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 強盗殺人事件で被告に死刑を宣告した裁判員裁判の裁判員を務め、被害者の遺体の写真を見せられるなどしたために急性ストレス障害になったとして、福島県郡山市の女性(64)が国に慰謝料200万円を求めた訴訟の判決が30日、福島地裁であり、潮見直之裁判長は、原告側の請求を棄却した。裁判員制度の合憲性も争われたが、判決は「憲法違反ではない」と退けた。

 原告の女性は元介護施設職員の青木日富美さん。訴状などによると、昨年3月、福島地裁郡山支部で開かれた裁判員裁判で、被害者夫婦の遺体のカラー写真を見せられたり、被害者の女性のうめき声が録音された119番通報の音声を聞かされたりした。

 そのため、青木さんは裁判の初日から嘔吐(おうと)し、その後も不眠などの体調不良に悩まされ、医師に急性ストレス障害と診断されたという。仕事を長期間休まざるを得なくなり、介護施設の運営会社からパートの契約を打ち切られた、と訴えていた。

 裁判で青木さん側は、裁判員制度が、苦役からの自由を定めた憲法18条などに違反している、と主張。国側は、最高裁が2011年11月に同制度を合憲と判断しているうえ、相当な理由がある場合は裁判員の辞退を認めるなど柔軟にしていると反論し、請求棄却を求めていた。(長橋亮文)