高止まりする携帯電話の料金引き下げを促すため、20年前に撤廃した携帯電話の料金規制を復活するべきだとの議論が総務省官僚の間で囁かれ始めた。
進まない「携帯電話料金」引き下げ競争
背景にあるのは、日本の携帯電話3社がそろって世界のトップ10に顔を出す荒稼ぎをしていることを根拠にした「儲け過ぎ」批判だ。
総務省は近年、何度も「MVNO(仮想移動体通信事業者)方式」での新規参入促進や、同じ電話機を使いながら事業者を乗り換えることが容易になる「SIMロックの解放」といった施策を掲げて料金競争を促そうとしたものの、事業者の抵抗が根強くなかなか効果があがらない。
同省は、日本の携帯電話料金が依然として先進諸国の間でトップクラスの高い水準にとどまっていることに苛立ちを募らせているという。
しかし、我が世の春を謳歌している通信事業者から、高収益体質を維持しようと強い反発が出るのは確実。加えて、経済学者の間からも「むしろ周波数の割り当て先を増やして競争を促すなど、より本格的な競争促進策を打つ方が先決だ」といった批判が出ることも予想される。
我々の生活に直結する携帯電話料金の引き下げに直結する話だけに、議論の行方をモニターしていく必要がありそうだ。
世帯当たりの通信費支出は世界一
まず、携帯電話各社の荒稼ぎぶりの根拠として、総務官僚たちが重視しているのは、加盟34ヵ国を対象に経済協力開発機構(OECD)が2年に1度公表している「OECD Communications Outlook」(2013年版、以下アウトルック)だ。
“OECD版の通信白書”とでも呼ぶべき、このアウトルックによると、固定通信やインターネット接続事業など通信事業全体で見た場合、日本の大手通信3グループの収益は、NTTが2位、KDDIが12位、ソフトバンクが13位となっている。ところが、対象を携帯電話だけに限定すると、NTTは4位にとどまるものの、KDDIは6位、ソフトバンクは10位(合併したスプリントを合せると4位に浮上)となる。
ある総務官僚は、「国内総生産(GDP)ベースでみるとOECD全体の12.7%を占めるに過ぎない日本の事業者が、そろってこれほど上位に顔を出すのは異常だ」と胸の内を明かす。
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