景気後退局面入りの可能性、生産下振れで-消費増税判断に影響
9月30日(ブルームバーグ):8月の鉱工業生産が2カ月ぶりにマイナスとなったことで、日本経済が既に景気後退に陥っているとの見方が強まっている。安倍晋三首相の消費税率引き上げの判断にも影響を与える可能性が出てきた。
30日発表された鉱工業生産は前月比1.5%低下と、プラス予想(0.2%上昇)に反し減産となった。これによって、内閣府が10月7日に発表する景気動向指数で、CI一致指数の基調判断がこれまでの「足踏み」から「局面変化」に引き下げられる可能性が高まった。下方修正されれば、景気は既に後退局面に入っているという暫定的な評価が下されることになる。
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは鉱工業生産や同日午後発表された中小企業出荷指数などを受けて、「内閣府によるCI一致指数の基調判断は、これまでの『足踏み』から『下方への局面変化』へ下方修正されるのは必至だ」と指摘する。
内閣府はウェブサイトで、局面変化について「事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す」と説明。「足踏み」から「局面変化」に移行した時点で、「既に景気後退局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している」としている。
消費増税の可否に影響も新家氏は「暫定的とは言え、そのような判断が下されれば、景気後退観測が強まる可能性が高まる。安倍首相が本当に2回目の消費増税を決定できるのか、議論が盛り上がる可能性が高い」としている。
正式な景気循環(景気基準日付)の判定は、一致CIの各採用系列から作られるヒストリカルDIに基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて、経済社会総合研究所長が設定する。通常、暫定的な認定から1年半程度後になる。
景気動向指数研究会のメンバーである三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は個人的な意見とした上で、「現時点であまり確定的なことは言えないが、事後的にも、景気後退と認定されるリスクが大きくなった」という。
大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは生産の発表後、「12年12月に第2次安倍政権発足後、円安、株高が加速し、『異次元緩和』、『機動的な財政出動』にもかかわらず、景気が後退局面入りした可能性が出てきたという事実は、重く受け止めるべきだろう」と指摘。「当初期待されていた『好循環の発生により消費増税を乗り越えられる』というシナリオは、崩れつつあるようだ」としている。
日銀の追加緩和観測を後押しも30日発表された鉱工業生産 では、生産だけでなく出荷も前月比1.9%減少。在庫率が8.5%上昇した。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは発表後のリポートで、「最終財在庫率、生産財在庫率ともに大幅に上昇した。製造業の生産活動は景気後退的な局面に入ったと判断される」と指摘した。
新家氏は「7-9月は2期連続の減産が確実で、同期の実質国内総生産(GDP)成長率も低成長の予想が出てくるだろう。その面からも、消費増税を本当に実施できるのか、疑念の声が出てくる可能性が高い」としている。
日銀は10月6、7日に金融政策決定会合を開く。嶋中氏は「追加緩和を望む市場の期待を後押しする可能性もある」としている。
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更新日時: 2014/09/30 17:11 JST