- 鳥取県人権尊重の社会づくり協議会 -
鳥取県人権尊重の社会づくり協議会 全体会会議録
開催日時平成180906日(曜日) 10:00 12:00
開催場所鳥取市尚徳町101-5
県民文化会館 第2会議室
出席者名相見槻子委員、相見寿子委員、今井八重子委員、一盛 真委員、加賀田さゆり委員、川口斐子委員、KIP A.CATES委員、塩澤洋子委員、薛 幸夫委員、高多彬臣委員、田村 勲委員、永山正男委員、濱本英機委員、福田壮吾委員、福間裕隆委員、藤村梨沙委員、光岡芳晶委員、椋田昇一委員、安田寿朗委員、安田寿子委員、渡辺 憲委員
議題鳥取県人権施策基本方針に係る施策の推進状況について
問い合わせ先総務部人権推進課
0857-26-7121
その他(1)公開又は非公開の別
公開
(2)傍聴者数
3
(3)その他(会議資料等)

会議内容:

(1)人権施策の推進状況について
  各小委員会の座長が小委員会の審議結果を報告し、人権施策の推進について意見交換換を行った。
  • 資料「人権施策の推進状況について」において、新しい人権問題は「その他の人権問題」に分類されている。「その他」という表現は、県民の方に「どうでもいい問題」という印象を与え、啓発の必要性に対する理解を損ねかねないため、配慮を求める。
  • 〔県〕資料の区分は、当協議会で決定された人権施策基本方針の分類をそのまま記載したものであり、御理解いただきたい。
  • 資料「地域における人権教育の充実をめざして」の中で、「人権学習の内容を決める上で、大切にすることは何ですか。」(P.6)という質問に対し、「ハンセン病が注目されたらハンセン病、老人虐待が注目されたら老人虐待と、安易に内容を決めていたことはなかったでしょうか。」とある。この「安易に」とはどういう意味か。新しい人権問題は、話題になった時に取り組み認知してもらうものである。
  • さらに、文章は「地域にある問題を取り上げて」と続いているが、新しい人権問題は地域には出てこない。地域でなかなか言い出せないのが「新しい人権問題」である。この記述では「地域にない問題は学ばなくてもよい。」という誤った認識を与える恐れがある。
  • 〔県〕地域で行われている人権学習は、当然、学習のねらいや地域住民のニーズ、社会問題化していることなどを勘案して企画されており、人権問題に対して軽重あるいは順位性をもって企画されているようなことはない。御指摘の部分については、誤解がないように説明会などで補足説明している。
  • また、ここでの「安易」は、「隣の町がしているから・・・」というような意味の「安易」である。内容や学習者の反応も十分に踏まえた上で、企画立案してくださいということ。県としても、ハンセン病問題や老人虐待に対する啓発の重要性は十分に認識している。
  • 他の地域で行われた人権学習についても情報が共有できているということか。
  • 〔県〕毎年、人権教育課が各地域で行われた学習会の調査をしている。また、各地域の同和教育推進協議会も把握しており、情報が共有されているものと認識している。
  • 文章の主旨は、「それぞれの学習者が内発的に学習したいというテーマに沿って、学習会を企画していきましょう。」ということであろう。しかし、具体的なテーマを挙げ、その後に「安易に」と続けることはやはり誤解を招く恐れがある。もう少し注意した文章とすることが必要である。
  • 新しい人権問題についても、積極的に研修テーマに取り上げていただきたい。講師人材の検索がより簡単にできるようシステムを整えてほしい。
  • 〔県〕現在、県の公式ホームページ“とりネット”の改善を行っているところ。完了するまで、もう少し時間をいただきたい。具体的には、トップ画面から人材情報がすぐに分かるような工夫を行いたいと考えている。
  • 報告を聞いていて、いったいどういう意味でここに集まっているのか疑問に感じている。人権が守られる社会が理想であり人類の目標でもあるが、なかなかできないからこうして集まって、行政にできることは何か、民間にできることは何かということを議論している。県が「これについては予算を付けて、具体的にどうしていきます。」というような“たたき台”になる議論をお願いしたい。茫漠とした議論をしていてもはじまらない。
  • 例えば、各分野において、「ここを行政にお願いしたい。」ということを抽出していかないといけないのではないか。第2小委員会では、子どもの犯罪防止や非行からの立ち直りをどう支援するか議論した。国連のリヤド・ガイドライン(注:少年非行の予防のための国連ガイドライン)は国がやるべきこと、地域がやるべきことなど具体的な施策を提案している。その施策をどう活かしていくか検討してはどうか。
  • アメリカでは、「虐待・非行・問題行動には密接な関係があり、この構造を根底から変えるには2〜3歳までの子どもへの手厚い教育・擁護が必要」で、また、「行政の支えなくしてはあり得ない。」ということを認識し、厳しい財政状況の中でも予防的施策に予算を使う州もある。犯罪対策にお金を使うより、予防的施策にお金を使う方が安上がりであることが日本でも少しずつ報告されつつある。県が調査団を組み、進んだ制度を研究し、検討していくことが必要ではないか。
  • 障害者自立支援法に対してさまざまな批判があるように、従来の支援システムを良くしようとして逆に悪くなってしまったとして、自治体が国の施策の足りない部分を率先して補完するという問題意識に立てば、県内の障害者の実態を調査研究して、その実状に合わせたオーダーメイドの制度を作ることができるかどうか検討すべき。そういうことに予算を使うことを考えてみてはどうかと思う。
  • 子どもが訴える機関が日本にはないことは、国連の子どもの権利委員会からも指摘されている。指摘を受けて、例えば、川崎市や加西市、埼玉県などがオンブズマン制度を設けて相当の成果を出している。これらの自治体の経験を踏まえて、鳥取県がどういう制度を作っていけるか、明確な政策立案をしていただきたい。
  • 精神疾患に関しては、精神科の病院には留置所以下のところもあるようだ。確かにやむを得ない措置であるかもしれないが、中には人間が人間の感性を保てないような病院がある。精神病に対しては、社会にはもちろん家族にも偏見があり、患者自身にも偏見がある。そして自分自身を苦しめる。具体的に必要なケアや社会教育など、もう少し精査した方針を検討をすることが必要。現場の人の声を反映した施策の実施を求める。
  • 人権分野における「啓発」や「教育」は、学校では成功していない。それは、教師自身が非人道的な行為をしてしまうことがあるから。学校における人権教育を徹底するには、現場主義・実態主義に徹するべき。例えば、教師の体罰が何件あり、教師がどう処分されたか、具体的なケースを出すべき。人権教育を受けているはずの教師が、なぜ体罰をしなければならなかったのか。その構造を分析しない限り、人権教育のパンフレットをいくら作っても現場では活きてこない。
  • 行政に「全部やれ。」と言っている訳ではない。これはやるというものをセレクトし、実りある議論とすべき。
  • 今の御意見に一言。先ほどの小委員会の報告は、第1回目の協議会での基本的な申し合わせに基づき行われているもの。それは皆さんが 共通認識を持ったはずである。そのことを踏まえた上での会の進行であることを御理解いただかなければならない。今までのような形骸化された委員会の議論ではなく、現実に一つでも穴を開けられるような、施策提言のできるようなものにすべきという意見は貴重だと思うが、そのために3つの委員会に分かれてみなさんが時間を割いて苦労をされた訳で、今の御意見はその次のステップでどう協議会を発展させていくかということ。
  • 〔会長〕今年の議論は、4月当初に確認したとおり、3つの小委員会に分かれてそれぞれの問題について審議するという形で進めてきた。御指摘のように全体的な人権保障のシステムに対する提言、政策提案は当然必要だが、今年はそれぞれの分野を中心にやったということ。アメリカの制度を含めて人権保障のシステムの調査・研究であるとか、鳥取県の実態を踏まえたオーダーメイドの制度の立案であるとかは、恐らく来年度の審議の持ち方につながっていくことであろう。
  • 今、委員が指摘されたことと同じ意見だが、こういうことを徹底しないとうまく事が運ばないと思う。「実践」というか、実際に人間が動いていく「力動性」というか、そういったものが見えないと何もならない。そのことを踏まえて検討し、議論して深めていっていただきたい。
  • 第1小委員会の中では、鳥取県人権尊重の社会づくり条例の対象についても審議されたが、条例が誰を対象としているのか曖昧になっていないか。会の基本的な共通認識として必要なことだと思うので、ここで確認してはどうか。
  • 条例の対象は、理念としては「すべての人間」ということであろう。ただし、具体的な施策となると「住民」という捉え方になるのかなと思う。少なくとも、「国民」、すなわち「日本国籍を有する者」ということではないと認識しているし、今後もそうあるべきと考える。
  • 社会づくり条例の素案は「県民」であったが、「県民」は「日本国籍を有している者」と理解される向きがあるため、「すべての者」という表現になったと認識している。したがって、旅行や仕事で一時的、または中期的に来県されお住まいになっている方も対象になるものと認識しており、人権保障という観点では「すべての者」という理念だと思うが、人権施策という観点では「住民」なのだろうかというのが私の意見である。
  • また、これまでの人権教育については評価すべき面もある。人権教育を受けて育った人びとがたくさんいて、さまざまな取り組みが行われている。成果は成果として踏まえ、しかし具体的な問題点や不十分な点があることをしっかりと議論して、これからの施策を検討していく必要がある。
  • 「人権」とは侵害されて、はじめてそこに「人権」があることが分かる。侵害された事例を検討しない限り問題行動ははっきりしない。もし、人権教育が成功したというのであれば、子ども自身に発表してもらい、その典型例をここで示せばよい。子どもの権利条約第12条には、子どもは子どもの権利に関するあらゆる施策について情報を明らかにされる権利があり、また発言する権利があると規定されている。
  • かなり前になるので現在と多少状況は変わっているかもしれないが、以前、学生に「人権についてどう理解している」、また「自分が受けてきた人権教育あるいは同和教育についてどう感じているか」というアンケートをし、その回答を踏まえた上で講義を行った経験がある。当時の学生は「人権とは差別のことである。」と認識し、人権教育を現在のように広くとらえないで「部落差別」に限定している傾向があった。また、学校での人権教育、あるいは同和教育はかなり形式的であったと感じている。生徒にとっては、先生が一方的に話をする退屈な時間だったのである。
  • 教師の大多数は善意の人である。しかし、善意が到達しない、教師が多忙で他の活動ができなくなるくらい追い込まれる場合もある。例えば、DVを受けた経験を持つ子どもや家庭の中に居場所がない子どもたちと関わることは、たいへんな時間とエネルギーが必要である。
  • また、人権教育の中でも、同和教育の中でも教師自身の態度や身構えが大切である。「ことばで云っていること」と「からだ全体から発するもの」が乖離している場合は、意味がない。教師の体罰について教育委員会の審議は書面で行われるだけで、心情にまで到達していない。書面に記載された体罰案件の背景は何か、教師の心理状態はどうか、教師自身の発育時の被体罰経験はどうかなど、もっと踏み込んだことを議論する必要がある。教師は、家庭・社会・人格障害・物質万能の消費社会など、さまざまな要因を引っくるめて出てきた問題行動を受けとめているのである。
  • 高等学校の学校経営は、私立も公立も激烈なサバイバル状態である。その中で、「ある一人の生徒のために学校全体の評価が落ちる。」という苦情が寄せられた場合、学校にはその生徒を時間をかけて見守っていく余裕がなくなるだろう。そういう現状があるから、出校停止処分や高校・予備校への入校拒否があるのだろう。行政には、こういう問題をあそこは何件あったからどうだというように数的に取り扱うのではなく、学校経営や教師の内面に踏み込んだ助言をしていくことを期待する。
  • 国連のリヤド・ガイドラインは、子どもの非行からの立ち直りを疎外しているものは学校からの排斥であると強調している。これは社会的な処罰として容認される傾向があるが、これを克服しないと子どもの立ち直りを援助することは不可能とリヤド・ガイドラインは指摘している。
  • 鳥取県では、警察沙汰の問題を起こした中学生はほぼ高校へ進学できないと言われる。一方で、学校長は学校経営上の問題で厳しい立場に置かれている。これを解決するのが行政の役割。過去に問題行動があったという理由で入学を拒否するような体制をとらないこと。そして、一度入学させたからには、絶対に立ち直らせる手厚い体制を確立すること。このような体制を県民みんなで整えていくことが“改革”である。
  • 人権施策が機能しているか、機能していないかの現実をとらえようとした場合、それは人びとの内面にまで踏み込んで理解していく必要がある。そういう面で見ると、現在の人権施策は形式的であると感じざるを得ない。個別的に行われているさまざまな施策が、鳥取県固有の人権保障システムとして機能していくためにこの審議会で何が提言できるか、ということが求められている。
  • 外国人である在日韓国朝鮮人は、未だに制度的な差別下にあるので解決していただきたい。県内には在日の方が1,500人いるが、そのうち80歳以上の数十人は無年金状態である。市町村から給付金という形でいくらかいただいているが、日本人と同額ではない。国民年金法を変えるという方向で努力していただきたい。外国人は協議会などには参加できるが、選挙権がなく、発言権がない。制度的な差別を解決する方法として、地方参政権をいただきたい。この点でも基本的人権が疎外されている。
  • 特に在日韓国朝鮮人の無年金の老人たちは、かつて1910年に日本人にされ、1952年4月28日に今度は日本国籍を剥奪された。そこから福祉保障の面で日本人と同等のものは得られなくなった。このようなことを人権の概念でまっとうな方向にしていただきたい。
  • 〔会長〕「住民」とは地方自治法上のことば。地方自治法上の「住民」には国籍要件はないが、現状では定住外国人であっても住民が持っているすべての権利を持っているわけではないということ。したがって、人権尊重の社会づくり条例の対象が「住民」ということについて、必ずしも「そうだ」とはなかなか言えないということなのだろう。
  • 人権に関する意識調査を実施する際は、学生が外国人に対してどのような偏見をもっているか、もっとテーマを絞って調査する必要がある。
  • 〔県〕知事部局では、概ね5年間隔で人権意識調査を実施している。2回目の報告書を今春にまとめたところだが、残念ながら御指摘のような細かい項目がない。5年を目途に調査をしたいと考えているので、その中で検討させていただきたい。
  • 多くの人は、外国人やゲイの方など自分たちと異質なものに対して、最初は恐らく「無関心」、次に断片的な情報を得て偏見を持ってしまう。精神障害者に対しても、行動が奇妙だから、服装がちょっと変わっているからという理由で偏見を持つ方もいる。また、精神障害者が引き起こす犯罪によって精神障害者全体に偏見が広がってしまう。そのため、病院内でなく、病院外で実際に触れ合っていただく機会を設けることが大切だと考える。外国人の方や性的マイノリティの方についても、触れ合えば誤解は瞬間的に解消するものと思っている。
  • 障害者自立支援法の施行に向け、障害者の自立を支援する主体が県から市町村に移ってきている。しかし、市町村の取り組みにはノウハウが蓄積されていない印象を受ける。障害者施策、高齢者施策等さまざまな権限が市町村に移されても対応できていない状況があり、県が市町村をサポート・支援し、障害者や高齢者等の人権保障が滞ることのないよう配慮して欲しい。
  • 障害者自立支援法を全否定するつもりはないが、障害者の自立を疎外する部分がかなり大きいと感じる。確かに障害福祉計画の作成や就労支援の強化など評価すべき点もあるが、大きく2つの問題がある。一つは自己負担の問題。もう一つはサービスが低下する問題である。福祉は、人権を守るということに直結する問題であり、憲法で保障されている生存権や基本的人権が保障されないということが起こりかねない。
  • 自己負担の問題では、収入がある家庭世帯の方の負担が増えていることはもちろん、年金だけで生活している方でも最大24,600円を負担しないといけない場合がある。この負担金を0にしようとすれば、自分の蓄えをすべて出して生活保護を受けるしかない。そういう中で、人によっては負担金が支払えないために利用を手控えたりすることにもつながりかねない。しかも、障害が重ければ重いほど負担が増えるというのはどういうことか。例えば、トイレ1回いくら、お風呂1回いくらと積み重なっていく状態で、この国に基本的人権を保障するという考えがちゃんと根付いているといえるのか。
  • また、サービスの量については、10月以降、今までどおりサービスを受けられるか分からない状態。国が補助金の上限を打ち出し、あとは市町村の判断で支援することになっているが、市町村まかせではなく都道府県も支援してほしい。
  • 最後に、障害者に対する理解を深めるという問題では、どういう方からどういう教育を受けるかが重要だと思う。県が事業者に対し指導する際は、実際に障害のある当事者者の話や意見を聞く機会を設ける仕組みを作っていただきたい。
  • 誤解を招くといけないので一言。精神疾患については、かつては閉鎖的な面もあったかもしれないが今はちがう。精神科の専門医は、患者にとって非常に重要な役割を果たしている。また、周辺住民にも開かれてきている。だから、「精神病院は・・・」という一括りにした言い方には抵抗がある。
  • 本人は、精神病院を出たいから精神病院に対して悪意を持った発言をするだろう。家族からすると、病院で完治してほしいというのが心情。その中で当事者を立ち直らせていかなければならない。そういう活動をしている人たちもいる。
  • 啓発の部分でも指摘したが、当事者本人の内発性の問題と外からの働きかけの問題とをどう上手く組み合わせていくか、ということが課題であろう。
  • 〔会長〕小委員会における意見・要望と本日の議論については、今後、執行部で検討し努力していただき、まとめた結果については、われわれ委員に報告していただくことでよろしいか。(異議なし。)

     (2)来年度の協議会の進め方について
  • 事務局から来年度の協議会の開催案について、今年度と同様に小委員会と全体会に分けて2回開催する案を提案し、了承された。
  • 〔会長〕来年度は、今年度作成された資料「人権施策の推進状況」を練り直し、この資料を見れば鳥取県の人権施策が分かるというものにしていきたい。


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