御嶽山噴火:いらだち募る家族 救出活動、ガスに阻まれ

毎日新聞 2014年09月29日 22時22分(最終更新 09月29日 22時57分)

捜索のため、御嶽頂上山荘に入る救助隊員ら=御嶽山山頂付近で2014年9月29日午後0時35分、本社ヘリから山田尚弘撮影
捜索のため、御嶽頂上山荘に入る救助隊員ら=御嶽山山頂付近で2014年9月29日午後0時35分、本社ヘリから山田尚弘撮影

 御嶽山の噴火から3日目の29日、山頂付近から新たに心肺停止状態の登山者8人が搬送され、いずれも死亡が確認された。身元が判明した人がいる一方、この日は火山性ガス発生のため救出活動などが打ち切られ、連絡を待つ家族らの間に緊張といらだちが広がっている。

 長野県木曽町内の旧小学校校舎には正午前から、救出された8人の登山者が次々に運び込まれた。敷地に警察の規制線が張られた校舎からは、家族らの激しいおえつが漏れた。

 新たに身元が確認された静岡県御前崎市の増田直樹さん(41)については、一緒にいた妻睦美さん(42)も発見されたとの情報が家族や友人にいったん伝えられた。だが校舎内で対面した母親らによる確認で、睦美さんではないと判明し、睦美さんを待ち続けることになった。

 直樹さんの兄、大川原法幸さん(46)らによると、直樹さんは29日午後1時ごろ、頂上付近で1人の女性を守るように覆いかぶさった姿で発見された。校舎で対面すると、頭には岩のようなものが当たったとみられる痕があり、全身を灰が覆っていたという。「それでも一目見て、直樹と分かった」。口を真一文字にし、目を赤くさせた。

 しかし、一緒にいた女性は別人で、睦美さんは見つからないままだ。夫妻は1998年の長野五輪で、静岡県内を走る聖火ランナーペアに選ばれていた。直樹さん夫婦と20年来の友人の男性(38)は「望みがあるわけではないことは分かっているが、せめて夫婦一緒に見つかってくれればと願っていたのに」と声を落とした。

 29日の救出作業は火山性ガス発生のため、午後2時に終了。町役場内の待機所で連絡を待っていた家族らは同日夕、町が用意した4カ所の待機所に向かった。

 長野県塩尻市の男性会社員(23)は、同県上田市に住む会社員の父親(54)との対面を待機所内で待ったが、この日もかなわなかった。父親と一緒に登っていた仲間に聞くと、噴火口のすぐ横で大きな石が頭に当たり、倒れたという。待機所内にいた男性会社員は「ここでは名前を呼ばれるのをただ待っているだけ。呼ばれないと何の情報も入ってこないし、たいした情報は入らない」と不満げに話した。【藤顕一郎、藤河匠、飯田和樹、遠藤孝康】

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