「差別排外扇動行動(ヘイト活動)って何?」 ジャーナリストの安田浩一さんに聞く(下)

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在日朝鮮人を主な標的とし、「殺せ」、「出て行け」といった過激な言葉で街頭宣伝を行う排外主義団体の存在が、大きくクローズアップされている。彼らの行う「ヘイト活動」について、ジャーナリストの安田浩一さんに聞くインタビュー第2弾。(ラジオフォーラム リ・シネ)

大阪府立男女共同参画センターで5月25日行われた元従軍慰安婦の証言集会で、抗議デモを行う排外主義団体に対して行われたカウンターデモ(2013年5月25日)

Q:どういった人が「ヘイト活動」に参加しているのでしょうか?
安田:幅広い層が参加しています。下は中学生から上は70代。性別もバラバラです。
属性を一口に語るわけにはいきませんが、どこかで共通しているという部分があるとすれば、自分の主張を補強するためにインターネットをとにかく利用する人々。そして自分の主張に都合のいい言説を取り出すことに長けている人々ではないでしょうか。
さまざまな背景を持つ人々が、一種のカタルシスを得るため、そして何かを発散するために路上に出てきているという部分があります。インターネットではそれを煽るような様々な情報が飛び交っています。

Q:ヘイト活動を繰り広げる「在日特権を許さない市民の会」(在特会)。その会員の傾向は?
安田:断言は出来ませんが、何かの不満、憤りを抱えている人が多い。自分はあらゆるものから圧迫を受けており、その源をたどれば在日コリアンである、という単純な思考に陥っています。生身の在日を知らず、インターネット上で作られた想像上のモンスターである在日を異常に恐れており、隣の国にはモンスターを生みだすモンスターがいると思い込んでいる。過剰な恐怖、過剰でいびつな憤りを抱えている人が多い。

Q:被害者意識を持っているとも言えますね。
安田:そうですね。生活保護をめぐる議論をはじめ、在日コリアンが福祉にただ乗りしているという理論が運動の核になっている場合もあります。外国人に福祉だけでなく、領土もメディアも資本も権力も奪われているという神話や妄想に囚われている。しかし、権利獲得の運動にはならず、権利を持っていると決め付けた人々を、自分たちの地平まで引きずり降ろそうとすることに終始しているのが特徴的です。

同じく大阪府立男女共同参画センターでのカウンターデモで。掲げられたプラカード。(2013年5月25日 撮影リ・シネ)

Q:新しい動きはありますか?
安田:代表的なのは、東京・新大久保の排外デモの際に、カウンターデモと称して、それに反対する人たちがたくさん集まるようになったことです。国会では、民主党の有田芳生議員が中心となって、これを国会議員レベルで議論しよう、ヘイトスピーチを容認していいのか、放置していいのか、と永田町も動き出しています。
国会では安倍首相が答弁し、谷垣法務大臣も発言しています。それによって、この醜悪なデモが周知され、その意味を考ようとする動きが起こることは悪い事ではありません。
安倍首相は、「日本人は和を重んじる。人を排除する排他的な国民性ではない」ということを強調するロジックを使っています。拉致問題を利用し、偏狭なナショナリズムをあおってきた人物であることを考えると、複雑な気持ちになる人もいるでしょう。しかし、そういった議論が永田町で飛び交うことは悪いことではない。

Q:今後、ヘイト活動はどのような方向に向かうのでしょうか?
安田:ヘイト活動がすぐに止まるのかといえば、それは難しい。彼らも戦術に長けている部分があり、最近のデモは、「死ね」、「殺せ」はやめようという合意のもとで行われています。しかし、彼らが本当にそう思っているわけではなく、便宜上そうしているだけです。
とはいえ、そのような過激な発言がなければ、このような排外デモが許されるのかという議論も必要ではないでしょうか。 
(おわり)

◎リ・シネさん現場音声リポートは ラジオフォーラムで聞くことができます。

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