搬送12人死亡確認 御嶽山頂では24人が心肺停止
長野、岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん、3067メートル)の噴火で、長野県警は29日、心肺停止状態の8人(男性5人、女性3人)を新たに運び、全員の死亡を確認した。28日には男性4人の死亡を確認しており、死者は計12人となった。山に残された心肺停止状態の人は24人。下山した負傷者は少なくとも69人に増えた。有毒ガスなどに阻まれ、救助・捜索活動は午後にいったん、打ち切られた。
噴火から3日目となる29日の救助活動は午前5時40分から長野、岐阜県警と消防、陸上自衛隊の計550人態勢で始まった。陸自では、噴石を防げる「89式装甲戦闘車」なども投入した。
この日は山頂付近の登山道などに残された心肺停止状態の登山者のうち、男性5人、女性3人の8人をヘリで麓に搬送した。警察関係者によると、心肺停止状態の人たちの多くは、山頂付近の御嶽神社から約500メートル南東にある王滝頂上山荘までの登山道周辺で集中して見つかった。噴煙が流れた方向で、火山灰に埋まったり、やけどを負ったりして倒れていた。捜索した消防隊員によると、一帯は、灰から動かない人の手足が突き出し、岩に挟まれた人は動かすことすら困難だという。
長野県警は、搬送した8人全員の死亡を確認。前日の4人と合わせ、死者は12人となった。この日、新たに確認された5人を含め、山頂付近には心肺停止状態の人が、なおも24人残されている。
山肌を覆う火山灰は、太陽に照らされ乾燥し、ひび割れ部も生じる荒れた状態に。火口からはいまだに噴煙が上がり、雨のように石が降り注ぐ。硫化水素など有毒な火山ガスも渦巻き、測定器でガス濃度を測りながら進む悪条件。結局、午後には救助・捜索活動はいったん打ち切られた。
「非常に残念だ」。山頂の手前で引き返さざるを得なかった陸自松本駐屯地の中村文彦3等陸佐は、悔しさに唇をかんだ。顔にはゴーグル、噴石を防ぐための防弾チョッキも身に付けた重装備だが、思うように捜索を進められないもどかしさが漂う。
遺体安置所となった長野県木曽町にある廃校の小学校には、霊きゅう車や関係者の車が相次いで到着した。家族とみられる人らは、手で顔を覆って足早に中へ。若い女性はハンカチで目元を押さえたままだった。