政労使会議:年功賃金見直し 警戒強める労働側
毎日新聞 2014年09月29日 23時14分(最終更新 09月30日 01時49分)
政府と経済界、労働界の代表者を集めた政労使会議が29日、約9カ月ぶりに再開された。政府は、賃上げ要請を前面に出した昨年の会議での姿勢を改め、今年は賃金体系の見直しなどを通じて生産性の向上を図ることに主眼を置く。まずは企業業績を改善させ、賃上げの余裕を作るというシナリオを描く。ただ、賃金体系の見直しは一部労働者の賃下げや労働環境の悪化につながりかねず、労働側は警戒を強めている。【小倉祥徳、東海林智、川俣友宏】
「動き始めた経済の好循環を確固たるものにするため、労働生産性の向上など諸課題を議論したい」。甘利明経済再生担当相は冒頭、政労使会議再開の意義を強調した。
昨年秋に設置された政労使会議は「企業収益の拡大を賃金上昇につなげる」などと明記した文書をまとめ、経営側に賃上げを要請。今年の春闘で、賃金全体を底上げするベースアップなどにつなげた。ただ、2年連続の賃上げに経済界では慎重論も根強く、「賃上げは生産性向上が前提」との声が出ていた。
これを受け、安倍晋三首相は29日の会議で、年功序列による賃金体系の見直しに言及。年齢や勤続年数と関係なく、職責が重かったり、成果を出したりする人に報いる賃金にすることで、従業員のやる気を引き出して生産性を向上させる。それで業績が良くなれば、賃上げにつながるという論法だ。子育て世代などに手厚く配分できるかも検討課題となる。
昨年の会議では、政府が露骨に賃上げを求めることに対し、「賃金は労使で決めること」との批判もあった。これに対し、生産性の向上は経営側も望む方向で、会議では麻生太郎財務相が「賃金カーブは、すぐでなくても変わる方向で議論することが重要」、有識者も「労働生産性に見合った賃金体系では、年功的要素を排除することが必要」と同調した。
日本生産性本部によると、1時間の労働でどれぐらいの価値を生むかを示す生産性は、2012年に日本は40.1ドル(約4400円)で、60ドル前後の米国や仏独を下回る。1990年代半ばには上位だったが、エレクトロニクスの不振などで低迷が続く。生産性を改善するには、他社がまねをできない商品を開発するなどして利益率を高める必要があるが、「年功序列では、有能な若手の起用が遅れる」との指摘が根強い。