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2014.9.30 TUE
TEXT BY HIROKI MARUYAMA
PHOTOGRAPHS BY COLLIN HUGHES
平田晃久 | AKIHISA HIRATA
一級建築士。1997年に京都大学大学院工学研究科を修了後、伊東豊雄建築設計事務所に勤務。2005年に独立し、平田晃久建築設計事務所を設立。主な受賞に、07年JIA新人賞、12年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展・金獅子賞などがある。
「芸術のオリンピック」とも呼ばれるヴェネツィア・ビエンナーレ。その国際建築展において、2012年に陸前高田「みんなの家」をテーマとした日本館展示が、最高のパヴィリオン賞(金獅子賞)を受賞した。コミッショナーの伊東豊雄を筆頭に、平田晃久が、同年代の建築家である藤本壮介や乾久美子らと共同で設計したものだ。また、同じ年に釜石市の災害復興公営住宅設計プロポーザルでも最優秀に選ばれている。2013年、ミラノサローネで開催された『LEXUS DESIGN AMAZING 2013 MILAN』において、インスタレーションを展示するなど、平田は、いまや次世代を担う建築家として、国内外問わず、大きな注目を集めている。
平田の設計事務所が手がけるほとんどのプロジェクトには、「エコロジカルな建築(生態学的な建築)」という方法論が取り入れられている。
「20世紀の建築家は、自然とは異なる秩序にもとづき、建物の周辺環境から独立した『コントロールされた空間』をつくっていました。しかし視点を変えれば、生き物たちは互いに影響しあう『からまりあった世界』で共存しています。エコロジカルな建築とは、その生き物の世界を参考にして建築空間を設計する試みです」(平田)
例えば、高気密・高断熱で、完全にまわりの環境から断絶した建物をつくって、「エネルギー効率がいいでしょ」と言うのは決して「エコ」ではない、と平田は語る。
「ビルひとつだけを見たときにエネルギー効率が良くても、ビルの周囲に熱を捨てているので、都市全体で見ればそれはヒートアイランド化の促進につながっています。個々の建物の都合だけで判断するのではなく、街全体を良くする方法を探る発想へと切り替えるべきでしょう。その転換点となる時代に、いまわれわれは生きているのです」
中学校2年生のころまで、平田はいわゆる「昆虫少年」だった。野山で見つけた、カブトムシやクワガタ、バッタなど、さまざまな昆虫を家で育てていた。将来は科学者になって、『生きているとはどういうことか』を解明し、ノーベル賞を貰うような偉大な「発見」をする人になりたかったという。
結局、平田は大学の進路を決定するときに生物学ではなく建築学を選んだわけだが、その野山での昆虫採集に、建築の道へ進んだ原点があるのだと話す。
「建物の中にいるときの感じと、野山にいるときの感じとを比べたときに、明らかに山の方が自分にとって魅力的な空間でした。そのとき、『なんで建物はもっと居心地の良い場所にならないのか』という疑問を抱きました。そして漠然と『自分ならその方法を発見できるかもしれない』と思い、建築の道を選んだのです」
科学者に憧れていたときと、建築家となったいま。どちらにも共通しているのは、「何かを発見したい」という目的意識だと言う。
「『発見』とは、見つかった後は人々の常識になって、それを前提に次の時代がつくられていくものです。自分ではなくても、いつかは誰かが同じことを見つけるかもしれません。ただ、できれば他人に任せるのではなく、それを自分の手で明らかにしたいのです」
平田が描いたこの建物のスケッチは、野山と住居が合体したようなイメージだ。
「Luxury, but Comfort—素晴らしき未来のライフデザイン 10人からの提言」と題した“ラグジュアリーの新定義”を考える連載を、2014年1月からスタート。ものを所有することとは違う“自分にとって本当に大切なものとは何か”を考えるヒントを、10人のゲストとともに考える。
第1回「ちょっとだけ社会をよくする、自分だけのやり方で」ーフィル・リービン(Evernote CEO)」
第2回「フィジカルでリアルな旅が、心をより豊かにする」ー水口哲也
第3回「キャンプファイヤーへと人を誘うストーリーテリング」ピーター・ブキャナン・スミス(BEST MADE Co. 創業者)
第4回「美術館のアートより、いま観察すべきは生活工芸品」ムラカミカイエ(SIMONE INC. 代表)
第5回「『仕事』は自分の好きなことのまわりに築こう」ジョン・ポワソン(Wantful創業者)
第6回「中途半端、だから新たなものを創造できる」野々上 仁(ヴェルト代表取締役 CEO)
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