はじめに佐野寛林利昭佐藤康三原研哉深澤直人中島信也近藤康夫佐藤卓中西元男
略歴:
1959年 福岡県に生まれる 
1982年 武蔵野美術大学視覚デザイン学科卒業 (株)東北新社入社
1983年 TVCM演出家となる
東京アートディレクターズクラブ会員・多摩美術大学教授・武蔵野美術大学非常勤講師・広告学校講師・宣伝会議コピーライター養成講座講師などを務める
(株)東北新社取締役、CM本部企画演出部部長

主な受賞:
「日清カップヌードル"hungry?"」カンヌ国際CMフェスティバルグランプリ・金・銀・銅賞、ADC会員賞 「フジテレビ'90」「'91」「'92」、「PARCOグランバザール」ADC賞 「サントリー白角」「アリナミンV・シュワちゃん」「HONDA StepWGN」「サントリーDAKARA」ACC賞 「東レ・オルゴール」ニューヨークADC賞 「ナショナルのあかり」IBA賞グランプリ
CMの仕事
 CMには、CMディレクターとCMプロデューサー、CMプランナーという仕事がある。僕ははじめプロダクションマネージャーのアシスタントをやっていた。当時自分にとってこの仕事を最高だと思っていたので、ゆくゆくはプロダクションマネージャーになろうと思っていた。しかし、紹介してくれた広告代理店の人に「君はディレクターにならなきゃいけない」と強く推された。そのためにディレクターのいる企画演出部にいくことになった。
 どんな世界にも、すごいスターは必ずいるものだけど、そんな経験豊富な先輩たちと同じ土俵で自分を比べられたら、やっぱり話にならない。先輩たちと違うものをやらなくてはならないのだ。僕の場合は特別な才能を持っていたわけではないが、音楽センスには自信があったので、結果として「音楽ものCM」で世の中に出て行くことになった。
 ある程度「音楽ものCM」のディレクターとして自分が確立していくと、そろそろフリーになろうかと思ったこともあったが、社長にイギリスからデジタル編集のシステムが入ってくという話を聞いて残ることにした。このデジタル編集があれば、今までできなかったことができるのではないかと思った。35ミリのネガフィルムを現像し、デジタル化し、編集も音もデジタルデータでそのまま納品ができる。さらにデジタルならコピーしても映像が劣化しない、100%のコピーができる。編集でできることの可能性が一気に広がったのだ。
 このデジタル技術を見て、天才CMプランナー佐藤雅彦さんが目をつけてくれた。この作品がADC賞をとることになる。
 そして、もう一人の天才、大貫卓也さんとカップヌードルのCMを手がけることになった。カップヌードルは普通に食べるとまずい。でも、腹が減っているときに食べるとうまい。そこで、世界で一番腹が減っている人は原始人だ。キャッチコピーは、食欲100万年ということで売り出していった。そしてこれはカンヌの広告祭などで賞を取った。
 佐藤雅彦さんに出会って、CMプランナーの重要性を知った。たとえるなら、CMプランナーは脚本家、CMディレクターは監督。いい脚本家と出会えるかどうかが監督の分かれ道だとも思っている。この脚本をアートディレクターがやる場合が大貫さんだった。

CMの作り方
 僕は学生時代から映像を作っていたわけではない。やっていたことはロックと山登りと恋愛だった。映像は作ったことは無かった。自分には技が無かった。いままで僕がやってきたことは、周りに助けてくれる人を作っていくことだ。チームを作り、みんなで作り上げていくという形をとる。そして力を貸してくれる人を、周りに作っていったことが後々大きな武器になっていった。CMディレクターは現場での人とかかわることが大切であり、コミュニケーションをとりながら、現場の人たちと作り上げていくものだと考えている。そして、これが、僕のCMを作っていくやりかたである。僕のつくる仕事はいろいろなものをやっているので特徴が無いといえるかもしれない。でも、できてしまう。それは、まわりのスタッフのおかげである。

最後に
 世の中に出て行くためには、自分のキャラクターをつくっていかなければならない。世の中は必ず塗り替えられる。不滅だと思っていた人も必ず引退していくし、僕もいずれ、君たちにとってかわられると思う。同じことをやっていてもだめだ。そのためには、先輩がやっていない新しいことをやらなければならない。重要なのは、自分がどんなキャラクターを持っているのかを考えて、その通りにやってみること。それぞれ努力目標は、色々出てくると思うのだが、最終的には自分のキャラクターでなにができるのかということだ。自分のキャラクターをつかみ、学生のうちにいろいろ考えてみて欲しい。それは、自分にぴったり合うものを探していく、旅のようなものなのだ。

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