ、と思わざるを得ません。
「ついていきたくない上司についていく」義務なんか、部下の側にはないのです。少なくとも、上司の側はそう認識しておかないといけない。
もう随分昔の話です。当時の私は、上記のような話をAさんにするような立場にありませんでした。その後、私自身が上司になった時には、もうAさんは私とお話出来る場所にはいなくなっていました。
Aさん個人は、私なんかよりよほど仕事が出来る人で、色んなタスクをあっという間に片付けてしまう人でもありました。けれど、あるいはだからこそ、私はAさんを反面教師にして、タスクはそこまで受け持てなくても、部下の人達が働き易いような上司を目指そうと決めました。
今でもそれを目指し続けています。
何年か越しの四半期末に、なんとなく思い出したので、上記のようなことを書きました。今日書きたいことはそれくらいです。
以下は関連エントリー。
「言いにくいことを言う」ことはもの凄く大事だし、「言いにくいことを言える環境作り」は上司の責任だ、ということ
入社して二ヶ月程経って、五月病をそろそろ脱出出来たかも知れないあなたへ
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