御嶽山噴火 噴石、とっさに頭守る 骨折6カ所 救助
■29歳男性、病室で父と再会
とっさの行動が命を救った。
噴火直後の御嶽山(おんたけさん)の山頂付近で容赦なく降り注ぐ噴石を体に浴び、6カ所を骨折する重傷を負いながら、頭だけは守って一命を取り留めた男性がいる。頂上付近の山小屋で一夜を過ごし、ヘリコプターで救出された男性は病室で父親と再会。「地獄絵図だった」と惨状の一端を語った。
埼玉県熊谷市の会社員、加藤佳幸(よしゆき)さん(29)。27日、登山サークルの仲間とともに御嶽山に登り、山頂付近で噴火に直面した。
「地獄絵図のようだった」
救助後の28日夕、連絡を受けて熊谷市から病院に駆けつけた父、寿さん(59)に、加藤さんはこう振り返ったという。
寿さんによると、加藤さんは噴火時に山頂付近にいた。「バーンという噴火の音がして『やばい』と思って逃げたが、火山弾が降ってきた」と語った。
山小屋に駆け込む時間的余裕はなく、落下物から身を守るため、腕を上げて頭をガードした。その上から火山弾が無慈悲に降り注いだという。
その衝撃で、加藤さんは左右の鎖骨や腕など6カ所を骨折する重傷を負う。しかし、頭を守る姿勢でじっと耐えたことで、命だけは救われた。
足元から熱に襲われたためか、足にはやけどを負っていた。周辺には噴石の直撃を受けて倒れた人の姿も目に入ってきた。
全身傷だらけとなった加藤さんは、一緒に登山した仲間らと頂上付近の山小屋に避難。仲間には自分を残して下山するように伝えたといい、1人でその山小屋にとどまったという。
一夜明けた28日朝、山小屋で救助され、自衛隊のヘリコプターで長野市の病院に運ばれた。
登山仲間から連絡を受け、寿さんは加藤さんが御嶽山に登っていたことを知った。「まさか、御嶽山に行っていたとは知らなかった。生きていることを知り、本当にほっとした」。寿さんは胸に手を当て、そう語った。
病院で再会し、寿さんが「生きていてよかった」と声を掛けると、加藤さんは「迷惑を掛けて悪かったね」としっかりとした口調で答えたという。