御嶽山噴火:過酷な現場「不自然な岩石ごろごろ転がって」
毎日新聞 2014年09月29日 23時04分(最終更新 09月30日 00時59分)
◇救出活動の警察官や自衛隊員が証言
長野、岐阜県境にある御嶽山(3067メートル)の噴火で、山頂付近で登山者らの救出活動をした警察官や自衛隊員の証言から、過酷な現場の状況が徐々に分かってきた。
長野県警機動隊副隊長の金森勉警部(54)は、噴火翌日の28日は王滝頂上山荘周辺で、29日は剣ケ峰山頂で救助に当たった。目の前に広がっていたのは、深く降り積もった白い火山灰と、「火山から噴出して飛んできたような不自然な岩石が、ごろごろ転がっている」という異様な光景だった。
救出作業中、噴石は降ってこなかったものの、火山灰がどんどん降ってきた。積もった灰は膝ぐらいの高さまであった。心肺停止の人の大半が倒れていたとみられる剣ケ峰から王滝山荘につながる稜線(りょうせん)のあたりでは、自分の体がズブズブと腰まで灰の中に沈んだ。28日に死亡確認された男性4人のうちの1人が倒れていたのは、そんな場所だったという。
「ゴゴゴゴという音がたまに聞こえるだけで、あとは静か。私たちの『誰かいらっしゃいますか』という声が響くぐらいだった」と金森副隊長は振り返る。
28日にたどりついた王滝山荘には救助を待つ登山客がいた。噴石などで頭などを打っている人が多く、布団の中で心細そうにしていた。だが、自衛隊、消防の救助部隊と一緒に山荘に入ると、表情が和らいだという。
29日は火口から噴き出す有毒ガスが救助隊の行く手を阻んだ。風向きでガスの危険性が変わる。検知器の数値は午前中に計3回1ppmを超えた。昼近くには人体に影響を及ぼす手前の2ppm超になり、この日の捜索打ち切りを決めた。「苦渋の決断だった」という金森副隊長は「2次災害には気をつけなければならないが、一人でも生存の可能性があれば救助する」と語った。
陸上自衛隊の現場指揮をした松本駐屯地の中村文彦3等陸佐(46)は、こんもりと盛り上がった火山灰の山を忘れない。
28、29両日、隊員95人を率いて王滝口から山頂を目指した。再度の噴火に備えて全員が防弾チョッキとゴーグル、防じんマスクを着け、縦列で登山道を進んだ。
8合目を越えたあたりから灰が深くなり、山頂付近では約50センチに達した。直径1センチほどの噴石が絶え間なく降り注ぐ。強い硫黄の臭いを帯びた灰色の火山性ガスは視界を奪う。その中に見えた小さな灰の山は人が埋まっている目印だった。