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 突然の噴火が、山を愛する人たちの運命を引き裂いた。地獄絵のような光景を生きのびながらも、仲間を失った登山グループ。かつて五輪の聖火リレーで走者を務めた夫婦も巻き込まれた。「みんな無事でいてくれ」。親しい人たちの願いは、届かなかった。

 「信州の自然が大好きなのに、その信州で亡くなった。何と言っていいか分からない」

 29日未明に死亡が発表された無職横田和正さん(61)と一緒に御嶽山に登り、頂上付近から救助された長野県松本市の会社員鈴木康夫さん(57)は、病院のベッドで点滴を受けながらそう話した。肩の骨が折れ、松本市内の病院に入院している。

 鈴木さんによると、横田さんは自然保護ボランティアを務め、27日はボランティア仲間6人で御嶽山に登っていた。6人は一列になり、横田さんは、最後尾の鈴木さんの前にいた。山頂付近を剣ケ峰に向かって歩いていた時、突然、先頭の仲間が「なんだ!」と声を上げた。左側で灰色の噴煙がシューと音を立てて上がった。右側へ逃げたが、熱い空気が押し寄せ、噴石が体に当たった。

 「死ぬなよ!」。鈴木さんは、そう叫んだ気がするが、その後は覚えていない。気付くと王滝頂上山荘で横になっていた。助かった他の仲間によると、6人のうち横田さんら男性3人が動かなくなっていたという。