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「色がない」極限の御嶽山頂を山小屋支配人が証言

2014年9月30日6時0分  スポーツ報知

 長野、岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん、3067メートル)の噴火で、長野県警は29日、心肺停止状態の8人(男性5人、女性3人)を新たに運び、全員の死亡を確認した。28日には男性4人の死亡を確認しており、死者は計12人となった。山に残された心肺停止状態の人は24人。下山した負傷者は少なくとも69人に増えた。有毒ガスなどに阻まれ、救助・捜索活動は午後にいったん、打ち切られた。

 「色がない」―。噴火した御嶽山の山頂に近い山小屋「二ノ池本館」(標高2905メートル地点)支配人の小寺祐介さん(34)が29日、噴火直後の山の極限状況を振り返った。

 「わぁー」。数十人の登山者が小屋に駆け込んできたのは27日正午ごろ。小寺さんが外を見ると、すぐ近くで噴煙が空高く舞い上がっていた。

 登山者を小屋の食堂に誘導すると天井から激しい音が鳴り響いた。「ガンガンガン!」。降り注ぐ噴石だった。大きな石が直撃したトイレは屋根が崩れ落ちた。

 「このままでは危ない」。館内の全員を屋根が二重になった場所に集め、ヘルメットを配った。「ここなら屋根が頑丈だから大丈夫。安心して」

 窓から外を見ると噴煙で真っ暗だった。雷が突然鳴り、雨も降ってきた。自家発電機で照明をつけた。さらに逃げ込んできた登山者はズブ濡れの灰にまみれていた。

 1時間ほど過ぎただろうか。石が降り注ぐ音が止まり、雨もやんだ。小寺さんが「噴火口からできるだけ離れます」と声をかけた。

 外へ出ると、見たことのない風景が広がっていた。「色がない」。灰に埋もれたモノクロの世界に言葉を失った。たった数十分前まで、草紅葉のじゅうたんのように赤、黄、緑に彩られていた足元には、白い火山灰が10センチ近く積もっていた。

 細かい火山灰が降り注ぐ中、約50人の登山者を大声で励ましながら9合目の山小屋「石室避難小屋」に下りた。小屋にはさらに100人近い登山者がいた。「まだ誰か来るかもしれない」。登山者の下山を別のスタッフに委ね、夕方に下山するまで小屋に残った。

 「犠牲者が出てしまったのが残念でならない」。2002年の大学卒業以来、バックパッカーとして海外を歩きながら、夏は山小屋支配人として御嶽山の魅力を伝える生活を続けてきた。今年の営業を今月30日で終え、下山する直前に起きた悪夢となった。

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