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新しい市民発信の形を創る!「8bitNews」で挑戦する堀潤さん

一般市民が自らのスマートフォン(スマホ)などで動画を撮影して公開する市民参加型ニュースサイト「8bitNews(エイトビットニュース)」。NPO法人として取材記者の育成もおこなう彼らは、地域のローカルな情報から、エンタテインメント、社会性のある出来事といったバラエティに富んだニュースを市民目線で伝え、“人の数だけニュースがある”ことを体現しているWeb媒体だ。主宰の堀潤さんに話を聞いた。

“国民総ニュースリポーター”への果てしない挑戦


堀氏がキャスターをつとめる東京MXテレビの「モーニングCROSS」

 テレビや新聞、ラジオにインターネットなど多様なメディアから発信され続ける「ニュース」。あふれるほどの情報を受信する一方で、情報の発信者としてニュースに触れている人は少ないのではないだろうか。市民が自ら取材や撮影を行い、動画と文章で発信するニュースサイト「8bitNews」が、今年8月にリニューアルした。

 「僕らが目指しているのは、個人が自由に発信できるメディア、いわゆるパブリックアクセスの実現です。そこで、より多くの人々に“市民記者”として活躍してもらうために、取材活動や撮影技術の支援、追加取材を行いながら発信者を育成し、彼らの発表の場として8bitNewsを作りました」。

 主宰するジャーナリストの堀さんはこう語る。サイトに投稿された記事は、東京MXテレビの「モーニングCROSS」やFMラジオ局J-WAVEの「JAM THE WORLD」など、堀さんがキャスターやDJを務めるマスメディアで紹介されることもある。

 かつて多数存在した市民メディアは、自らのサイト内で閉じている傾向が見られたが、8bitNewsは大手テレビ局などとも積極的に協業する姿勢を見せているのが特徴だ。このほか、ネット企業などとも連携を加速させている。

地元市民ならではのローカルな目線が伝えた真実


先月リニューアルした「8bitNews」

 市民ならではのローカルな視点で発信する情報は、思いもよらない展開をみせることもあるという。

 「神奈川県でスープの移動販売をしている人は、今年の3月に起きた三浦沖の海難事故で流れ出た重油によって、地元の『ひじき漁』に甚大な被害が出ている、という動画を送ってくれました。海難事故そのものは、テレビのニュースでも取り上げられたのですが、それから1カ月後に、漁できなくなるほどの被害が出ている事実はニュースになっていなかったんです。民放のテレビ局からも問い合わせがあり、8bitNewsのクレジット入りの映像が放送されました。大きなメディアが報じているニュースや意見がすべてではなく、多様な見方を伝えられるのが、市民メディアのメリットの一つなんです」。

 堀さんが理想のメディアのあり方を追求するようになったのには、テレビの転換期が深く関わっている。

なぜTwiiterでの積極的な発信を始めたのか

 「地上デジタル放送が実現すれば『視聴者と一緒に番組が作れる』と言われていました。僕自身も"一般の人々と一緒にニュースを作りたい"という想いからNHKに入局したんですが、いざはじまると、テレビのリモコンに青、赤、緑、黄の4つのボタンが付いただけ。『話が違うじゃないか!』と思いましたよ(笑)」。

 マスメディアの限界をもどかしく思っていた堀さんは2010年、局内に内緒でTwiiterを開始。率先して視聴者との交流を続け、そのフォロワー数は11万にも達した。

 「その後、見つかってしまってアカウントの削除を要求されたのですが、視聴者との双方向性を実現するためとの想いをぶつけ、特別に許可をもらいました。最初に描いたビジョンを完遂させたいという気持ちのまま、今も突っ走っています」。

 そんな堀さんが8bitNewsを立ち上げたのは、彼がまだNHKのアナウンサーだった12年のことだった。「当時はNHK職員だったこともあり、勤務時間外に市民メディアを立ち上げることを上司には伝えてはいましたが、あくまで匿名でした」。

NHKを出てしまえば、もう怒られませんし

 8bitNewsは少しずつ注目を集め、メディアの取材依頼が入るようになり、堀さんが主宰というカタチで表に出るようになったという。そして、昨年4月にNHKを退社。「ニュースウォッチ9」や「Bizスポ」など同局を代表するニュース番組でリポーターやキャスターを務めるなど、誰もが憧れる花形職から退くのは大きな決断とも思える。

 「不安はありました。しかし大きなメディアには、“ニュースを信じている視聴者”の気持ちに応えているつもりでも、内部の事情ですべてを伝えることができないことがある。彼らにより多くの情報を届けたいという気持ちが強かったんです。本気で8bitNewsを運営するとなれば、NHKを出たほうが自由度も上がるし、スピード感を持ってメディアを構築できると判断して退社しました。出てしまえば、もう怒られませんしね」。

 と冗談めいて笑う堀さん。そんな彼の行動力は、多くの人々に影響を与えていく。理念に賛同するテレビマンや一般人は多く、8bitNewsのPRや、クラウドファンディングでの資金集めに苦心することはあまりなかったという。

 “市民と一緒にニュースを作り上げてたい”との気持ちはみな同じだったのだ。

「じゃあやっちゃえばいいんじゃない」と飛び出す

 「インターネットや市民との協業をしたいという構想や理想があっても、みんなそれができずにジレンマを抱えてるんです。『じゃあやっちゃえばいいんじゃないですか』なんて飛び出したのが僕だったという感じですね」。

 多くの人が躊躇してしまう一歩を軽やかに踏み出した堀さんだが、今後の展望をどう描くのか。

 「ひとつは、日本や世界で活動している“発信したい人たち”が参画できるポータルな場所の構築です。さらに、情報を受ける側も、大手メディアでは報じないローカルなニュースを簡単に得られるようなサイトに発展させていくのが目標です。ふたつめは、さらに市民メディアとマスメディアの協業体制を整えていくこと。お互いが協力していくことが一番美しい体制のはずなんです」。

 8bitNewsがつなげる市民とマスメディアの架け橋は、私達の生活をより豊かなものにしてくれることだろう。

堀潤(ほり・じゅん)
ジャーナリスト/キャスター
8bitNews」主宰
兵庫県出身。2001年に立教大学文学部を卒業後、NHKにアナウンサーとして入局し、「ニュースウオッチ9」などの報道番組を担当。NHK在籍中に市民参加型ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、2013年4月に独立。「モーニングCROSS」(東京MX)のキャスターなど、ジャーナリストとして活動しながらNPO法人として市民記者の支援を行う
株式会社清談社

2011年から東京IT新聞のインタビューコーナー「IT×新ビジネス 創造人」に携わる。書籍から雑誌まで幅広く担当する編集者・ライター。